河野宏子(こうのひろこ)

河野宏子(こうのひろこ)

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  • 河野宏子 過去の作品

    詩集を作るにあたって、過去の作品をこちらにまとめていきます。 古いものだと、もう15年ぐらい前の作品もあり少し恥ずかしいですが 今は(照れ臭くて)書けないものもあります。若かったんだなぁ。

最近の記事

日記|明日のパン

4日5日と東京に行ってきた。 一番の目的は好きなバンドの日比谷野音ライブ。 偶然好きな詩人たちのライブも重なって、 詩人知人にたくさん会えた。 東京在住の人と昼飲みをして、 あっという間に2時間ぐらい過ぎた。 その時の会話のハイライト。 明日のパン、と関西の人間は当たり前に言う。 買い物の最中だとか、パン屋の前を通りすがりに 翌朝食べるためのパンを買うことを 「明日のパン買う」と言う。 当たり前すぎて、考えたことがなかった。 生まれ育った家の朝食はずっとパン派だった。

    • 日記|あたらしい季節

      お酒を飲んで夜風にあたると 胸の中が緑色で満ちる。 あまりちゃんとお花見をしないまま春が過ぎてしまって、 季節が過ぎていくのを寂しいと初めて思った。 背後で重たい鍵がかかるみたいに 何かが確実に終わって、戻れなくなる。 今までもずっとそうだったのに、 わたしは初めてそれに気づいた。 (まだ話していたいので) 眠くないです、と言い張っても 手を握られたら全部ばれてしまうように 生きている身体も心も正直すぎて 時にめんどくさく この魂の乗り物は年々メンテも複雑になって 途方に

      • 詩|蜜

        愛憎っていうけど  憎しみは愛の一形態ね それはそうと 今日のお医者さまは わざと重々しい表情をつくって 「ここが折れてしまっています」と云ったの 見るとあたしの骨のレントゲンは 尻尾のあたりが欠けていて だからあたしも驚いた、ふりをした これは悪魔だったころの名残り 口角だけをあげて笑う この詩のタイトル、 罰にしようかと思ってたけどやっぱ変えるわ あなたの周りにいる女の子たちって みつばちみたいでかわいいわね 花の香りを嗅ぎつけて 特殊なダンスで伝え合う 顔も知ら

        • 詩|メロディ

          赤ん坊を育て始めて ほんの少しだけ 歌がうまくなった 胸に抱いて 温めて メロディで眠りのくにへ誘う 毎晩繰り返したあの頃 メロディは息子の耳に流れ込み まだことばを持たない世界に やさしいいろをつけた わたしたちはけものなんだね あんなに遠くは届かないけど オオカミよりも深く あれほどきらびやかじゃないけど カナリアよりも繊細に ことばよりも先に メロディで 愛をつたえる

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        • 河野宏子 過去の作品
          7本

        記事

          詩|穴

          あれぐらいの落とし穴なんて 這ってでも出られたでしょうに 全くおおげさなのね 絆創膏貼ってあげるから 早く腹ごしらえなさいな 弟がいたら、こんな感じかしらね あたしはどっちかというと いじわるする悪い姉なんだけど かわいいんだからしょうがないわね もうじきお祭りでしょ ちゃんと遅れず支度してね 忘れものしないように 上着についた砂を払って 後ろ姿を見送る

          日記|外に出ない

          水曜日まで外に出る用事がないので、好き放題している。家族を送り出したあと、パジャマのまま、家事も最低限にインスタント焼きそばの大盛りを食べエナジードリンクに黒霧島をたぷたぷと注いでドーピングをしている。糖分とカフェインとアルコール。普段はかなりまめに料理をしバランスの取れた食事をしているので、こんな機会でもなかったら自制心が働いてしまってまず摂らない食事。眠くなったらその場で眠り布団の中で好きなだけ本を読む。この数ヶ月ずっとこの時間を心待ちにしていた。 なんのためにこんなに

          日記|疲れるよねそりゃあね

          Japanese UK Poetry Exchange: Kyoto Camarade カオスになると思ってはいたけど 予想の遥か斜め上をいく時間空間でした 最後、偶然お寺の前を通りかかった子どもたちが とってもかわいい反応をしたハプニングが忘れられない。 これでしばらく詩人として人前に出る予定はなし。 時間もできるので創作に取り掛かろうかな (来年もカミコベオーディションあったら出たいし) 昨年末ぐらいから4ヶ月以上、ずっとずっと忙しくて 自分でも無茶だ!と思いつつなん

          日記|疲れるよねそりゃあね

          詩|潮

          人もまばらな浜 さみしさでできた おおきな砂の山に トンネルを掘る たったひとりで たったひとりだけど 見えない手と つながりそうな気がして 陽が高い 汗が垂れて 髪が口に入る  顎にも砂つぶがつく スカートは腿まで捲って トンネルを掘り進む ふと 指先が 柔らかいものに触った やっぱり誰かいたのね 掴もうとしたそれはするりと逃げた わたしはさらに掘り進む 声も聴こえる それはわたしへの歌? それはわたしへのことば? 夢中になって 腕まくりじゃ足りなくて タンクトップ一

          お知らせ|あした

          COMING KOBE2024オーディション敗退しました。 落ち込んでいても仕方がない。 詩の界隈の外にもっと出ていくために 足りてないものがよくわかりました。 パンクですね!って言ってもらったのはうれしかったかも 懲りるわけがないので、 こういう機会はこれからも狙います そして息つく暇もなく明日。 日英詩の交流イベントで、 昨年に続いて川島むーさんとコラボです。 言語も音も舞踏もウゴウゴ蠢きだす カオスなひとときとなることでしょう。 春の夜の京都だもん ”Japane

          詩|爪

          ふつうの幸せなら もう一通り持ってるの 分けられるものでもないし 誰にもあげないですけど 帰り道 春の雨がわたしを湿らせるので わざとらしく眉根を寄せた あくまで嗜好のひとつとして 不安定が好き なんですよ だから このヒールも右だけわざと削って 昨日買ったいちごはあたり ナイフで切ったら芯まで赤いの タルトから溢れるぐらいに カスタードクリームを盛って この可愛い断面を晒す お腹いっぱいだけど もう少し食べたい デセールってそういうものでしょ 冷蔵庫でほどよく凍えたも

          日記|卯月

          4月9日のオーディションのことを考えると緊張でえづきそうになるので、なるべく考えないようにしている。告知とお誘いは既にできたのでもうあとは準備をしていくだけ。 それだけ。 映画「8mile」では、ラップバトルの直前にエミネムがトイレに籠って吐いていた。わたしも初めてスポークンワーズスラムに出た時には同じ状況になって、肩凝りと食い縛りからくる頭痛で気が遠くなりそうだった。手足も痺れて寒かった。たまたま近くにいたchoriに「バファリン持ってへん?」と聞いたらミントのガムをく

          4月9日(火)、神戸で公開オーディションです

          わたし自身驚きすぎてまだ状況が飲み込めていませんが 神戸の音楽フェス、COMING KOBE2024の出演をかけて オーディションに臨みます! ご予約は ツイッタのDM、もしくは メール>kohnohiroko79@gmail.com まで 人数とお名前をご記入の上お願いします♪ お客様投票があります! それから、動員数も審査対象!とのことなので 応援にお越しいただけると、とてもとてもうれしいです。 ______________________ COMING KOBE2

          4月9日(火)、神戸で公開オーディションです

          日記|きっと地獄は個室だな

          とよく思う。 誰かと一緒だったら苦痛って薄まるでしょう。 今書こうとしてる原稿が考えてるだけで吐きそうになる内容で、 でもこれ書かないと前に進めないし、自分のハラの中を見つめて うぇぇぇ、となっている。 書いたところでわたし自身も、誰も救われないかもしれないけど。 仕方ないのだよ、 避けられないことってあるのだよ人生。

          日記|きっと地獄は個室だな

          日記|クリシュナさん

          昨夜はポエトリーナイトフライト。 年間チャンピオンを決める、 グランドチャンピオントーナメントでした。 なんと2023年度グランドチャンピオンの冠を戴きました! ありがとうございます。 詩を書き始めた頃から決めているのは、 ポップであること。 例えば、物心ついた頃から聴いてきた歌謡曲の、 聴く人を身構えさせずに懐に入っていく あの感じを目指してきました。 文学学校で現代詩を学んだりもしたけど 結局のところ現代詩を書く人にはなれなくて、 いまのわたしになるよりなかった。 終

          日記|クリシュナさん

          詩|何にせよ愛にいきつく(改)

          つぶれた祠の裏で 待ち合わせたつもりが このおかしな磁場のせいで やっぱりうまくいかない 生きていればよくあることね まして あなたのような人とであればなおさら 線路沿いの道を歩いていたら 今年初めてのあげはを見つけた 三月の日曜日 半袖でもいいぐらいの陽気 この街に降り注ぐ しあわせそのもののひかり 誰かが繰り返し繰り返し弾くピアノの音 わたしは空っぽなんじゃなくて、 空白を抱えている 空っぽを、抱えることを、選んでいる これはこれで悪くない。 手持ち無沙汰で立ち寄

          詩|何にせよ愛にいきつく(改)

          詩|ペンギン

          彼岸だというのに大阪でも雪が降った。 厚着で首をすくめペンギンのようによちよち歩くと、 たくさんの人がわたしを追い越していく。 気ばかりが急く。 切羽詰まってあっぷあっぷしてしまうことがよくある 大人になったらもっと何事にも余裕が持てると思っていたのに、 手に入らないものをガラス越しに見つめても苦しくならないよう、 初めから終わりまで ちゃんと適切な距離を持って眺められると思っていたのに、 いくつになっても鈍臭いのは治らないらしい。 若い頃と違うのは、 ここが足のつく浅瀬