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自己紹介note

レストランに立ってサーヴする姿がソムリエらしさであるという認識のもとでは、今の私にはソムリエらしさはあまり感じられないのかもしれない。
あの日から「ワインディレクター」と名乗ることにした。

「ソムリエ」は知ってるけど、「ワインディレクター」ってなに?って思う人が大半。なのでこれまでと現在の自分の活動、考えていることを、このnoteの場であらためて自己紹介という形でお伝えしたいと思います。



■これまでの経歴


私はかつて、サービスマンの王道を走り、いろいろなスタイルのレストランやバーで経験を積んできました。その一つ一つの経験、気づきが今に繋がっています。

20歳 在学中、レストランバーでアルバイトを始める
。バーテンダーの仕事に就く。

22歳 大学卒業後、そのままバーでアルバイトを続ける。


23歳 「神戸北野クラブ」でサービススタッフとして働き始める。ソムリエを目指す。

25歳 「セントジョージ芦屋」でマネージャー兼ソムリエ
。

27歳 「神戸西神オリエンタルホテル」でチーフソムリエ。ホテルの飲料責任者。 *第6回 ロワールワインソムリエコンクール 全国ファイナリストに選ばれる。

29歳 東京へ。「ザ・リッツ・カールトン東京」のオープンメンバーとして、メインダイニングでソムリエ。
*同年、第6回 キュヴェ・ルイーズ・ポメリー ソムリエコンテスト優勝。

31歳 ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」専任講師に就任。ソムリエ職を退く。

34歳 レストラン「L'AS」シェフソムリエ 兼 取締役就任。その後、移転と同時に「CORK」のシェフソムリエを兼務し、レコール・デュ・ヴァン講師としても毎週教壇に立つ。*2014年 第7回 全日本最優秀ソムリエコンクール クォーターファイナリスト(ベスト16)。

38歳 〜 ギリシャ渡航と同時にワインディレクターとして独立。レストランのワイン、日本酒をはじめとする飲料のセレクト、監修。スクール、セミナー講師、メディア出演等、幅広い活動を開始。国内外の様々なワイナリーや酒蔵を巡って見識を深める。*2019年 第1回 SAKE DIPLOMAコンクール 全国セミファイナリスト。

39歳 南西フランス、レバノン、ドイツへ研修の旅

40歳 再びギリシャへ研修の旅

41歳 アメリカ カリフォルニアへ研修の旅

42歳 チリ、英国へ研修の旅

44歳 ポルトガルへ研修の旅

45歳 映画「シグナチャー 〜日本を世界の銘醸地に〜」ソムリエ役として出演。

46歳 三度目となるギリシャへ。モルドバ共和国へ研修の旅

株式会社 WS 設立

初の著書「ワインを楽しむ」を上梓

現在に至る。

こう書くと順風満帆に見えますが、20年以上飲食業界に身を置きながら、必死に歯をくいしばる時も多々ありました。様々な経験をさせていただき、少しずつキャリアを積み重ね、一つ上のステージを常に目指して走り続けてきて今に至ります。

2016年。38歳の時にレストランに常駐するソムリエという立場を退いたことで、その生き方に変化が生まれ、また大きく人生が動き始めました。

次の項では、なぜレストランの現場を離れたのか。ここについてお話しさせていただきたいと思います。

■レストランのソムリエを退いた理由


大学時代、特に将来の目的もなく過ごしていた時、偶然に出会ったバーテンダーという仕事にのめり込み、無我夢中でカクテルの本を読みふけり、200種類のカクテルレシピを暗記した。その後今度は、その情熱をワインとサービスに全て注ぎ、結果、目標であったソムリエコンクールでの優勝につながり、それが大きな転機となりました。

それまではとにかく自分のためのインプットが前提であったワインの勉強が、今度は誰かに伝えるための勉強という意識に舵を切ったのです。

その先にあったのが講師という仕事。「アウトプット思考」で、自分だけのためではなく、誰かのために勉強をする。この時から勉強に対する意識が完全に切り替わったのです。このタイミングでここに気づけたことはとても大きい。

レストランから完全に離れる決意をして講師業に専念するも、何か少し違和感を感じる日々。「やはり自分はレストランが好きなんだな」と思っていたタイミングで、新たなレストランの立ち上げの話。導かれるままにソムリエとして再びダイニングに立っていました。

ソムリエと講師、二つの顔をもつ日々が続く中、自分が本当にやりたい形は何なのか、今までやってきた仕事の中で最もワクワクすることは何なのかを、今一度真剣に考え初めたのです。

料理に合わせてワインのセレクトをすること」「自分が得てきた経験、知識を伝えることシンプルに考えるとこの2つが、これまでの仕事経験の中で、自分が最も楽しいと思えること。であれば、ここに特化した生き方ができれば、より夢中になれて、多くの人を喜ばせることができるんじゃないだろうか。

「強みに集中すること」そういえばドラッカーの本にも書いてあったな....

強みだけに集中した方がより多くの人を、より大きく喜ばせることができ、自分自身も充実した毎日を過ごすことができる。そのためには「自分を掘り下げる」必要があった。

ソムリエという仕事は既に専門職なのだが、ここからさらに、ソムリエの仕事の中でも自分が得意とする部分に焦点を当て、とことんそこを極める道を進みたい。そもそも自分の得意なことって何なのか。自問自答が続く。

「テイスティングとセレクション、伝える仕事」に特化する。幸い、既にそこに該当する仕事依頼も入り始めていました。

日々のレストラン業務以外の仕事が増えて行く中で、最終的にどちらを選ぶのかを迫られた時、「自分にしかできないのはどっちなのか」そしてどちらの方がより大きく人を喜ばせることができるのか、これに対する答えを考え抜いた結果。

レストランのソムリエを辞めることを決意したのです。

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■大切にしている3つのこと


「Wine director」の肩書きを掲げることで、思考と習慣は変化し、新たな機会をいただけるようになりました。

独立当初は講師業の枠が一気に広がり、企業のセミナー講師の依頼も多くいただけるようになり、その後、次第にレストランの飲料セレクト、ペアリング監修等、ディレクターとしての仕事のご依頼も増えていき、現在はワインディレクター、講師業共にバランスよく関わらせていただいています。

ではここからは、私が仕事をする中で大切にしている3つのことについてお話ししていきたいと思います。

その3つとは食と飲の融合」「生産者と消費者をつなぐ」「サービス人の未来を広げる

「食と飲の融合」

ソムリエとしてレストランで働く中で一番意識していること。

「食べることと飲むこと」。人が生きていくこと、楽しむこと、交流することの全てがこの2つの重なるところに存在している。もちろん、それぞれとして楽しむことはできるが、組み合わせることでその喜びは倍増し、より人生を謳歌できる。

「飲食」と言う言葉のとおり、飲むと食べるは2つで1つ。「食」べるために「欠」くことができないのが「飲」むこと。この価値提案にこだわりたい。

自分が積み重ねてきた知識、経験を生かして人を喜ばせることができるのは、この分野であると確信しています。


「生産者と消費者をつなぐ」

ワインや日本酒等を提供する上で、絶対に忘れてはならないのは生産者の存在。醸造をする人はもちろん、その先には栽培をする人もいる。

ソムリエ、サービス人は、消費者に直接相対することができる扉となる。

世界中のプロダクトを提供する中で、生産者への最大限の敬意は、今出来得る最高の状態でその飲み物を供すること。そうすることで、生産者、消費者双方を喜ばせることができる。

これは私が仕事をする上で、大きなモチベーションになっています。ここを実現したいからこそ、日々一生懸命に勉強をするし、生産者と直接交流するためのアクションも行う。

そして決して忘れてはならないのが、それを紹介し、この場所に届けてくれるインポーター様や配送の方々の存在。


「サービス人の未来を広げる」

長年レストランサービスの仕事を続けてきた中で思うことは、ソムリエ・サービスマンは、もっと自由に働き、生きていいんじゃないだろうかということ。

この仕事は、接客が好きだからという理由のみで続けていくのはなかなか難しい。ワイン、カクテル、ウイスキー、日本酒、コーヒー、紅茶、ハーブティー....接客に必要な知識は山ほどある。

さらには、心理学やマーケティング力、マネージメント力、話す力、聞く力、語学力等、これらの知識と能力、経験値を伸ばすことで、サービスマンとしての能力と価値は上がり、活躍できる幅は広がっていく。

「サービス人は知識労働者である」私は常々そう考えてきました。個の得意分野を見出し、とことん極めていくことが重要だと。

まずは自分の強みをしっかりと認識し、そこを伸ばし続けていく。自分がワクワクすることを突き詰めて、それを発信する。そうすることで、より個としての存在が認められ、得意なことを自由に発信できる生き方ができるようになり、活躍できる世界は広がる。

自由に働ける人をもっと増やしていきたい。

以上が、私が大切にしていることです。


■本・SNS・旅


ではここからはもう少し身近な今にスポットを当ててお話させていただき、今回の自己紹介を終えたいと思います。

自分を変えた一冊

読書が大好きで、20代の頃からたくさんの本を読んできました。ワインの本ばかり読んでいるイメージを持たれやすいですが、それ以外のさまざまなジャンルの本を日々読んでいて、その数は年間平均100〜120冊程。昔からずっと、外に出かける時は、その日に読みたい本を必ずカバンに2冊以上入れて、スキマ時間があればすぐに取り出して読めるようにしています。

数々の本の中でも、転機になった本の1つがこの「プロフェッショナルの原点」

「強みを生かす」「貢献に集中する」ことの大切さに気づかせてくれました。

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何度も繰り返し読み返した「プロフェッショナルの原点」P.F.ドラッカー


SNS

ソムリエでここまで真剣に向き合っている人は少ないのではないでしょうか。だからこそ頑張る。私はそういうタイプです。

結果的に仕事にもつながっていますが、基本的には、「楽しいから」こそ発信を続けることができる。何よりフォロワーさんとの交流を楽しんでいます。

2020年の緊急事態宣言時から本格的にTwitter(現 X)の発信を毎日、noteの執筆も毎週続け、現在ではnote定期購読マガジンの購読者数は70名様、TwitterとInstagramの総フォロワー数も41,000名様(2023年8月現在)を越えました。

「知識や情報は発信し、きちんと伝えることでその価値を最大化できる」そう考えています。

仕事で訪れる機会が多いのですが、国内外へ旅することが好きで、ギリシャ、レバノン、フランス、イタリア、ドイツ、オーストラリア、アメリカ、英国、チリ、ポルトガル、モルドバ共和国、そして我が国、日本の北から南まで、これまで12ヵ国を旅してきました。

フランスやギリシャは特に何度も訪問し、フランスでは短期留学経験やホームステイ、レストランでの研修の経験もあります。

ワインを学んでいて本当によかったと思えるのは、ワインを勉強していなければ絶対に訪れることのなかった場所へ旅をすることができ、絶対に会うことができなかった人達に出会えたことです。

旅をすることはソムリエという仕事を続けていく上でも、とても大切なこと。むしろ旅することなくして、本当の意味でこの世界を識ることは不可能とさえ思います。

ワインの知識や経験値を飛躍的に向上させてくれるのはもちろん、見える世界や考え方を大きく広げてくるのです。

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    ギリシャ サントリーニ島の風景
*photo by Koichi Tanabe


■最後に

私が駆け出し時代の頃に思い描いた40代と今の自分は大きく違う。

想像していたよりもはるかに自由で、人生は経験を重ねていくほどにどんどん楽しくなっていく。ここまでの道で様々な転機があったように、今後もきっとそれは続いていくのだと思います。

最後に言いたいことは、人生は一度しかない」ということそんなの当たり前だろうと思われるかもしれませんが、一度しかない人生だとわかっていながら、本当はどう生きたいのかに対して、まだ多くの人が嘘をついているような気がしています。

あなたはどうでしょうか。

スティーブ・ジョブズ氏の有名な言葉、もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やろうとしていることは、本当にやりたいことだろうか?これに対して、私はNoをYesに変えることができました。

これからも人生を謳歌し、自分の持っている情報、技術、考え方を惜しみなく周りの方々にシェアしていきたいと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

人の記憶に残るソムリエ、講師、ワインディレクターになれるように、これからも精進してまいります。皆様、これからもよろしくお願い致します。

ワインディレクター 田邉 公一


カリフォルニア ドメーヌ・カーネロスにて



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