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大谷地にて

学生時代、アルバイト先の友達と一緒に北へ向かった。

2人でアルバイトを一か月間休んで。それも3月に。

何をするかも、何も決めてなく、ただ、北へ向かおう、一か月いよう。ということだけ決まっていた。ちょうどJRから学生向けの格安の切符が出たということだったので、それを使って行こうということになった。

行く前日に大きな駅のみどりの窓口に行き、切符の購入と寝台車の指定の予約をして、次の日、同じ場所で落ちあった。

そして19時頃、北の玄関口を出発した。

友達は自分の新しい可能性を、私はただ、何をしていいのか分からない日々に答えが出せるかと、それぞれの思いを語りながら列車は北へ向かう。

雀宮

この駅の名前を忘れることはないだろう。

ここで突然、列車が止まった。

「先頭の機関車が故障しました。今から東京の車庫から代わりの機関車をもってきますので、それまでしばらくお待ちください」

へ?

幸先が悪い。
機関車が来て出発するまでに3時間、雀宮駅で止まっていた。
友達との話も話題が尽き、それぞれ動き始めた列車のベッドで寝始めた。

朝、長いトンネルを抜けた先の世界は終点まで遠く、緑の景色や白の景色を流し見しながら、ぼーっと終着駅まで2人で過ごす。

午前中につくはずだった終着駅、着いたのは夕方だった。
午後一番で色々動こうと考えていたのだが、泊まる宿も決めてない。お金も数日分しか持ってきていない2人、これからどうしようか。

途方に暮れた午後3時。



つづく。