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もうしばらくRSA暗号は大丈夫そうです

量子技術の進化による脅威の1つは「セキュリティ」です。

特に、以前から言われているのがネットの暗号通信で普及しているRSAが解読されてしまうのではないか?という不安です。

が、富士通が最近発表した量子コンピュータによる最新評価によると、若干不安を和らげました。

ようは、
量子アルゴリズムを使って解読するには約1万の量子ビットを有する量子コンピュータが必要なので実質的には今は安全である、
という話です。

もう少し砕いておきます。

まず、今回は富士通製の量子シミュレーションを使っており、「ショアのアルゴリズム」という歴史上はじめて量子効果を広めたものを選んでいます。

そして今普及している(少なくとも推奨されている)2048ビットのRSA暗号に対してそのシミュレーションを行いました。ビットは2進数で分かりにくいと思いますが、10進数に変換すると大体617桁に相当します。
このほうが、何となくその数の大きさがイメージわくと思います。

RSA暗号(要は素因数分解の難しさを利用)と過去の試算(1024ビットでも1年以上かかる)を紹介した記事を引用しておきます。
ようは素数の掛け算に分解してください、というものですが、私は暗算だと3桁でギブアップです。。。

そしてその結果、その結果が1万量子ビットが必要だ、というものでした。

投稿時点では、2022年末にIBMが出した433量子ビットが最大数です。
ただ、工学的に拡張したら1万は超えるようですが、100日以上も誤りなく量子ビットを保持する必要もあるので、実用的にはまだ難しいと思われます。

ということで、しばらくはまだ量子コンピュータによる暗号解読はなさそうです。
勿論今の技術は幾何級数的に進歩しているので、何とも言えませんが。

関連ですが、規模でなく「速さ」ではこの1年で進捗があります。例えば、下記の記事です。

要は、
世界最速となる6.5ナノ秒(10億分の1)で動作する2量子ビットゲートの作製に成功し、今後量子コンピュータ設計に応用が期待される、
という話です。

ノイズ発生するスパンよりどうも2桁以上速いため、それを無視できるようです。
実験内容を見ると、1ケルビンの10万分の1度程度(ほぼマイナス273度)に冷やしたルビジウム原子を二つ、光ピンセットで数マイクロメートル間隔で並べ10ピコ秒(ナノの千分の1)のレーザーを当てるという、超繊細な作業を行っているようです。

コンピュータの実験というよりは、もはや化学であり物理ですね。

量子コンピュータはもう科学の総合格闘技に近い領域に突入しており、学生的な協力が不可欠になっていると思います。

言い方を変えると、思いもよらぬ協力で一気にブレークスルーが起こる可能性も否定できません。
昨年同様今年も量子のトレンドは無視できません。

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