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素数と実世界へのつながり

「素数」と聞くと、数学嫌いの方にはあまり良いイメージがないかもしれません。素数とは1と自分以外では割り切れない数のことを指します。

今年NHKで始まった下記の数学番組がとても面白く、#1のテーマがその「素数」でした。

今日は素数と「実世界のつながり」について触れてみたいと思います。

素数は古代から数学者たちの関心を引き続けています。
その出現分布を知りたいという純粋な知的好奇心もありますが、それが「自然の隠れた理論」を現しているのではないか?という期待も研究者のなかにはあります。

素数の研究は、18世紀に活躍した伝説的な数学者オイラーが多大な貢献をしています。
オイラーは、数学に没頭しすぎて両目を失明し、それでも死ぬまで数学を続けていたといわれます。

数式はあえて書かないでおきますが、一見素数と無関係にみえるπ(円周÷直径)を使って素数の無限和を表現することに成功しました。
これはとても不思議なことだと思いませんか?

それを拡張させたのが19世紀中盤に活躍したベルンハルト・リーマンです。

リーマンは、オイラーが過去に見出した概念を一般化して、ゼータ関数と呼ばれる数式を考案しました。

そして、今においても解かれていない史上最大の難問の1つ「リーマン予想」を1859年に提示しています。(懸賞金100万ドル!)

超ざっくりいうと、
「ゼータ関数の非自明なゼロ点(=0となる値)は直線状にある」
というものです。

要は、
一見ランダムに見える素数の並びが、ゼータ関数というフィルターをかけると、その解は特定の直線上に存在するか?という問題に切り替わります。
つまり、素数分布には「何か意味がある」ということを示唆します。

これが証明できると、有限範囲内での素数の数が予想できます。

時代の天才たちが挑んできましたし、今でもチャレンジは続いています。

例えば、リーマン予想に取りつかれた数学者の一人にヒュー・モンゴメリ氏がいます。

1970年代に訪問していたある研究所で、たまたまティータイムで素粒子物理学者フリーマン・ダイソン氏と出会います。
そして自己紹介の一環でゼータ関数の研究について紹介しました。

ゼータ関数の式を聞いたダイソン氏は、とても驚きます。

というのも、
ゼータ関数のゼロ点間隔が原子核エネルギーの間隔を表す式と同じ、
だったからです。

この素数と原子核の偶然の結び付きが、物理学者と数学者の交流を促して、実世界とのつながりについて研究が続いています。

ちなみに、今でも「リーマン予想を解いた」と発表するニュースは数年単位でみかけます。
最近だと、下記が話題を呼んでいました。ただし、論文を提出した後に死去してしまい、後日談として論文撤回になったそうです。


ちょうど2022年7月に、数学のノーベル賞ともいわれるフィールズ賞が発表されました。(4年に一度)

そのなかの一人がジェームズ・メイナード氏で、まさに今回の「素数の分布」に対する功績が評価されました。
メイナード氏が導いた定理の1つに「隣り合った素数の隔たりが600以下のものが無限組存在する」というものがあり、リーマン予想に貢献するとみられています。

同じく最大の難問の1つであった「フェルマーの最終定理」は解かれるまで300年以上も要しました。
自分が生きている間にリーマン予想が解かれるかどうかは未知数ですが、途中で触れたとおり、素数の研究は他の実社会にもつながっています。
我々の生活に密接に入り込んだケースだと、インターネットなど暗号技術には素数を使ったものがまだ使われています。

基礎研究でも、素粒子や宇宙物理の世界では、すでに数学と物理は切っても切りはなせない関係になっています。
リーマン予想でも、上記のような思わぬ出会いで研究が飛躍的に進み、歴史的な発表が行われることを願っています。

<主に参考にしたリソース>


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