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《第10回SCCしずおかコピー大賞 独りごと反省会。》 vol.50

課題5:
気軽に、楽しく、カウンセリングを受けたくなるコピー
・初耳だった、私の気持ち。

人の本音。マーケティングなどの用語では、インサイトと呼ばれるもの。他人はもとより、じぶんの思いや考えでもあるのに、なかなか言語化しにくい。フワフワとして掴めない。この本音を捉えるために、企業は大金を投じるし、個人であれば誰かに相談したり、本を読んだりと手間を費やす。それでも、なお芯を捉えることができない場合も多々あり、今でもいろいろな学問の研究対象として扱われることもある。

だが、コピーはインサイトというコトバが開発される以前から、本音を捉える試みを重ね、商売としてコピーライターという職業を成り立たせてきた。流行り(少し古い?笑)のデザイン思考の文献を読むとき、そのメソッドには、コピーライターのメソッドの片鱗が散りばめられているように思えた。人は急激に進歩はしないし、進化となると果てしない時間を必要とする。本音への取り組みは、さほど新しいメソッドではないという事実を、改めて頭の片隅に置いておくことにする。

さて、今回は大賞コピーです!

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じぶんの気持ちを知ることは難しい。コトバにならない思いを知ったとき、とてもすっきりした気分になる。

肚に落ちる。日本人は、古来から頭で考えるのではなく、身体、特に肚でモノゴトを考え受け止めてきた。個人的には、スッとする気分を味わうとき、肚がスッと軽くなる感覚を得ることから肚で思考しているように感じていたのではないかとも思う。また、ストレスも胃などの臓器に負担を与える。ストレスの軽減によって、痛みやもたれなどの重さがフッと消えるのも肚に落ちる現象の一つではないだろうか。

近年では、腸内環境の研究の成果により、腸内環境(特に細菌群のフローラ)を整えることで身体のあらゆる部分に良好な効果を示すこともわかってきた。日本人の感覚的なことが裏付けられたような気もするのは、私だけではないだろう。

『初耳』。このコトバは伝聞を通じた発見を意味する。その示す先は『私の気持ち』である。普通ならじぶんのことがわからないという矛盾に聞こえるのだが、複雑化した世の中でのインサイト理解の困難さを物語っている。その上で、肚に落ちる爽快さを情緒的価値として読み手に伝えきっている。

カウンセリングの機能的価値は、気持ちの整理ではなく、その向こう側にある生き方の問題解決であるのなら、『私の気持ち』というインサイト(気づかない本音)から導かれるこれまでのじぶんにない新しい考え方が、問題解決への道標になると読める。

カウンセリングとは、言わば自分探しである。カウンセラーが答えを教えてくれるわけでも示してくれるわけでもない。じぶんでじぶんの中にある問題とその解決策を探し出すために、カウンセラーはそのメソッドによって問題を整理してくれる存在である。このコピーは、カウンセラーと依頼者の関わりについての本質を突きつつ、カウンセリングという手法の効用を穏やかにかつ鮮烈に表現してくれている。

2019年度の最高賞を獲得したコピーは、いかがだったでしょうか。大賞コピーは、読み込むほど味わい深く、読むだけでカウンセリングを受けているような気持ちにもさせてくれます。プロが書くことも難しい、最高賞にふさわしいコピーだったと思います。素晴らしいコピーのご応募、それによる鮮烈なコトバとの出会いに感謝します。Sさん、ありがとうございました!


※コピーの版権・著作権等の使用に関する権利は、静岡コピーライターズクラブに帰属します。
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