個人と、組織のレジリエンス(危機対応能力)
先日、オンラインで、福井県の商工会議所さまに「コロナ時代の中小企業経営」について卓話をしてまいりました。卓話というのは商工会、青年会議所、ロータリークラブなどで使われる固有の表現だそうですね。Table Talkを意味する言葉だそうです。大演説をぶつわけではなく、机を囲んでお話しをしますよ、ということ。
コロナ時代に経営はどうあるべきか、ということで、DX、レジリエンス、そしてイノベーションの3テーマで話をしてまいりました。
で、こちらでは、普段耳にしないであろう「レジリエンス」を採り上げ、掘り下げてみたいと思います。
レジリエンス(resilience)というのは、「立ち直る力」を意味する言葉です。
もともと心理学用語で、辛い状況、困難な状況から、立ち直ることができる心の力として定義されました。今日、この個人のレジリエンス(心理的な立ち直る力)は、キャリアの中で個人が蓄積していく「心理資本」の4つのコアHEROのうちの一つと位置付けられ、職場でのパフォーマンスに大きく影響していることが分かっています。
ちなみに心理資本の4つのコアとは
Hope 将来について希望的観測を持てることと
Efficacy 自分ならできる、という健全な自信
Resilience 困難な状況から立ち直れること
Optimism 現状を楽観視できること
です。個人の具体的技能:人的資本、組織内での関わり合い:関係資本と並ぶ、第3の資本として注目されているのが心理資本です。
このレジリエンスの概念が、このコロナの時代にあって、組織に応用されるようになっています。組織レジリエンス―すなわち、組織としての危機への対応力。
誰が言い出したわけでもなく、コロナ禍のなかで、この組織レジリエンスという考え方、世界的に注目されています。この難局では、稼ぐ力よりも、危機に柔軟に対応できるかどうかが問われている。
では、組織レジリエンスの構成要素とは何か。
状況変化のなかで、組織が安定的に機能するためには…最大限のバックアップをとっておくことが第一ですね。ディカップリング、という組織論の用語がここで用いられます。何か問題が発生した時に、問題部分を切り離して、他の部分、他のやり方で事業を継続可能にするということ。BCPなどもその一つのアプローチです。こちらは、マネジメントレベルの対策だと言えます。
第2には、それでも起こってしまう想定外に対応するために、現場レベルでの意思決定の能力・権限を高め、柔軟な対応を可能とすることです。結局、現場の実力があり、状況をよく理解しており、すぐさま動けるならば、対応が取れるようになるということ。同じものをみて、違うように感じられる人、違うように考えられる人も、変化のために大切であることが解っています(すなわち人材の多様性が大切だということです)。
このような意味で、非常時に発揮される組織のレジリエンス力とは、結局のところ、平時における【マネジメントの備え】と、【現場レベルの課題解決力】に帰することになります。
だとすれば、組織レジリエンス力構築は、平時の競争力構築と、決して相反するものではないわけです。レジリエンス力を通じても、マネジメント&現場の課題解決の本質的な力が磨かれ、組織の競争能力は高められる。
かくして、現代ではこの組織レジリエンスが大切だと考えられるようになっているのです。
「レジリエンス」概念は、私の著作『感染症時代の経営学』でも深掘りしましたし、以下の動画でもその要点解説をしています。これらも、参考にしていただけたら幸いです!
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