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医療における「マトリックス」という発想

 映画「マトリックス」の最新作公開が間近ですが、これに関連して「医療」におけるマトリックスに関して考えてきたことのメモです。

 マトリックスとは、医療分野では「基質」として訳されることが多く、ミクロにおけるファシアともいえる「細胞外マトリックス」などはこうした用法です。そもそもの原意としてはラテン語での「母」という意味で、何かを生み出す背景というニュアンスを持つものです(ウィキペディアによる)。大本的な意味から転じて、箱に何か「モノ」を詰めるときの「充填剤」的な使われ方もします。ファシアにおける用法はこれに近いように思います。

 大切な「モノ」に対しての充填剤ですから、陰陽論でいうと「陽」に対しての「陰」とも捉えられます。となると陰は「母」的な意味とも重なるので、原意に近くなりますね。
 そしてファシアの関連でいうと「~以外全部」といった「補集合」的な意味合いにも用いられます。こうした観点から、自分の分野との関連を探ると、まさに定義が困難な「代替医療」という用語は、正統な医療に対しての「補集合」ですから、極めてマトリックス的と言えそうです。
 自分の興味・関心も、当然そうした方向に向けられるので、よくよく振り返ってみると、このマトリックスという概念とかなり重なることに気づきました。

 こうした考えをウィルバーの四象限に対応させてみると、「We」の領域における人と人とのコミュニケーションでは、その空間で紡がれる「何か」、オープンダイアローグでの治癒をもたらす「何か」にあたると考えられます。
 そして「It」は幅広いですが、医学、身体という面では、まさに「ファシア」がこれにあたり、それゆえに別称として「生体マトリックス」とも称されているわけです。
 おそらく細胞外マトリックスなども含めて、広く議論するときは「ファシア」としての概念よりも「生体マトリックス」の方が適しているのではないかと考えます。
 それでは「I」の領域は何か。自我を支える大きな基盤・母体といえば、まさにエス・無意識・潜在意識と称されるものではないでしょうか。意識できる部分はごくわずかで、その膨大な根底部分は計り知れない大きさを有するわけです。これは時に集団的無意識を相互に反応しながら、大きなものとのつながりももつ。これを展開すれば「Its」の領域へも拡張しうる概念にもなりえます。

 急ぎ足ではありますが、マトリックスという用語により、ファシア、ダイアローグ、無意識(エス)というものが、ひとつながりの概念としてまとめられることになるわけです。これらに共通する「何か」に注意しながら、今後もまた考察を続けたいと思います。

マトリックス画像

マトリックス (字幕版)
グロリア・フォスター 2013-06-01


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