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だって、恋したいもん……ある日



少し暑さも落ち着いて来た10月のある日…




カランコロ〜ン

優子「いらっしゃ〜………」

優子「あーら、今日も二人そろって仲良なかいいねぇ〜♪」

義雄「えー、優子さんからかわないでよー」

優子「今日は学校昼まで?」

義雄「うん、もう試験前だから短縮授業なんだよ」

優子「あ、そっかぁー中間かぁ〜……懐かしいねぇ〜」



義雄「大人は勉強しなくていいからいいよなぁ〜」


優子「あら、それ言っちゃあ『子供は勉強してたらいいからいいよなぁ〜』てなるわよ」

義雄「え?そんなに大人おとなって大変?」

優子「そりゃ毎日生活のこと考えなきゃいけないし、夏休みも冬休みもないからねぇ〜」

義雄「あ、そっかぁ…夏休み無いの嫌だなぁ〜……」



優子「で、お昼まだなんでしょ?」

義雄「あ、うん……優子さんのドリアが美味おいしいって話してたら渡邉さんが食べたいって言うから」

理佐「そうなんです♪西野くんずっと言ってるから一度食べたいなぁ〜て♪」




優子「………」

義雄「あれ…? どうしたの優子さん……?」

優子「……いいわよ♪理佐ちゃんカウンターのほうに入っといで」

理佐「え……?」

優子「そこにエプロンあるからジャケットいでけて」

理佐「え、え、え???」

優子「作り方教えてあげる♪」

理佐「え……♪ いいんですか♪?」

優子「いいわよ♪ 西野くんもあたしが作るより理佐ちゃんが作ったほうがうれしいでしょ?」


理佐「え………♪」
義雄「え………♪」


優子「ほらもぉー!二人とも顔がにやけてるって!笑」

義雄「え、ちょっと優子さーん!」

優子「あはは♪! いいねぇ〜二人とも初々ういういしくて♪」

理佐「………♡」

優子「じゃあそこの冷凍庫にハインツのベシャメルソースあるから取ってくれる?」

理佐「あ、はい……これかな?」

優子「うん、そう」

優子「で、ボウルに200gはかってくれる?」

理佐「はーい」



と、思いがけず優子さんにドリアの作り方をおそわることになりました。




そしてドリアも焼き上がりカウンターの椅子いすに彼とならんで腰掛こしかけた。


義雄「わぁー!美味おいしそう♪」

義雄「これこれ!優子さんのドリアはホワイトソースがあふれてるのがいいんだよ」

優子「ちがうでしょ!今日は理佐ちゃんが作ったんでしょ!」

義雄「あ……ありがとう♪」

理佐「あ、うぅん……でも今日は優子さんの言った通りに作っただけだから…」

義雄「うん、でもうれしい……♪」

優子「手料理てりょうりとかまだ食べたことないの?」

義雄「うん、渡邉さんが作った料理はじめて食べる♪」


優子「……ふぅ〜ん」

理佐「え、だってまだそんな……」


義雄「………」


義雄「めないうちに食べよ♪」

理佐「あ、うん……」

義雄「いただきまーす♪」
理佐「いただきまーす♪」

義雄「あつっ、いけど美味おいしい♪」

理佐「ホント? よかった♪」

理佐「私も食べよ♪」

理佐「あ、うん美味おいしい♪」

理佐「ソースも濃厚のうこう美味おいしい♪」

優子「若い人には少しいめにしてるのよ」

義雄「え、そうなの?」

理佐「すごーい、優子さん料理上手なんですね」

優子「そりゃまぁお店やってますからね」

理佐「西野くんいつもこんな美味おいしいの食べてるんだぁ…」

理佐「私こんな美味おいしいの作れる自信じしんないなぁ…」

優子「大丈夫よ! 料理は愛情あいじょう♪ そこはあたしでは勝てないからねぇ〜」

理佐「え、やだぁ…」



優子「ところでさぁ…」

義雄「ん? 何?」

優子「あんたたちってどれくらいつの」

義雄「え、何?きゅうに…」

優子「いいから!」

義雄「え……祇園祭ぎおんまつりの時からだから……」

義雄「三ヶ月ぐらいかな?」

優子「ふぅ〜ん……」

義雄「え、何?何?」



優子「もうそろそろ名字みょうじで呼び合うのはないんじゃない?」


義雄「え……」
理佐「え……」


優子「いつまでも『西野くん』『渡邉さん』じゃないでしょ!」

理佐「え、そんなぁ……」

義雄「いや、ずかしいよ……」

優子「なに言ってんの!!ほら!言ってみなさい!」

義雄「えーー!!!」

優子「ほら!!こう言うのは男の子から言うの!!」

義雄「えー!!マジで……ずいなぁ……」

優子「やらないと料金ばい取るわよ!」

義雄「えー!!優子さん、それおどしじゃん!!」

優子「個人商店こじんしょうてんですから、今値上ねあげげしたんです!」

義雄「うわっ!卑怯ひきょうー!!」


優子「つべこべ言ってないで早くっ!
!」

義雄「え〜……マジでぇ……」

理佐「………」



優子「ほら、理佐ちゃん待ってるわよ!」

義雄「え…」

と、彼が私を見るのでえられず目をそらしてしまった。


優子「ほら!理佐ちゃんもちゃんと目を見て!」

理佐「えーー!! やだぁ……」

義雄「………」

優子「1分ごとに値段ねだん上がっていくからね」

義雄「うそっ!!?」

優子「ほら!観念かんねんして!!」

義雄「えー……もぉ〜……わかったよ……」



と、彼が椅子いすを回転させて私の正面しょうめんいた。


私は心臓しんぞうがドキドキしてうつむいてしまった。


優子「ほら、理佐ちゃん……ちゃんと彼の方をいて♪」

理佐「えー………」


と、優子さんの方を見るとぐな目で私を見ていた。

私は圧倒あっとうされ彼の方に自然と視線しせんが移動した。


すると彼が……



義雄「理佐♪」

と、呼んでくれた♪


私は顔が赤くなっているのが自分でもわかるぐらいでまたうつむいてしまい何も言えなかった……


すると優子さんが、

優子「ほーら!言ってくれたよ」

理佐「え……」

優子「理佐ちゃんも♪!」

と、言われて…



理佐「え……よ……よしおくん♪」

と、言うと彼の顔もみるみる赤くなっていった。

優子「アハハッ♪ いいねぇ〜若いって♪!」

義雄「ちょっともぉー優子さーん!!」
理佐「ちょっともぉー優子さーん!!」

優子「アハハッ♪ いいもん見せてもらったから今日はドリアおごってあげる♪」

義雄「え、うそ♪ マジ? ラッキー♪!」

優子「てか、まぁ理佐ちゃんが作ったからね…もともとそのつもりだったわよ」

義雄「え、なんだよぉー!それオレら遊ばれただけじゃーん!」

優子「アハハッ♪ でももうあたしの前で名字みょうじで呼んでたら料金ばいね♪」

義雄「うそぉー……悪魔あくまだぁー………」

と、優子さんにさんざん遊ばれてしまった…



でも……



彼が初めて下の名前なまえで呼んでくれた……♪






本編『だって、恋したいもん!』第一話はこちら




スピンオフ『=AKANE=』第一話はこちら


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