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【シナリオ】今、カフェでパフェを食べて満たされる、を生きる。

6月のとある晴れた日の放課後。夕日が沈む前に、同じミュージカルスタジオに通う高校1年生の夕月彩奈と、中学3年生の亜冬なずなは、2人の学校の近くにある落ち着いたカフェを訪れた。
先にレジで注文を済ませたなずなは、このオシャレな雰囲気を楽しみながら、席にて彩奈を待っていた。
「稽古がない日にこのカフェに行きたい!」と、ずっと前から彩奈に約束を取り付けていたなずなは、学校が終わってから気持ちの昂りが収まらない。おしりの下に両手をいれ、足をじたばたと動かしながら、彩奈が席に向かってくるのを見つめていた。

彩奈「お待たせ。」
なずな「おかえり!何頼んだのー?」
彩奈「ふふふ。」
なずな「え、なになに」
彩奈「パフェ、頼んじゃった。」
なずな「え!」
彩奈「抹茶の。白玉とかのったやつ。」
なずな「わたしも!」
彩奈「パフェ?」
なずな「うん!」
「ふふっ」「えへへ」
なずな「あ、でもプリンと、生クリームと、チョコかな、がたっぷりのったやつにした!」
彩奈「好きそう(笑)」
なずな「彩奈ちゃんも。」
彩奈「抹茶?」
なずな「うん。なんか、凛としてるくせに、甘い感じが、似てるなって。」
彩奈「...ん?褒めてる?」
なずな「褒めてる褒めてる!」
彩奈「ならよし。」
なずな「久々だなーパフェ。」
彩奈「楽しみね。」
なずな「食べ切れるかなぁー。」
彩奈「食べきれなかったらどうする?」
なずな「彩奈ちゃんにあげる!」
彩奈「私もそんなに食べられないわよ。」
なずな「そっか。」
彩奈「食べきれなくても、心が満たされればいいんじゃない?」
なずな「ああ確かに。お金払ってるのこっちだしね!
パフェをここで頼むことに、意味がある、って感じだし。」
彩奈「カフェで友達と食べるパフェって、特別よね。」
なずな「うん!特別!」

店内を見回し、ずっとにこにこしているなずな。

彩奈「なずな、最近どう?」
なずな「ん?」
彩奈「稽古は楽しい?」
なずな「んー。楽しいか楽しくないかで聞かれたら、楽しいよ。ワクワクする。」
彩奈「あんま演じたことない役だもんね、今回。」
なずな「うん。色んな心の引き出し開けて、これかな、どうかな?って感情探すの、楽しい。」
彩奈「よかった。」
なずな「でも、ついていけてないことは確かだから、きっとこれから楽しくなくなっちゃうのかもしれないな、とか考えちゃうことは、ある。」
彩奈「難しいわよね。」
なずな「難しい。演技ってほんと難しい。だから楽しいんだけどね。彩奈ちゃんは?今の稽古楽しい?」
彩奈「そうね、"まだ"楽しいかも。」
なずな「あはは、まだ、わかる。」
彩奈「ずっと楽しいでいるのって難しいわよね。」
なずな「ほんと難しい。たのしいって、上手くいってるってことだもんね。」
彩奈「上手くいってても、途中で上手くいかなくなって、切羽詰まって、楽しくなくなったり。」
なずな「でもさ、ずーーーっとたのしくても、あれ、これでいいのかなって勝手に不安になって楽しくなくなること、ない?」
彩奈「あるある。ダメ出しもらえなかったりすると、逆に心配になるよね。」
なずな「で、演出家に聞きに行くんだけど、」
「「『特に問題ない』って言われたり!」」
なずな「あはははは!」
彩奈「なんでだろう、なんか心配になっちゃうのよね。」
なずな「人間ってそんなもん?それとも私たちが心配性なのかな?」
彩奈「私たちが心配性なのかもしれないわね。」

店員がパフェをふたつ持ってきて、2人の目の前に置く。
溢れんばかりにアイスクリームとホイップクリームが沢山載ったパフェが2人の目の前に現れた。

なずな「うわあああ✨️」
彩奈「すごいわね...!」
なずな「せーの!」
「「いただきまーす!」」

なずな「んうううおいしい!!」
彩奈「はぁぁ、満たされる...!」
なずな「満たされる、幸せだね...☺️」
彩奈「うん、幸せ...!...幸せ、ってことは」
なずな「はっ!ダメだよ!不安になっちゃ!『パフェ、食べ切れるかな』とか、『気持ち悪くならないかしら』とか、ダメだよ!」
彩奈「そうだった、満たされることに集中しなきゃ。」
なずな「そうそう!!」

彩奈「満たされることに集中って、なに?」

「「ぷっ、あはははは!」」
なずな「幸せになることに真面目すぎるね、私たち🤣」
彩奈「ほんと、きょうは何もかも忘れたいのに」
なずな「忘れよ忘れよ。このパフェと、このまったりなカフェに、癒されよう。」
彩奈「そうね、今のこれだけに集中して、あとのことは考えない。」
なずな「そう!そしたら全部楽しくなる、幸せになる、今が満たされる!」

2人、一緒に生クリームたっぷりのところを救って、口に入れる。

「「満たされる〜〜!」」

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