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七夕と宇宙開発にまつわる話

7月7日といえば、日本だと「七夕」をイメージします。

その日だけ天の川を対岸にして、恋に落ちた牛追い屋の彦星と天帝の娘織姫が会うことが許される、大体こういったストーリーを描く方が多いと思います。
元々は中国の故事を元に平安時代に輸入され、日本の民間伝承と融合されて今の形になったそうです。もっと知りたい方は下記がお勧めです。

そしてこの風習はおとぎ話だけでなく、実際の天体にも紐づけられており、
 彦星:わし座のα星アルタイル
 織姫:こと座のベガ

と対応し、白鳥座と合わせて「天の大三角形」「夏の大三角形」と呼ばれます。天体写真を1つ紹介しておきます。

出所:世界の民謡「彦星 ひこぼし わし座のアルタイル」

そして今年は、宇宙空間だけでなく、地上からも新しい出会いが生まれるかもしれません。
なんとその7月7日に、ESAが運営する新型ロケット「ヴェガC」が初飛行として打ち上げられることが決まりました。

7月7日という日は、日本だけの風習(短冊も日本のみ)なので、おそらくは「偶然」だと思います。

今回のヴェガ計画自体は、20世紀から企画が進められた歴史のあるロケットですので、簡単にその話をしてみたいと思います。

元々1990年代から企画が行われて、色々と紆余曲折がありましたが2012年に初飛行に成功しました。
VEGA(ヴェガ)はイタリア語で、Vettore Europeo di Generazione Avanzata, の頭文字です。
名前から分かる通り、イタリア宇宙機関 (ASI) が開発プログラムを主導しており、実際にイタリア政府が過半数費用を負担しています。その他出資国も全て欧州国です。(参考までに以降はにフランス、ベルギー、スペイン、オランダ、スイス、スウェーデン)

今回はその最新型で、ペイロード(積載するもの)を同時に二種類別軌道に乗せることが出来、かつデブリ(宇宙ゴミ)化しないよう大気圏に再突入させて燃え尽きるよう設計されているのが特徴です。

今のところの主目的は衛星打ち上げで、一般相対性理論によって理論的に導き出される「慣性系の引きずり」と呼ばれる計測を行います。

耳慣れない用語ですが、シンプルに言うと、ブラックホールのような重い重力は自身の回転で時空が動的に歪み、周囲の天体をさながら引きずる現象が起こりえます。
ブラックホール内の後戻りできない領域を「時空の地平線(イベントホライゾン)」と呼ばれますが、それと引きずられる天体までの領域を「エルゴ領域」と呼びます。下記を参考までに引用しておきます。


ちょっと脱線したので、話をヴェガに戻して締めたいと思います。

実はVEGAの真のネーミング由来はESAサイトで公開されています。

要は、ロシアが1980年代に計画して成功したハレー彗星/金星探査計画VEGAにあやかってつけました。

そしてそのオリジナルでの名前の由来は、ロシア語で金星を表す"Venera"とハレー彗星を表す "Gallei"を組み合わせた造語だそうです。

この時期にしたのは、ハレー彗星の接近に合わせてのものです。
ご存じの通り、これは76年に一度だけ地球に接近してその姿を我々が拝めるお茶の間にも知られた天体です。

つまり、我々の地球とハレー彗星は76年に一度巡り合う機会があるというわけです。
頻度は違いますが、どこか七夕伝説に近い雰囲気があり、脳がその因果をイメージしてしまいますね☺

ということで、今年の7月7日は、彦星・織姫だけでなくVEGA-C打ち上げの成功やハレー彗星など、いろいろと宇宙に思いを馳せてみたいと思います。

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