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会議で主体的に発言してもらえるようにする(#27)

この記事の初出は、Software Design 2024年6月号です。

会議で発言してもらいたい

チームの会議で参加者に発言してもらいことはよくあると思います。
今回は、そういう会議でメンバー全員から積極的に発言してもらえるようにするための考え方とプラクティスの紹介です。

参加者から積極的に発言してもらいたい会議は色々ありますが、以下に2つの例を挙げます。

1つめはUXレビューです。
筆者のチームでは、開発中のプロダクトに対する改善点を皆で挙げる活動を行っています。
チーム内では「UXレビュー」と呼んでいます。
まずそのプロダクトの開発メンバーが、ユーザーがよく使うユースケースでどんな体験をするのかをデモしながら説明します。
それに対して他メンバーが気付いた改善点を挙げます。
UXは人によって感じ方が異なるため、各自が感じたことを積極的に意見してもらう方が多様な観点での改善が期待できます。

2つめは設計レビューです。
開発プロダクトのアーキテクチャの根幹となる設計は、開発メンバー全員が理解した方が良いことがあります。
そういう部分のレビューには全員が参加することがあります。
各自が設計の改善点について意見を述べると共に、分からない点や設計の判断理由について積極的に質問してもらった方が、メンバーの設計理解が促進されます。

過去の筆者の反省点

過去の筆者は、自分の価値観を他のメンバーに押し付けていました。

筆者は新人の頃から、会議のときは一生懸命に自分なりの意見を発言するようにしていました。
会議に参加するからには、何かしら発言して貢献しないと参加する価値がない」と思っていたからです。

そう考えていた筆者は、会議で発言をしないメンバーに対して「なぜ発言しないのか」と不満を持っていました。
若手の頃は、その不満をメンバーに(先輩にも後輩にも)直接伝えたこともありました。

その頃の筆者は、会議で発言しないことは、発言しない人に原因があると考えていました。
自分の日頃の行動に原因がある可能性を考えていませんでした。

日頃のコミュニケーションの問題

筆者は、本連載で紹介してきたチームビルディングの様々なプラクティスを実施していく中で、チーム内のコミュニケーションを改善してきました。
その結果、会議で発言しなかったメンバーが発言するようになる姿を何度も見てきました。
改善前の筆者のチームは、日頃のコミュニケーションに問題があったために、会議で発言しづらかったのではないかと思います。
実際に筆者のチームメンバーから聞いた会議で発言しなかった理由の例を以下に挙げます。

  • 「自分なんかが発言しても、チームの皆の時間が使われるだけで、チームの貢献にならない」と思って発言しなかった。これは経験の浅い若手メンバーに多く見られ、会議で発言した時の成功体験がないと、このように考えることがある。

  • 自分の考えが場に出ている意見に反するものだったため、「発言することで波風を立てたくない、否定されたくない」と思って発言しなかった。会議で反対意見が出た時にすぐに否定される様子を見ているとそのように考えることがある。

  • 自分が何かを提案して「提案者のあなたがやってください」と言われたら、自分の仕事が増えて重荷になるため発言しなかった。ペアプロ・モブプロなどを用いてチームの目標を皆で達成するのでなく、各自がソロでタスクをこなす場合、しかも1週間以上先まで決まっており各自に期限も設定されているような場合は、自分の担当タスクが増えると重荷に感じることがある。

これらの例のように、発言しない原因は「発言しないメンバー」だけにあるのでなく「日頃のチームでのコミュニケーション」にもあります。
それを理解して改善することが大切です。

発言してもらうためのプラクティス

会議で発言するという行動は、「主体性を発揮すること」の一要素なので、「主体的な行動で成果が出る」という成功体験を繰り返すことで、会議で発言してもらいやすくなります。
そういうプラクティスの中から、お勧めの3つを紹介します。

①会議中に問いかける

発言しない原因の1つに「会議での発言に慣れていない」ことがあります。
慣れていないと、頭の中で話す内容をシミュレーションすることに時間がかかり、思ったことをすぐに発言できません。
考えがまとまっても、発言するために勇気が必要です。
発言したことによる成功体験がないと、勇気を出すのに見合ったメリットがなく、発言をとりやめてしまいます。
勇気を出して発言しようとしても、発言するタイミングをつかめないこともあります。
そうこうしているうちに、議題が変わって発言の機会を逸してしまいます。

つまり、会議の進行役は「発言に慣れていないと、自分の意見を持っていても発言できないことが多い」という事実を理解しておいた方が良いです(過去の筆者はこれを理解していませんでした)。

それを理解していれば、進行役の行動は変わるはずです。
発言しないメンバーに対して「これについて○○さんはどう思いますか?」と問いかければ良いのです。
もちろん、最初はうまく意見を言えないこともありますが、そうやって発言することに慣れていけば、少しずつ改善されます。

②発言に対してポジティブフィードバックする

会議であまり発言しないメンバーが、会議で発言した場合は、その都度ポジティブフィードバックすると良いです。

例えば、あるメンバーの質問により、議論が始まり何かの案が採用されたなら、「○○さんの質問がきっかけでチームの開発が加速しました!」という事を伝えて、自分の発言がチームの役に立ったと感じてもらえるようにします
会議中にポジティブフィードバックができなかった場合は、会議が終わった後に「○○さんが会議で話してくれた意見のおかげで、色んな案がでましたね」のように伝えます。

そういうポジティブフィードバックを何十回も繰り返せば、成功体験が積み重なり、徐々に主体的に会議で発言してもらえるようになります。

③会議の意見や感想を投稿してもらう

会議の参加人数が多い場合、意見表明の手段を同期コミュニケーション(つまり発言)だけに頼ると、発言待ちの人が出てきてしまいます。
そこで、SlackやTeamsに会議の意見や感想を書くチャンネルを作り、そこに随時投稿してもらうという非同期コミュニケーションも同時に行うと効率的です。
投稿してもらった意見は、都度もしくはまとめて拾っていきます。
過去の経験では、参加者が5人以上いる場合は、この方法を用いた方が効率的でした。
投稿で意見表明してもらうことには、以下のメリットがあります。

  • 誰かが話している間に、自分の意見を書き込めるため、「発言待ち」にならず効率的

  • 自分が話すタイミングを見計らう必要がないため、発言のタイミングを逸することが減る

  • 意味のある「意見」でなく、ただの「感想」を書いても良いので、自分が思っていることを気軽に共有できる

また、会議での発言に慣れていないメンバーにとって、口頭で発言よりも投稿の方がハードルが低く感じる傾向があります。
そのため、会議で意見を出すことに慣れてもらいやすく、投稿に対してポジティブフィードバックすることもできます。

まとめ

今回紹介した考え方とプラクティスが、皆で楽しく主体的に発言する会議を行う上で、少しでも参考になれば嬉しいです。

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