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皆との「いのちの旅」に乗り遅れた私
ちょっと聞くのが遅すぎたかもしれないわね。この歳になると、辛かったりしたことも、良い思い出になっちゃうから。でも、そんな中でも忘れられないことといえば、やっぱり戦時中の体験だわね。
昭和一九年の夏、学徒勤労動員令というのがあって、私たち伊那高女(長野県伊那市)の四年生は全員、名古屋にあった三菱航空機の軍需工場に動員されたの。今でいう高校一年生。みんな、親元を離れるのは初めてだったから、とても不安
私は、私の人生を「こんな人生もいいものだ」と言えるだろうか
昨年(2021年)8月、作家の高橋三千綱氏が亡くなった。
享年73歳。芥川賞作家である氏にはベストセラー小説も多いが、地味な本もある。
ルポルタージュ集である『こんな人生もいいものだ』も、その一つだ。
本書は、市井で生きる人びとへのインタビューをまとめたもの。
登場するのは、手作り飛行機に挑む自動車修理工場の経営者、3年間一度もベンチ入りできなかった高校球児、役者専門理髪師、など14名。彼ら彼女