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第56椀 牡蠣の土手鍋

初出:2018年11月10日

<お味噌汁> ひと椀がつむぐ大切なもの それは日本のたから

「お味噌汁復活委員会」は、味噌汁の大切さをあらためて発信していこうと、2014年夏にFacebookページにてスタートしました。世話人、お味噌汁復活ライター、一般読者が思い思いの味噌汁を投稿しています。

味噌汁の出汁・味噌・具材を、それぞれに深く楽しく考え広め、毎日の食卓に味噌汁をいただく習慣を復活させるべく、活動の場を広げています。

私コイタは第1期からお味噌汁復活ライターをさせていただいております。ここでは私の書いた記事をまとめて紹介しています。


テーマ:味噌を合わせる

「牡蠣の土手鍋、〆のお味噌汁」

今月のテーマ「味噌を合わせる」と聞いて真っ先に思い浮かんだのが、以前読んだ本に載っていた広島県の郷土料理「牡蠣の土手鍋」です。その本には白味噌と豆味噌の二種類を使うのですが、あらかじめ練り混ぜることはせず、別々に鍋のフチに塗りつけ、その時々で違う混ざり合った味を楽しみながら食べるという、なんとも想像しただけで幸せな鍋で、いつか作ってみたいと思っていました。

ところが我が家では普段まったく白味噌は使わないので、なかなか作れずにいたのですが、今月のお題をいただいて、これは良い機会だと思って、この土手鍋のためだけに広島県から府中味噌を取り寄せちゃいました。白味噌を購入するのは初めてだったのですが、お味噌単体で舐めてみたら、風味は酒粕?と思うくらい米麹感が強かったです。びっくりでした。そして合わせるのは東海圏ではお馴染み愛知県の八丁味噌(豆味噌)です。ちなみに双方とも同じく江戸時代から小さな地域の数件でのみ作られている、地名が名前になっているお味噌なのですね。

豆味噌は固いのであらかじめ酒とみりんを加えて、すり鉢で練って柔らかくして土鍋に塗りつけます。白味噌は柔らかいのでそのまま塗りつけます。その土鍋に昆布水(昆布をつけておいた水)、酒、洗った牡蠣を入れ、お味噌を溶きまぜつつ一煮立ちしたら、まずは煮えばなで牡蠣をいただきます。関西のすき焼きでまず牛肉を先にいただくような感覚でしょうか。この牡蠣がやたらに美味い。

その後にハクサイ、長ネギ、シュンギク、キノコ類、豆腐などお好みの具材を入れていただきます。具材から出た水分で汁が薄くなったなと思ったら、フチの味噌を溶かして塩分調整したり、フチで乾いて焼き味噌みたいになったのをエノキ茸や白菜で拭きながら食べてみたりと、とにかく楽しい。

〆はやはりお味噌汁でしょう。牡蠣から出た旨味に、野菜やきのこの旨味やとろみが加わり、その出汁と府中味噌と八丁味噌の赤白コラボ味噌を存分に吸い込んだ焼き豆腐も最高です。これを肴にまた飲んでしまいました。

いつもは手前味噌で作るお味噌汁ばかりだったのですが、久しぶりに購入したお味噌で楽しみました。これもまた良いものですね。

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「牡蠣の土手鍋、〆のお味噌汁」
出汁:昆布水、酒
具材:牡蠣、焼豆腐、ハクサイ、長ネギ、シュンギク、シイタケ、シメジ、エノキタケ
味噌:府中味噌、八丁味噌


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