「誰かのために」が人を消耗させるとき。経営学最新研究紹介!シン&島貫(2021)
先日発表された『組織科学』掲載のシン ハヨン・島貫 智行論文が興味深い内容でしたので紹介させてください!
「誰かのために」が、私達を苦しめてしまうとき。
シン ハヨン・島貫智行(2021)向社会的モチベーションの統制的側面―自己決定理論に基づく再検討―.組織科学,55,2:61-73.
仕事において、他人のために働こうとする動機を向社会的モチベーション(Prosocial Motivation:PM)といい、これは従来働き手のパフォーマンスや働く姿勢に高影響を与えるとされてきました。
実はこれは私自身の研究とも関連していて、私の研究では「誰かのために」が、クラウドファンディングでの人の投資行動を説明できることを明らかにしようとしています(まだ審査中ですが笑)。
しかし、本論文では、向社会的モチベーション:PMが、人を苦しめる可能性もあることを指摘している。
筆者たちは、PMにも2種類があるという。内発的な「誰かの役に立ちたい」という性質のものと、「周りの人の目が気になる、他人に嫌われたくない」という理由からくるもの(筆者たちはこれを”統制的”向社会的モチベ―ションと呼んでいる)があるだろう、と仮説を立てるのだ。
まず筆者たちはこの2種類があることをデータから証明したうえで、
●内発的PMは働き手のバイタリティを改善し、個人の消耗を下げる
●統制的PMは、働き手のバイタリティ改善に貢献せず、個人の消耗を促進してしまう
以上のことを明らかにしました。
「社会のために」「誰かのために」ということが大切になっている現代に、それもまた人を苦しめる原因にもなるのだ、ということを伝えてくれている、たいへん重要な研究だと思います。
人のために働きなさいという「倫理観」もまた、私達に「こうあるべき」を強いるものになり、働き手に苦しみを生んでしまう可能性がある。
難しい問題だと思います。
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