米国スピーチライターから教わった方法でデコンしてみたら、スティーブ・ジョブズが本当に伝えたかったことがわかった話
こんにちは、コジカです。
プロスピーカーと呼ばれる方からお話を聞かせていただく機会があったので、自分なりの気づきをまとめて書きます。
自分自身、仕事で経営層の方々のスピーチやプレゼンテーションの骨子を作ることがありました。でも、素人なりタタキを作って、文字通りたたかれながら作ったことしかなかったので、プロの方からお話を聞けるのはとても楽しみでした。
そしてなにより、プロスピーカーのスピーチライティング術を教わってから、あの有名なスティーブ・ジョブズがスタンフォードの卒業生に向けてスピーチした「Conecting Dots」の話を今一度聞いてみると、驚くような発見がありました。
まずは、スピーチライティングの3つのポイントから
1,1つのメッセージを構造化して伝える
スピーチでいちばん大事なことは「One Big Messeage」に絞ること。
なるほど・・・これは広告やマーケティングと一緒だな、と思って聞いていたのですが、スピーチライティング特有なのは、これを構造化して15〜30分のスピーチ全体で伝えるということでした。
One Big Message(OBM)をサポートする理由や事例、支えるポイントのことを業界用語ではメインポイントと言うそうです。上記の図のように、Why So「なぜなら」とSo What「つまり」でつないで構造的にしゃべることが大切なのだそうです。
なので、一番やさしい上記の図の構造をスピーチにすると、
本日は「OBM」についてお話します。私が「OBM」と考えているのは、なぜなら「ポイントA」ということです。例えば「OBM」というのは、「ポイントB」ということです。だから「OBM」なのです。他にも「ポイントC」ということもありました。つまり、今日皆さんに覚えて帰っていただきたいのは「OBM」ということでした。ありがとうございました。
みたいになるそうです。
実際にはこんな理屈っぽい喋り方はしないと思いますが、まずこれで基本の形が出来上がります。そして、基本の形にスピーチ特有の相手の心を掴むための「つかみ=オープニング」と、終わりの言葉「締め=クロージング」を加えると大きな構造としてのスピーチは完成するそうです。
これがスピーチの基本構造です。あぁこれなら・・・すごくわかりやすくて、埋めていくことで自分でも書けそうな気がしました。
2,個人のストーリーを交えて話す
2つ目のポイントは、スピーチをする際に「なぜあなたが話すのか?」を意識する必要があるそうです。だからこそ、その人なりのストーリーが話に盛り込まれていると、共感と納得感がより強くなるそうです。
「いや、そんなスピーチできるほどいいストーリーなんてないよ」と思ったのですが、ストーリーは作れるとそうです。汗
まず、ストーリーの基本構成は「状況設定→葛藤と変化→解決と学び」この3つで構成されるそうです。この中で、「解決と学び」の部分がメインポイントになるのです。つまり、スピーチしたいテーマに沿った「解決と学び」があるエピソードを探してくればいいのです。
さらに細かくすると、ストーリーを魅力的にするためには「6つのC」が必要だそうです。
<ストーリーを魅力的にする6つのC> Character:個性:どんな人間なのか?
Circumstance:状況:どんな状況に置かれていたのか?
Conflict:苦労:どんな苦労や障壁に直面していたのか?
Cure:克服:どんなきっかけでそれを克服したのか?
Change:変化:以前とどんなふうに変わったのか?
Carryout:学び:その経験から何を学んだのか?
特にConflictが大切で、幾度も困難にぶつかりそれを乗り越えてきたエピソードの方が良いとのこと。事例として取り上げられたスピーチがこちら
BTSのキム・ナムジュンさんが国連でしたスピーチです。ご本人がごく普通の少年から、BTSとして世界的アーティストになるまでを語っています。
自分なりに「6つのC」をまとめてみても、すべての要素がきれいにつながっており、とても共感できるストーリーになっていると感じました。
3,声や態度が印象を決める
3つ目に大事なことは、話し方や声色・態度がスピーチ全体の印象を大きく左右するということです。そのため、大きな舞台でのスピーチや大事な場面でのプレゼンテーションの場合、プロの方々は2週間も前から原稿読みを毎日するそうです。
なかでも面白かったのが、アクセントだけで伝わる意味合いが変わるということ「彼女は、私に、楽しかったと言っていた」という単純なフレーズも、どこを強調するか?(これをオペラティブワードというそうです)だけで意味合いが変わってくるということです。
「メラビアンの法則」などでもよく言われることですが、ポジティブなメッセージを出したい場合は声色も表情もポジティブなものに。緊張感を伝えたいときは、声色も表情も緊張感を持ってスピーチできるように練習するそうです。
4,名人たちのスピーチ事例
たくさんのスピーチ事例も紹介してもらいました。
スピーチの構造を教えて頂いたので、自分なりに構造をデコンストラクションしてみました。
■豊田章男氏 バブソン大学 卒業式でのスピーチ
「自分だけのドーナッツを見つけよう」で有名な豊田章男さんのスピーチです。特に彼のすごいところは、ユーモアとワードセンスだと思います。ドーナッツももちろん「自分の好きなこと」を見つけようということの代名詞として使われています。
構造的にもメッセージが一貫していて、とても聞きやすいスピーチです。最後の締めで、卒業式の新たな時代と日本の新たな時代「令和」を結びつけてお話されている点も素晴らしいです。
■中田敦彦氏 近畿大学工学部 卒業式でのスピーチ
近畿大学の卒業式ははタレントさんにスピーチをお願いするのが恒例みたいですが、オリラジのあっちゃんが「夢の叶え方」についてお話されてます。
芸人さんとして話がうまいのはもちろんのこと、こうやって構造化してみると「①夢を人に言う、②人の力を借りる、③諦めない」という夢の叶え方について、2つのストーリーで語るという高等なテクニックを使っていることがわかります。
更に「自分の夢の話」と「高校生の夢の話」を対比することで、若い皆さんのほうが優秀なのだという話の持っていき方もとても秀逸に感じます。最後はみんなが偉くなったら中田を使ってほしい。それを伝えに来たということで締めくくり夢を壮大なもののままで終わらせないのがとても気持ちいいです。
5,スティーブ・ジョブズが本当に伝えたかったこと
前置きがだいぶ長くなりました。ここまでたどりついて頂きありがとうございます。プロスピーカーの方との話では題材に上がらなかったのですが、自分が好きなジョブズのスタンフォードでのスピーチもデコンしてみました。
※勝手な自分なりの解釈です
ジョブズのスピーチは「Connecting Dots」の話としてとても有名ですが、3つの話で構成されています。どれも自分の信じる道を進もうというエールを自分自身の人生から伝えてくれる構造になっています。One Big Messageを自分なりに抜き出すと、
自分の心と直感に従う勇気を持って、自分の道を歩いてほしい
ということだと思います。また、3つのストーリーということなので、論理構造だけなく折角習ったストーリーの6つのCもどうなっているか見てみます。
論理構造がとてもしっかりしている上に、3つのストーリーが全て魅力的なストーリーになっています。そして、
これをつくって、ぼくは「え・・・すご・・・」ってなりました。
なぜなら、3つのストーリーが全て「人生最悪の出来事」なんです。大学を中退した、自分がつくった会社を追い出された、余命半年と宣告された。どれも実際に自分が直面したら、立ち直れないほどの最悪な出来事です。それを、スティーブ・ジョブズは「その時はわからなかったが人生最高の出来事だった」と評しています。
ぼくは何度もこのスピーチを聞いたことがありました。人生の節目節目で、勇気がわかないときに、このスピーチをyoutubeでみていました。その時、とても応援されているのような気分になったのは、
「人生最悪の出来事こそ、振り返った後では人生最高の出来事となる」
というジョブズのストーリーに込められたメッセージがあったからなのだと初めて気づきました。
論理構造・ストーリーの両面から見ると、きっとジョブズが伝えたかったことは
自分の心と直感に従う勇気を持ち、自分の道を歩いてほしい。
その道には、絶望するようなこともあるけれど、
いつかそれが最高の出来事だったと言える日が来るはずだ。
そんな風にいってくれているように感じました。超個人的な解釈なので、あしからず。
さいごに
ワンメッセージの構造化・ストーリー・話し手の印象
この3つが人の心を動かすポイントだという話でした。実際にぼくが大学の卒業式でスピーチするなんてことは訪れないかも知れません。でも、人に話したり、プレゼンしたり、日々のコミュニケーションの中でも実践できるポイントが詰まっているお話でした。
ジョブズほどの壮絶な経験はできなくとも、いつか自分の実体験で「ただの3つのストーリー」を話せるような人間になりたいなぁと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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