「レディ・プレイヤー1」の愛は本物か
講談社「クーリエ・ジャポン」さんで掲載させていただいている、コラムの最新話がアップされました。せっかくなので、こちらでもご案内。
「mofi|ハリウッドを読み解く週刊マガジン」を共同で運営している三谷と、昨年から対談形式で進めてきた連載。「現場目線のハリウッド」は、今回で9回目です。
この連載の個人的なポイントは、オフィシャルな場での踏み込んだ評論にも臆病にならないこと。「ハリウッドの底辺で現場経験を積んでいる若手が、話題の映画について話すこと」という体で対話しているからです。
次世代のハリウッド・プロデューサーを志す若者たちは、常日頃から「自身のクリエイティブを確立する」ことに必死。ビジネス面を見据え、業界の潮流をとらえ、自分の好みを客観的に解説し、そしてクリエイターたちとの対話を恐れないメンタルとスキルを鍛えている。
だから給湯室での井戸端会議で話題作について話すことひとつとっても、会話はディベートと化していく。求められるのは、理論と、経験と、感性をもとにした「ショットやシーン単位」あるいは「プロットやアーク単位」での掘り下げだし、企画の成立過程や社会性やキャラクター単位の役割分析に触れられる用意も必要です。
「好き」や「嫌い」にも、西洋的なストーリーテリングの論理にもとづいて議論する。もちろん正解はないので、引き際も心得る。こうした訓練が、上層部へのピッチ・ミーティングなどでも活きてくるからです。
この連載は、ぼくも三谷も経験している、そんな会話を展開する場です。
『RP1』の愛とスピルバーグ
『レディ・プレイヤー1』については、「答え合わせ」のレビューでも似た主旨の話を書きました。
もう少し踏み込むと、『レディ・プレイヤー1』はスピルバーグの近作『タンタンの冒険』、そして『BFG ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』に共通するクセが色濃く出てます。ショットに絶えず動きを加えたがる実写映画界の巨匠が、アニメーションとCGI表現を「uncanny valley(不気味の谷)」へと無意識に導いている。新しいオモチャを使い倒すようにして、場合によっては必要以上に手を加えているのがよくわかります。
そんな中、カメオ出演を実現させたIPたちへの愛が本物かというと...。
少なくとも、スピルバーグが『HALO』や『オーバーウォッチ』や『スト2』で遊んだ世代とは思えないわけで...。ましてやガンダムなんて、ねぇ。人には守備範囲があって然るべきですから、多くを求めるのも野暮というものでしょう。
そういう映画もあっていいんだ、ということです。
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