いでこうじ

電機メーカーの人事・人材育成、組織開発コンサル部門に約40年間勤務。企業出版の立ち上げ…

いでこうじ

電機メーカーの人事・人材育成、組織開発コンサル部門に約40年間勤務。企業出版の立ち上げや、社内リーダー向け人材育成誌の編集・執筆に携わる。現在、フリーランスの人物ライター。経営者やビジネスマンから学者、芸術家や職人の方々など、さまざまな人びとへのインタビュー&ライティングを行う

記事一覧

蕗と苺(ふきといちご)

八王子の下恩方にある武田信玄の娘・松姫ゆかりのお寺・心源院から、八王子城址を抜けてJR高尾駅に至る山道を「心源院歴史古道」という。 小学四年生だった私は、祖父と…

いでこうじ
11か月前
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皆との「いのちの旅」に乗り遅れた私

ちょっと聞くのが遅すぎたかもしれないわね。この歳になると、辛かったりしたことも、良い思い出になっちゃうから。でも、そんな中でも忘れられないことといえば、やっぱり…

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旅の「ハプ二ング」は、新しい自分を教えてくれる

僕の好きな旅は、「ハプニング」が起こる旅だ。 ハプニングといっても、大きな事件や驚くような出来事ではない。 些細なこと、たとえば、乗換駅で上下線を間違えたとか、急…

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私は、私の人生を「こんな人生もいいものだ」と言えるだろうか

昨年(2021年)8月、作家の高橋三千綱氏が亡くなった。 享年73歳。芥川賞作家である氏にはベストセラー小説も多いが、地味な本もある。 ルポルタージュ集である『こんな人…

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蕗と苺(ふきといちご)

蕗と苺(ふきといちご)

八王子の下恩方にある武田信玄の娘・松姫ゆかりのお寺・心源院から、八王子城址を抜けてJR高尾駅に至る山道を「心源院歴史古道」という。

小学四年生だった私は、祖父と二人でその山道を歩いていた。春のお彼岸の時期だった。
いつもならば、西東京バスで陣馬街道を八王子駅まで戻るのだが、その日はなぜか、祖父と二人で高尾駅までの山道を歩いていた。家族全員で墓参りに来たはずなのに、なぜ祖父と二人で歩いていたのか、

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皆との「いのちの旅」に乗り遅れた私

皆との「いのちの旅」に乗り遅れた私

ちょっと聞くのが遅すぎたかもしれないわね。この歳になると、辛かったりしたことも、良い思い出になっちゃうから。でも、そんな中でも忘れられないことといえば、やっぱり戦時中の体験だわね。

昭和一九年の夏、学徒勤労動員令というのがあって、私たち伊那高女(長野県伊那市)の四年生は全員、名古屋にあった三菱航空機の軍需工場に動員されたの。今でいう高校一年生。みんな、親元を離れるのは初めてだったから、とても不安

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旅の「ハプ二ング」は、新しい自分を教えてくれる

旅の「ハプ二ング」は、新しい自分を教えてくれる

僕の好きな旅は、「ハプニング」が起こる旅だ。
ハプニングといっても、大きな事件や驚くような出来事ではない。
些細なこと、たとえば、乗換駅で上下線を間違えたとか、急に途中下車したくなったとか、途中で忘れ物に気づいたとか。
ここでは、僕のそんなハプニング旅を、二つご紹介する。

一つ目は、時計を忘れた旅。
ある秋のこと。名古屋出張の帰りにふと飯田線に乗りたくなって、豊橋駅で途中下車した。
飯田線は、愛

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私は、私の人生を「こんな人生もいいものだ」と言えるだろうか

私は、私の人生を「こんな人生もいいものだ」と言えるだろうか

昨年(2021年)8月、作家の高橋三千綱氏が亡くなった。
享年73歳。芥川賞作家である氏にはベストセラー小説も多いが、地味な本もある。
ルポルタージュ集である『こんな人生もいいものだ』も、その一つだ。

本書は、市井で生きる人びとへのインタビューをまとめたもの。
登場するのは、手作り飛行機に挑む自動車修理工場の経営者、3年間一度もベンチ入りできなかった高校球児、役者専門理髪師、など14名。彼ら彼女

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