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報連相に対して毎回感謝を添えてフィードバックする(#22)

この記事の初出は、Software Design 2024年1月号です。

報連相の重要性

チームの皆で楽しく円滑に開発をするためには、コミュニケーションとしての基本である報告・連絡・相談(以下、報連相)は重要です。
報連相に問題があると、非効率な方法で仕事を進めたり、間違った方針で成果物をつくったりすることで、手戻りが発生してしまい、開発生産性が低下します。
実際に、過去の筆者のチームでは、報連相に問題があることで、以下の手戻りが発生したことがあります。

  • 成果物の作成途中で相談したりレビューをしたりせず、完全に成果を作り切ってからレビューで初めてみせたところ、そもそもの方針が間違っていた

  • タスクの遂行中に状況変化があったにもかかわらず、タスクの進め方の再判断をしなかったため、無駄な時間を使ってしまった

  • 技術的な調査を行うタスクにおいて、自分で考えた調査方法で進めた結果、適切な調査ができていなかった

今回は、これらの問題が起きないように筆者のチームで行った有効な施策を紹介します。
筆者のチームには毎年新人が配属されていますが、その施策を行うようになった結果、それらの新人は誰でも半年以内に適切なタイミングで報連相を行うようになり、上記で紹介したような手戻りが発生しなくなりました

過去のチームの話

施策を紹介する前に、筆者の失敗談を紹介します。
過去(10年以上前)の筆者は報連相が遅くて手戻りが発生した際に、そのメンバーに「言うのが遅い!」と怒っていました。
当時の筆者は、報連相が遅い原因がそのメンバーにあると思っていましたが、振り返ってみると、報連相が遅い原因はマネージャーの筆者にあったと思います

というのも、当時の筆者は報連相が遅い時には「遅い!」と怒っていましたが、適切なタイミングの時には何も伝えていませんでした
これでは適切なタイミングがわからないため、うまく報連相ができないのは当然でした。

また、報連相をすると怒られるという体験によって、メンバーは「報連相」=「嫌なこと」という認識になっていたと思います。
嫌なことは後回しにしたくなるため、事態が悪化し、さらに報連相が遅れるという悪循環も発生していました。
今振り返れば、悪い内容の報告であっても、タイミングの遅い報告であっても、とにかく報告してくれた事に感謝すべきでした。

報連相を改善する施策

過去の失敗を踏まえた、筆者のチームで行っている報連相を改善する施策とは、「報連相に対して毎回感謝を添えてタイミングの良し悪しをフィードバックする」ことです。
具体例を2つ紹介します。

適切なタイミングで相談してくれた場合は「今相談してくれたおかげで手戻りせずに済みました。ありがとうございます。」のようにフィードバックします。

報告が遅かった場合は「まず報告してくれてありがとうございます。それならばXXXの対応を行いましょう。それと、今後はさらに手戻りを減らすためにXXXのタイミングで教えてくれると助かります。」のようにフィードバックします。

このように良い時も悪い時も必ず感謝を伝えれば、メンバーにとって「報連相」=「感謝される事」という認識になります。
そうすれば報連相してもらいやすくなります。
そして、毎回必ずタイミングが遅いのか適切なのかフィードバックを継続すれば、適切なタイミングで報連相してもらえるようになります(実際、7人の新人がこの方法でそうなりました)。

なお、前提として、そのチームでの報連相の目的を明確にして皆で共通認識を持つことも必要です。
筆者のチームの場合は「報連相が遅いことによる手戻りを無くすこと」を目的として共有しています。

それと、手戻りをなくすと言っても「技術的な知識やスキルが足りないことによる手戻り」は仕方がないということはチームで共有しています。
知識やスキルは長く経験を積むことで蓄積されることであり、短期間で習得できるものではありません。
そのため、それが足りないことによる手戻りは成長するための必要な時間と位置付けます。
なくしたい手戻りは「報連相が遅いことによる手戻り」のみとします。

成功体験を積み上げる

適切なタイミングで報連相してくれた時にポジティブフィードバックをしようとしても、新人の場合は適切なタイミングで報連相が全くできないことがあります。
そんな時は、適切なタイミングで報告しやすい機会を仕込むという方法もあります。

例えば、新人にテスト実施を依頼した際に「18時までにテストが完了できないと分かった時点で報告すること」と依頼します。

そうすれば、たいてい指定時刻の前に状況を報告してくれます。
報連相に対する意識の高い新人は数時間前に、そこまでの進捗のペースをもとに状況を報告してくれます。
意識の高くない新人でも、指定時刻の数分前までには状況を報告してくれます。
その時に、(たとえ指定時刻の数分前だとしても)主体的に報告してくれた事でテストの進捗に対応する判断が早くできた旨のポジティブフィードバックをして、成功体験を積んでもらいます。
これを繰り返すことで、「主体的に報連相を行うと成功体験になる」というイメージが定着し、適切なタイミングで報連相をしてもらいやすくなります。

改善を促進させるために

報連相のたびに感謝を添えてフィードバックするだけでも改善効果がありますが、チームのマネージャーが以下の両方の条件を満たす行動をしているとさらに効果が上がります。

  1. メンバー全員とチーム全体のゴールと進捗状況を随時共有していること

  2. メンバーからの報告を受けて意思決定を行う際に、どういう論理で意思決定するのかをメンバーに説明し、自分の報告がどのように活用されるのか理解してもらうこと

これを満たしていると、チームのゴールを達成するためにどんな意思決定が行われるのか想像できるようになってくるため、どんな状況でも適切なタイミングで報連相ができるようになります。

その他の報連相のスキルの習得

報連相に関する書籍や記事には、報連相のタイミング以外にもたくさんのスキルが紹介されています。
例えば、「相手の視点を理解し、それに基づいた情報を伝える」「報連相の目的が何であるか明確にする」などです。
新人に関して言えば、それらのスキルは報連相してもらった時に少しずつ指導して身につけてもらえば良いと思っています。
理由は、報連相において一番の問題は手戻りが起きることであり、その主原因である報連相が遅いことが解消できれば大きな問題は無くなるからです。

例えば、報告内容が分かりにくくても(自分視点で、且つストーリー仕立てで結論を最後に述べる形式であっても)、報告さえしてもらえれば、その情報を受け取った側が適切にヒアリングすれば、手戻りを回避できます

そもそも新人に最初から分かりやすい報告を求めるのは無理があります。
新人は、報告に慣れていないため、報告しながらパニックになり支離滅裂な話をすることもあります。
文章での報告の場合は、その内容が理解できないこともあります。
そういう場合は、文章での適切な報告を求めるのでなく、ビデオ通話(もしくはオフライン)で起きたことを時系列そのままで話してもらった方が理解できます

報連相のスキルの習得を早めたい場合は、書籍を用いた勉強会が効果的です。
筆者のチームでは新人が配属された時に、本連載の第7回で紹介した以下の「毎朝15分の勉強会」にて報連相の書籍を用いています。

皆さんのチームでもし報連相がタイムリーに行われていないという状況があるようでしたら、本稿の施策を参考にしてみてください。

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