野生の国ケニアへ【世界一周150日目〜151日目】
世界一周150日目。約2週間滞在したヨルダンもついに最終日。初めてここに来た日がだいぶ昔のように思える。
今日やるべきことは一つ。カナーフェを食べること。朝起きて、貴重品だけを携えて、ゲストハウスを出る。Tシャツに短パン、ビーサンの軽装で、スイーツ屋へ。
前日の夜は大行列だったが、朝は空いていた。1人しか待っていなかった。
さあ、カナーフェの食べ納め。
う、う、うまい...。ほんとに悪魔的なスイーツだ。一昨日見つけてから3日連続のカナーフェ。それでも飽きることはない。朝ごはん代わりに食べるのも悪くない。一口一口を噛み締めた。
ゲストハウスに戻り、荷造りをする。もともと荷造りは得意ではないが、この旅のなかでどんどんスピードが上がっている気がする。何だって、やり続ければ上達するんだな。
チェックアウトをした後は、共有スペースでパソコン作業の時間。アフリカに行く前に少しでも溜まっている仕事を片付けたい。
作業を始めてまもなく「日本人ですか?」と声をかけられた。ヨルダンとチュニジアを1ヶ月旅している日本人女性に出会い、2時間も話し込んでしまった。
彼女はテレビ制作会社のADを7月末でやめて、旅をしに来たのだという。ヨルダンは2度目で一通りの観光はすでに終えているらしい。今回ヨルダンに来た理由はイスラム教について深く知るためで、ヨルダン人の家に遊びに行ったり、一緒にご飯を食べたりして過ごしているのだそう。なかなかタフな女性だ。
お互いの簡単な自己紹介をした後は、イスラム教について意見交換。僕はヨルダンやイスラエルを訪れて、イスラム教というか宗教全般に関してたくさんの疑問が湧いていた。なのでその疑問を彼女にぶつけることにした。
色々と議論をした後、彼女は言った。「ヨルダン人と話して少しはイスラム教について理解したと思っていたけど、何も分かっていないような気がしてきました。んー、もう」
なんかごめん。でも、それでいいのではないか。
相手の文化や慣習について、知ろうとする姿勢は大切。それが相手へのリスペクトだ。一方で少し勉強したり体験したりした程度で「分かった気になる」のは非常に危険だと思う。
宗教についていえば、その宗教の教えや成り立ちの歴史などの知識を学ぶことはできるが、最終的には「信じるかどうか」。この問題へと行き着くように感じる。
当然、僕は全人類に信仰の自由があるべきという立場。だから、誰が何を信じていてもいいと考えている。
しかし、僕は現時点においては「信じられない」。どの宗教がどうとかではなく、神様の存在を心の底から信じられないのだ。神が大地を、人間を造ったなどというのも正直、??である。
いくら宗教への知識をつけたところで、信じることができないかぎり、僕たちと彼らイスラム教徒(だけではないが)との壁は残る。それは仕方のないことであり、壁の存在を認めることもきっと大切なことだ。
2時間に及ぶ議論は何の結論も出ず堂々巡りで終了。最後に彼女はノートを破り、アドレスと名前を書いた紙を渡してくれた。僕も同じようにアドレスと名前を書いた。「さよならー!」彼女は元気よく外に出かけていった。
これまで出会った旅人と連絡先を交換するときは、決まってSNSだった。だいたいインスタ、たまにTwitter。しかし僕と同年代かおそらく年下の女性は、ノートの切れ端にアドレスを書き残していった。なんか素敵だ。
仕事は全く進まなかった。けどこんなひとときも悪くない。
その後、少しだけ仕事を片付け、15時前にはゲストハウスを出た。まずは空港行きのバスが出る北バスターミナルは向かう。タクシーを探さなければ。
Uberは使えない。SIMカードの契約は10日間で切れていて、ネット接続ができないからだ。
流しのタクシーをつかまえて、交渉する。メーターを使ってくれず「7ディナール?」などと言ってくる。高い。
6ディナール、5ディナールと徐々に値段は下がり、4台目で3ディナール(約630円)で行ってくれる運転手に出会った。
キミに決めた!
北バスターミナルでエアポートバスに乗り換え、16時46分に空港に到着。飛行機は21時10分発。タクシーやエアポートバスに乗るのに手間取ることや渋滞なども考慮して余裕を持って来たが、意外にスムーズに行き、かなり早く着いてしまった(時間に余裕を持った時に限ってスムーズにことが運ぶ説)。
離陸まであと4時間半。でも大丈夫。僕には最強の武器がある。空港のラウンジで無料で飲み食いができるプライオリティパスだ。
プライオリティパスがあれば、何時間でも空港にいたいくらい。だが、その前に関門がある。出国審査、荷物検査を通り抜けないと、ラウンジにはたどり着けない。
そして、出国審査をするためには、まず航空会社にチェックインしなければいけない。しかし、登場時間まで時間がありすぎて、チェックインはまだ始まっていないのだ。というわけで、空港内のベンチでしばらく待たなければいけない。
早く来ればいいというわけでもないから、旅は難しい。今回利用する航空会社はサウジアラビアのサウディア。サウジアラビアのジッダで乗り継ぎ、ケニアのナイロビへと向かう。
チェックインが始まり、出国審査や荷物検査を乗り越え、ラウンジにたどり着いたのは18時48分。さあ、やっとごちそうの時間だ。
今日はラウンジ飯に期待して、朝カナーフェを食べただけだった。お腹を空かせてきた。乞食根性を発揮して、食べる。食べる。食べまくる。
ただ、あまりに乞食根性がありすぎた。飛行機に乗ると、下腹部に違和感が。搭乗前にトイレには行った。なのに…
そして、サウディアは、なんと機内食がある。嬉しいが、正直今は食べ物を欲していない。
「ピッツァorケーキ?」
いや、どんな選択肢やねん!と思いつつ、ピッツァを注文。
完全にミスった。隣の席の方はケーキを選んでいたのだが、いわゆるカップケーキで個包装されていた。つまり、持ち帰ることができる。
しかし、ピッツァはアツアツのご提供。今食べなければいけない。ミスった。ケーキにすればよかった。
体は全く欲していない中、乞食根性だけでピッツァにかぶりつく。本当によくない。
食べ終わった後、我慢できずにトイレへ。トイレから座席に戻る際に、頭をぶつけて、隣の席の方に笑われた。そこから会話が始まった。
彼の名はウスマ。シリア人で、ケニアのNGOで働いているという。彼と話していると、あっという間にサウジアラビア・ジッダへ着陸。
サウジアラビアの空港で、日付を超えた。空港泊というのか何というのか。
サウジアラビアで、世界一周151日目がスタート。
ここで、またしてもプライオリティチャンス!ということで、ラウンジへ。
もうお腹いっぱいだから、スイカとカプチーノだけ。何も食べなくても、静かで居心地の良いラウンジの利用価値は高い。
乗り継ぎ便は1時間以上の遅延。この遅延は大歓迎だ。もともと午前4時55分にケニア到着予定。市内へ向かうバスの運行までどちらにしろ時間をつぶさなければいけない。いくらでも遅れてオッケーだ。
2時35分に無事離陸を果たし、またも機内食が回ってきた。今回はチキン、ラム、ピッツァの選択肢。サウディア、独特。
ラムも気になったが、守りに入りチキンを選択。もちろんまだお腹は空いていないが、とにかくお腹に入れる。
そもそも時刻は午前3時21分。ご飯を食べる時間ではない。
だが、これから向かうのはケニアだ。サバンナで生活する動物たちと同じく、食べ物は食べられる時に食べなければいけない。毎日決まった時間に確実に食糧があるなんて生活は、一部の特権階級の人だけだ。僕はアニマルスピリッツを発揮して、機内食を平らげた。
その後はしばしの睡眠。眠れる時に眠っておく。これも野生で生きる我々の鉄則だ。
午前5時52分、ケニア・ナイロビへ着陸。直後に乗客から大きな拍手が。「アーレレレ!」「アーレレレ!」とケニア人は謎の盛り上がり。
機外へ出てからも、ケニア人は「ウェルカムバック、ケニア!!」とやたらテンションが高い。これが陽気で明るいケニア人か。
こちらは超絶テンションが低い。なんせ2時間くらいしか眠れていない。めちゃくちゃ眠い。
しかし、いよいよアフリカへ入った。眠い目をこすり、緊張感を持たなければ。
入国審査の前に、いきなりイエローカード(黄熱病のワクチン接種証明書)の提示を求められ、驚いた。4月にタイでゲットしたイエローカードが初めての活躍。続いて、入国審査。さあ緊張の瞬間だ。
ビザは事前に取得していた。ただ、僕は不安があった。ビザのプリントが白黒であることだ。
ネットで調べるかぎり「ケニアビザは必ずカラーでプリントするように」と書かれていた。カラーで印刷したかったのだが、ゲストハウスのプリンターは白黒しかないと言われた。そこでカラープリントを求めてヨルダンの街を彷徨う選択肢もあったが、僕は「まあ白黒でいけるっしょ!」と考えた。なんでも楽観思考、悪い癖だ。
ビザの列に並ぶ他の人の様子を見る。全員、カラープリントのビザを持っている。不安が増していく。入国できなかったらどうしよう。
手元には白黒で印刷されたビザ、スマホのカラーのビザの画面、そして5ドル札を握りしめた。「カラーじゃないからダメ!」と言われたら、5ドルを賄賂として渡すつもりだった。
あらゆる手段を使って入国しなければいけない。それが野生の国で生きるということだ。
いよいよ自分の番が来た。「ハロー!」。満面の笑みで、白黒のビザとパスポートを入国審査官へ渡す。
入国審査官は「何日ケニアに滞在するの?」「ケニア入国の目的は?」などと質問してきた。いけそうだ。
手続きはわずか5分で終わった。賄賂は必要なかった。無事入国!
バックパックを受け取り、30ドル分だけケニアシリングへ両替し、SIMカードを購入。空港近くのカフェで少々時間をつぶした後、ローカルバスへ乗った。
ローカルバスはかなりもみくちゃにされるとの事前情報があったが、乗客は誰もいなかった。
しかし、一人、また一人と乗客が増えていく。しかもなぜか途中で乗り換えを命じられる。ダウンタウンへ直通のバスではなかったらしい。
ここから一気にカオスになっていく。いつの間にか満席になり、荷物を守ることに全集中。乗客も普通にスマホを使っているので、僕もスマホをいじっていたら「スマホ気をつけて!窓!」と言われた。窓からスマホを奪ってくることが多いようだ。
結局、乗り換えを含めて1時間20分もバスに揺られた。バス停を降りると、異様な光景が広がっていた。
とにかく、人が多い。道がごちゃごちゃしている。これはスマホや財布を盗まれてもおかしくない。最大限に警戒しながら、なんとか予約したゲストハウスへ。
シングルルームなのは嬉しいが、水回りがあまり清潔ではない。部屋にはゴキブリの小さいバージョンのような虫もいた。すでに2泊予約してしまっている…
やはり新しい国に来ると、どっと疲れる。機内泊で十分眠れていないこともある。
カフェで仕事をした後、早めに宿へ戻ることに。夜に街を出歩くのは怖かったので、夕食はケンタッキーでテイクアウト。
野生の国ケニアでの旅が始まった。
明日はどんな一日になるのだろう。何があってもマイペンライ!
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