招待 バングラデシュ の思い出
イード・アル=アドハーの撮影が終わってリキシャワラー兼ガイドのモハメドにウチで一緒に夕食でもどうか、と招かれたがバングラデシュ人のお宅を訪問する事はそうそうないのでお言葉に甘えることにした。
夜8時に迎えに来たモハメドとふたりでリキシャに乗り込む。”リキシャでどれぐらいかかるの?” ”今なら20分てとこだな。” 昼間はリキシャ運転中のモハメドと前後の位置関係となるため会話しづらかったが横並びなので話が聞き取りやすい。
ダッカのほぼ中心部は夜でもかなり交通量が多くどんどん渋滞が激しくなってきておまけに雨まで降り出した。モハメドはクシャクシャの薄っぺらいビニールシートを広げ、ふたりが濡れないように足から腰までを覆う。リキシャには幌こそあるがかなりオープンな構造なので雨が降るとキツい。
とうとう身動きが取れないぐらいに進まなくなった。”歩いたほうが早いな、5分ぐらいだよ。”リキシャを降り街灯が無い道をしばらく付いていくと此処だ、と引き戸を開いたモハメドに案内された。
暗くて家の外側の様子がよく分からなかったが日本でいう長屋のような集合住宅であった。通された場所は椅子やソファが無いリビング兼ダイニング兼ベッドルームというべき部屋でベッドそのものはキングサイズで大きいが降りるとそこはすなわち土間である。
奥さんに挨拶をするとモハメドにベッドに上がれと言われ靴を脱いで上がったがオッさん二人がベッドで横になり、すぐ隣で奥さんが食事の支度をしている非常に落ち着かない状況だった。モハメドは気にすること無くテレビをじっと見ている。
32インチぐらいのテレビは壁にかかっておりインドの歌番組をやっている。画面の左上でタイマーがカウントダウンされていくがどうやら番組終了までを知らせるものらしい。モハメドに理由を聞いたが彼もはっきりとした理由を知らない様子だった。
食事の支度が整ったので牛肉のカレーを頂く。僕にはスプーンとフォークを用意してくれたがモハメドは指を使ってサラサラのカレーと米と牛肉を適度な塊にして口に運ぶ。カレーを一滴も皿に残さず下手にスプーンを使うよりも綺麗に完食したがその所作には美しささえ感じた。我々が箸を使って茶碗の米粒を一つ残らず食すのを欧米人が見たら同じ様に思うのだろうか。
で、肝心のカレーの味はどうだ?だが実はあまり覚えていない。モハメドの家には天井にまあまあの大きさのシーリングファンがあり、その軸が結構グラグラでいつファンごと落ちてくるのか不安でじっくり味わう余裕などなかったのだ。当然ファンガードなどは無い。
夜でもかなりの人出がある
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