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健全なる肉体は健全なる精神に宿る

タイトルは聞いたことがあるかもしれませんが、実は有名な格言の「精神」「肉体」を逆にしたものです。

それに関わる面白い実験成果が2/8に発表されています。

要は、
マウスが孤独を感じて社会的関りを持とうとする機構を神経レベルで解明した、
という話です。

記事内であるように、ヒトは孤独になると身体的にも害を及ぼすという現象はより指摘されています。
これは我々の経験的にもある程度うなづけるのではないでしょうか。

ヒトにおける「孤独(社会的孤立の主観的認知)」は、うつなどの心の健康だけでなく、心血管系疾患やがんの予後など、身体的健康にも悪影響を及ぼすことが知られています。

上記サイト

マウスでも類似行動が見られ、今回の実験成果をもとにして、ヒトへの研究フィードバックが期待されます。

実験手法は、もはや定番ともいえる「遺伝子編集技術」を通じて、仮説(今回は「アミリン」という神経集合)の遺伝子情報を削除(ノックアウト)した実験マウスを作って、正常版と比較検証した結果です。

もともと「アミリン」は、満腹感を引き起こすホルモンとして昔から知られ、近年の抗肥満市場の高まりで、改めて目にします。

おそらく話題性としては、新しいダイエット法として「GPT-1」という単語を耳にする方が多いかもしれません。元々糖尿病治療薬ですが、ホルモンとして満腹作用を感じさせる作用は似ています。


いずれにせよ、神経レベルで精神的な作用まで突き止められる、というのは、改めて生命科学の発展のすごさを思い知らされます。

人類(ホモ・サピエンス)がここまで発展した理由としてよく言われるのは「集団性」です。
ただ、今回はマウスなので、今後(人類は倫理上出来ないので)霊長類で同様の実験が行われ、その構造差異が出てくると、その仮説が強固になるかもしれません。

が、それもまだ霊長類であって人類の謎解明には至りません。

既に人類とサルの遺伝子(4種類の塩基)配列比較はある程度終わっていて、1%強の差異しかないことが分かっています。(比較の解釈はやや疑義がありますが)

その意味では、もしかしたら「群れを作れる能力」は遺伝子レベルでなく、人類の学習結果の積み重ねなのかもしれません。

まだ決め手はないですが、個人的に興味深いのは、個々の身体的能力を飛躍的に高める「飛び道具」を発明したという仮説です。
人類に近く、むしろ身体的(脳の大きさ含めて)には優れていたネアンデルタール人ですら、いまだにこれを発明した形跡は見つかっておらず、現時点では人類特有の道具です。

その独自の道具を使うことで「集団を統制する社会的特性を備えた」ということです。

論点は先天的か後天的かですが、生物はそんなにロジカルに進化しているわけではないので、おそらくはその両方なのかなと想像します。


最後にタイトルのこぼれ話を。

オリジナルの表現は
健全なる精神は健全なる身体に宿る
で、古代ローマの詩人ユウェナリス由来らしいのですが、どうも本当のオリジナルでは、そのあとに
「ように祈るべきだ」
という、ガクッとずっこけてしまう続きがあるそうです。

ただ、今の科学知識から見ると、この「祈る」という精神的行為がもたらす効果は全否定はできず、ある意味味わい深い格言になります。

もしかしたら古代人は科学の進歩を見越していたのかもしれませんね☺

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