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光ったインドネシア ジョコ大統領の外交手腕 ウクライナとロシアを訪問

参議院選挙が近づいていますが、昭和の余韻が残る平成元年、国会に卍字固め、消費税に延髄斬りという、今の時代では考えらえないようなキャッチフレーズで出馬して、ぎりぎりで当選したのが、アントニオ猪木氏でした。当初は所謂、スポーツタレント候補として揶揄されていたことは否めません。ところが1990年に、イラクで人質となった日本人解放のため率先して乗り込んだのは猪木氏。その行動が実を結んで人質が解放されると、世間の見方は一変します。その行動力は当時大絶賛され、政治家猪木の真骨頂を発揮した瞬間だったともいえるでしょう。

なんでこんな話をしたのか、現在のウクライナとロシア、この双方を訪問するのはかなり勇気のいることです。ゼレンスキー大統領に会えても、プーチン大統領に会うことははばかられます。ところが、その離れ技をやってのけたアジアの政治家がいます。インドネシアのジョコ・ウィドド大統領です。

インドネシアは2022年のG20(バリ開催)の議長国です。そのなかで注目されているには、ウクライナのみならずロシアとの関係を維持して、関係改善を目指していることです。



インドネシアは、伝統的に中道志向が強い国であり、ジョコ氏もその潮流を継承していることが、両国訪問の背景にあるという見方はできるかもしれません。


さらに、G20議長としての行動以外にしたたかな計算が働いていると私はみています。

国際制裁の最中、ロシアは、引き続き原油・ガスの輸出を続けていますが、制裁包囲網が強まる中で原油・ガスを中国・インドに割安(市場価格よりはという意味で、安いという意味ではありません)で輸出して凌いでいる面があります。さらに、ロシアは、肥料の世界的な生産国です。他方で、ロシア人が自由に海外渡航に行ける先は絞られてきています。

インドネシアとしては、上記にも注目している可能性が高そうです。同国は資源大国ですが、原油は既に純輸入国になっています。パーム油の大生産国でもありますが、その肥料が不足・高騰しています。さらに、バリに代表される観光地への来訪者回復には苦戦しています。

そこで、エネルギーなどで中印のような動きを見せてくる可能性はあります。さらに、新型コロナで止まっていたバリ・モスクワ便の再開が協議されているとも報じられています。

中道であれば、そういう行為は看過されるのか・・・インドネシア国内にも危機感はありますが、少なくとも、インドは看過されているといえそうです。

https://note.com/koji_sako/n/n74648cbe8e7a


ジョコ大統領は、内政では卓越した手腕を発揮して、気が付けば少数与党が連立与党が議席の過半を確保しています。政敵も内閣に取り込むなど、相当なやり手と言っていいでしょう。

日中を高速鉄道では競わせ、事前予想の日本側が外されて、中国側が受注するも、工事の遅延が続き、当初不要とされた財政投入も余儀なくされるなど、迷走もありますが、内政上の大事には至っていないようです。

今回のウクライナ、ロシア訪問は、G7ドイツサミットにインドネシアが招待されたこともありますが、中道色の強さが両国の訪問を可能にさせ、プーチン大統領へのメッセンジャー役を担い、さらに、実利も得ようとしているように見えます。当然、ここには賛否があるでしょうが、市民の生活水準を鑑みるに、自国優先というしたたかさも、新興国には必要な場面はあるのでしょう。

ジョコ大統領にウクライナ・ロシア訪問は一見、外交パフォーマンスのようにも見えますが、腹の据わった勇気がないとできない行動であることは間違いありません。

ジョコ氏は2024年には任期満了となりますが、まだ2年弱の任期を残しており、経済安保の時代のインドネシアには、大いに注目しておいたほうがよさそうです。

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