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『演技と身体』

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東西の哲学、解剖学、脳神経学、古典芸能(能)の身体技法や芸論を参照しながら独自の演技論を展開しています。実践の場としてのワークショップも並行して実施していきますので、そちらも是非… もっと読む
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2022年3月の記事一覧

『演技と身体』Vol.13 イメージ思考②

『演技と身体』Vol.13 イメージ思考②

イメージ思考②いないものとの関係性

「お化けを見た」と怖がっている人がいたら、あなたはその人になんと言葉を掛けるだろうか。
「お化けなんていないよ」と言って慰めるだろうか。あるいは「見間違いでしょ」と言って受け流すだろうか。
お化けが実際にいるかいないかというのはわからないが、ここでは科学的な立場をとって、お化けなんていないということにしておく。
しかし注目すべきことは、お化けの存在自体がたとえ

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『演技と身体』Vol.12 イメージ思考①

『演技と身体』Vol.12 イメージ思考①

イメージ思考①「ゴミ」という言葉が全体からゴミを取り出す

「もっと速く」「もっとゆっくりと」「もっと間を空けて」
こうした演出上のコミュニケーションはしばし見受けられるし、僕も使うことがある。こうした明晰な言語はわかりやすく、誤解も生じない。しかし、僕の経験上だとこうした伝え方によって自分の欲しいタイミングが得られたことはない。
なぜなのか考えてみると、それが実は単に速さや間だけの問題ではないの

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『演技と身体』Vol.11 指向性のある爆発

『演技と身体』Vol.11 指向性のある爆発

指向性のある爆発生命は爆発だ

芸術は爆発だ。
芸術は爆発で、爆発は無限に広がる運動で、宇宙だ。
しかし、芸術だけじゃない。
生命も爆発だ。無限に広がる運動で宇宙なのだ。
海の生物の形を思い浮かべてみよう。特に無脊椎動物を。
ウニ、タコ、イソギンチャク、ヒトデ。
どう見ても爆発している。
海の生物を選んだのは、海の中は浮力によって重力の影響が少なくなるからである。しかし、地上に上がって広葉樹や花の

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『演技と身体』Vol.10 身体の脱植民地化

『演技と身体』Vol.10 身体の脱植民地化

身体の脱植民地化「気をつけ!」「休め!」「前へならえ!」

今回は身体の脱植民地化というテーマで書いていこうと思うが、脱植民地化するということは身体が植民地状態にあるということが前提となる。一体誰の植民地だというのだろう。
それは「ことば」である。
哲学者のミシェル・セールは著書『五感 混合体の哲学』の中で、「ことば」こそが人間の感覚を麻痺させてきたのだと述べている。しかし、「ことば」が身体を植民

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