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キリマンジャロを描いた話(7)

image view: Kilimanjaro National Park_ Tanzania, United Republic of_ キリマンジャロ国立公園_ タンザニア連合共和国 2013年9月の日記より

●2013年9月11日 早朝

あたりがぼんやり明るくなってきて、次第に視界が開けていく。

山頂のクレーターの淵をふらふらめそめそ泣きながら歩いていた。なんで泣いているかは自分でもあまりわからない。なぜかぽろぽろと涙が出て来るのだ。

感動、希望、達成、期待、あるいは複雑な後悔だったかもしれない。

なだらかな頂上のクレーターをちょっとずつ歩く。もうふらふらで立っているのもやっとな感じだった。松田にとっては間違いなく人生で一番しんどい体験だった。

午前6時30分。

いよいよ太陽が昇ってきた。

キリマンジャロ山頂のクレーターの淵で出会うご来光。

世界中のいろんな場所で太陽の様々な表情を見て来た。どの場所から見る太陽も美しかったけど、キリマンジャロ山頂付近で見る太陽は特別キラキラしているようで、そして今にも手が届きそうな気がした。

最高地点のウフルピークまでもう少し。

持ってきた水も凍ってしまった。喉もカラカラだ。

3歩あるいて3呼吸。呼吸は依然として苦しい。けれど、明るくなったことでどんどん元気が出てくる。ゆっくりとゆっくりと最後の高度200mを昇る。

そして、ウフルピークの緑のサインが見えた。

5,895mに到達したのだ。

フバルが「おめでとう」と言ってハグをしてくれた。強風に負けて、看板の前で立つことができなかったw

松田はヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソンの言葉を思い出した。

「どんなことでもできるやん笑泣!」


そしてもう一つの目的。山頂でスケッチをするのが松田の夢だった。けれど山頂には何もなくて、代わりに美しい太陽があった。松田はその太陽を描くことに決めた。

疲労と寒さのため5分間のスケッチが限界だった。