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小さな診療所から(5)

 だんだんと涼しくなる中で、なんとなくメランコリックな季節になってきましたね。気分的に、そこ指落ち込んで、夜も深く眠ることが出来ないなんて方もちらほら。季節的なものだから、とか、気合で何とか乗り切る、とか、ヒトそれぞれの対応があるようですが、暑かった夏の終わりと共にくる栄養の不足は、やはり十分な補充が欠かせないように思います。

 近年は、分子栄養学的な知見から書かれた分かり易い書籍も増えてきていますし、ネットにおいてもそうした情報はあふれていますので、うまく活用できる人は、こうした状況でもうまく乗り切ることができるでしょう。しかし、色々な方法があるからこそ、また迷うことにもなってしまうわけです。


 急速な気分の落ち込みと、眠りの浅さからくる易疲労とで、日ごろの仕事がつらくなり、現在、休職も考えている40代男性Cさん。
 東洋医学が体に優しいのではないかと思い、漢方専門薬局で「酸棗仁湯」の処方をもらったものの、あまり効果を感じられず、困っていたところ職場の同僚に勧められて来院されました。

 Cさんは、甘いものが好きで、食事もご飯などの主食が中心。脂っこいものや肉などは体に悪いと考え、なるべく野菜を多く食べるような食事内容(とくに根菜類を強く勧められていました)でした。お酒も好きで、特に日本酒を好んでいました。

 そこで現状を把握するための血液検査では、たんぱく質の摂取が極めて少なく、糖質過多のため、脂肪肝など内臓脂肪の蓄積を示す結果となりました。
 食事記録用紙をもとに、タンパク質を多めに摂取するような食事内容に変更し、代わりに、糖質の制限を心掛けるようにしました。
 加えて、ビタミンB群、亜鉛などを強化してマルチビタミンと合わせて摂取していただきました。主訴である「睡眠」に関しては、牛乳を飲むことに加え、メラトニンを処方し、就前に時折服用していた「補中益気湯」などの補剤を夜間は中止していただきました(朝の服用に変更しました)。

 これにより、夜中に3,4回は起きていたのが、1回に減り、熟眠感を得るとともに、朝の目覚めの心地よさを実感するようになってきました。さらに1週間ほどすると体力的にも気分的にも充実した感じが得られ、当初の主訴は1か月もするとほとんどなくなって、以前のように元気に仕事をすることが出来るようになりました。 

 睡眠障害のパターンはひとそれぞれ。絶対の良い方法というよりは、各人の不眠の状態に基づいた対処法で、栄養摂取の状況と合わせて修正していくことがベストです。
 大きな疾患に発展する前に、気が付いた不調からビタミン・ミネラルにより丁寧に体を修正していくという視点が大切です。

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SELF CARE BOOK 365日やさしい疲れのとり方
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