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旅34-キドニアの港に

アテネのピレウス港を出港したフェリーは早朝にクレタ島に着く。まだ暗い。降りる人もいる。だが僕には行く当てがない。冬のクレタ島は安い宿があるのだろうか。降りてみないとわからない。バスに乗って10km先のハニアの町へ。インフォメーションへ。予算に合う宿をみつけた。夏期は€40だが今は€25になってる。そして、ギリシアに来てから初めてアイネイアスの話ができる人に会えた。彼女によると、やはりこのハニア周辺を昔キドニアと言っていたらしい。

アイネイアスはキドニアを訪れた。中心地イラクリオンは避けた。戦争に負けた身。ギリシアの城下にはなかなか入りにくい。そして100kmの道を上り、イディ山麓のゼウス神殿へ。そこでゼウスの神託を聞いた。
『理は西方にある。海のほとり。大河の注ぐところ。食卓、食するとき』
後半部分は謎だが、トロイア再建の地はやはり西にある。それも海のほとりで大河が流れるところ。たくさんあるが・・・。信託が示すのはエスペリアではないか? そう思い始めるアイネイアス。きっと神殿から西の海の向こうを眺めたのだろう。

ハニアは彼が眺めたであろう方角にある港町。今では保養地だ。

迷路のような旧市街。古い歴史。アイネイアスの時代の遺跡もある。クレタ島はギリシア文明発祥の地である。はるか東、現在のレバノン付近、美少女エウロパに美牛が微笑む。今まで積んだ花を持ったまま、彼女はその牛の背中に抱き、キス。牛は海へ。かなりのスピードで海を進む。牛はゼウスが化けた姿だった。クレタ島へ。そこでゼウスとエウロパが交わり、クレタ島の始祖が誕生した。クレタから始まった文明、アイネイアスの頃はミケーネが中心、そしてアテネへ。ヨーロッパへ。だからなのか、エウロパ(EUROPA)はヨーロッパの語源である。

もちろんアイネイアスには関係ないが、ギリシア神話は面白い。おそらくはこんな感じではないか。現実は小説より奇なり。実際の事件に神を感じることがなくはない。ヘレネの略奪の裏には神の加護が、そしてトロイアの滅亡と再建には神の目論見があった。アキレウスの強さは神がかり。ただし踵を撃たれ死ぬ運命。それにも神の意図が意思がパワーが介在しているのでは。。。アイネイアスもギリシアで、神話に文化に耳を傾けたことだろう。

大きなクレタ島、1泊では足りない。が、彼も道を急いだ。アイネイアスと同じく、僕も北に向かうことにする。

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