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『絵本』 どんぐり もんだい


表紙

どんぐり もんだい

作•絵 なかたこうじ


とびら

01

ことしの あきは、 いつもより どんぐりが すくなかった。
くまの おかあさんは たべものを さがして
あさはやく やまを おりてきました。

そして、 のねずみくんは きょうも
リュックを せおって どこかへ でかけるようです。


02

のねずみくんは、
どんぐりが たくさん ある ばしょを みつけたので
ともだちの たぬきくんに おしえたかったのです。

「た、ぬ、き、くーん! どんぐりを ひろいに いこう」と いうと
「うん いこう!」と たぬきくんは こたえた。

ふたりは しばらく あるくと、 かわぞいの みちを すすみ
おおきな いわの あいだを おりていきました。
そこは、 たぬきくんの しらない ばしょでした。


03

「うわーすごい!」たぬきくんは そういうと、
おおよろこびで はしりだしました。

「ここは どんぐりの たに、
みんなには ないしょだよ」と
のねずみくんが いうと
「うん! わかった。 ひみつは たのしいね」と
たぬきくんは いいました。


     04                                                   

ふたりは たくさんの どんぐりを かばんに あつめると、
つぎは どっちが いちばんの どんぐりを みつけるか
きょうそうを はじめました。

「よーい、どん!」
ふたりは こえを あわせて、 べつべつの ほうこうに はしりだしました。


05

しばらくして、 ふたりは みつけた どんぐりを みせあいました。  
「ほら、 ぼくの どんぐりが いちばんだ!」
のねずみくんの みつけた どんぐりは、 いちばん おおきかったのです。

「ちがうよ、 ぼくの どんぐりが いちばんだよ」
たぬきくんの どんぐりは、 いちばん おもかったのです。
そうです、 どっちも いちばんの どんぐり なので
ふたりは じぶんが ただしいと、 けんかに なりました。
そして いやな きもちに なったので、 べつべつに かえりました。


06

「ぼくの どんぐりが いちばん なのに、、、」
ずんずん ぷんぷん、 ずんずん ぷんぷん、
おこった たぬきくんは ひとりで あるいて かえります。

「ぼくが ただしいのに、、、」
ぽとぽと ころころ、 ぽとぽと ころころ。
かばんの あなから どんぐりが おちているのに きが つきません。

「ぼくが、、、 ぼく、、、 ぼく、、、 、、、 、、、」
ぽとぽと ころころ、 ぽとぽと ころころ。
もやもや もやもや 、、、


07

いえに かえった たぬきくん。
かばんの なかに いっぱい あった どんぐりは、
ぜんぶ おちて なくなってしまい がっかりです。

しばらくしても もやもやして、 いやな きもちは きえません。
でも、 だんだんと じぶんのことよりも
おこった のねずみくんの ことが きに なってきました。

「そうだ、 この どんぐりは のねずみくんに あげよう!
よろんでくれてるかな?」
そうすれば この もやもやが なくなると おもい
いそいで のねずみくんの いえへ むかいました。


08

いえに かえった のねずみくんも、
もやもや いやな きもちの ままでした。
だから ずーと かんがえて いました。

ふたりの どんぐりは どちらも いちばん だった。
「そうだ! ふたりとも ただしかった」

なのに なぜ いやな きもちの ままなんだろうかと かんがえた。
「そうだ! けんかが ただしくなかったんだ」
そう おもった のねずみくんは、 そのことを つたえようと
いそいで たぬきくんの いえへ むかいました。


09

たぬきくんは のねずみくんの いえに つきました。
「の、ね、ず、み、くーん」と おおきな こえで よびましたが、
のねずみくんは たぬきくんの いえに いったので るすでした。

そのころ、 のねずみくんも たぬきくんの いえに つきました。
「た、ぬ、き、くーん」とおおきな こえで よびましたが、
たぬきくんは のねずみくんの いえに いったので るすでした。

どうやら ふたりは、 べつの みちを あるいて きたようですね。


10

しばらく まっていた たぬきくんは、
のねずみくんが かえったときに、 よろこぶと おもって
いちばんの どんぐりを いりぐちに おいて かえりました。

のねずみくんも しばらく まっていましたが、
たぬきくんを、 びっくりさせようと おもい
いちばんの どんぐりを いりぐちに おいて かえりました。
つまり ふたりは おなじことを かんがえましたが
べつの みちを あるいて かえりました。


11

でも、 のねずみくんが かえったあとに ここで びっくりしたのは、
くまの おかあさんでした。

あさから たべものを さがして、 たぬきくんの いえまで やってきたのです。
「まあ、 おおきな どんぐりが あるわ!」 と びっくり、
のねずみくんが おいていった いちばん おおおきな どんぐりを
おおよろびで もって いきました。


12

そのご、 いえに かえってきた たぬきくん、 
せっかく のねずみくんが おいていった どんぐりは
くまの おかあさんが もっていったので
もう どんぐりは ひとつも もっていません。

でも、 そんなことは もう どうでもいいのでした。
いまごろ のねずみくんは いえに かえって
「ぼくの どんぐりを みつけて よろこんでいるかな」
と おもうと たのしくなりました。

そして、 もやもや いやな きもちは きえていました。


13

いえに かえった のねずみくん、
いえの まえの おおきな どんぐりを みつけると、
たぬきくんが きたんだと わかりました。

「たぬきくんも ぼくと おなじことを していたんだ」
と おもうと とても うれしく なりました。

そして、 もやもや いやな きもちは きえていました。


14

そのころ くまの おおかあさんは
たぬきくんが おとしていた ちいさな どんぐりを みつけました。
どんぐりは つきの ひかりを うけ、 ぴかぴか していました。

その ぴかぴかを ひろって、 かわぞいの みちを すすみ
おおきな いわの あいだを おりると、 そこは どんぐりの たにでしした。

「まあ、 どんぐりが たくさん あるわ!」
とても たくさんの ぴかぴかが、 まるで よぞらの ほしの ようでした。

どんぐりが ぴかぴかするのは、 みんなに みつけて ほしいからです。

「これで ゆっくり こどもたちと ふゆごもりの よういが できる」
あんしんした くまの おおかあさんは
たくさんの どんぐりを かばんに いれると
こどもたちの まつ やまへ、 おおいそぎで かえりました。


15

つぎの ひの きのうと おなじ じかんに、
のねずみくんは リュックを もたずに、 たぬきくんの いえに きました。
たぬきくんも やくそくは してなかったのに いえから でて まっていました。

のねずみくんは いままでと おなじように
「どんぐりの たにを みんなにも おしえてあげよう!」と いうと
「そうだね! ひみつよりも それが いい」と たぬきくんは こたえました。


そして、 みんなを さそって
どんぐりの たにへ いきました。



















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