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研究日記2024年3月の報告書

今月は異様にのんびりしていた。ほとんど大人の夏休みだった。モラトリアム。もちろん仕事もしていたけれど、それよりも膨大に本を読み、展覧会を訪れ、いくつかの文章を書いた。たくさん読み、なにかを書いてみるほどに、自分が何を考えようとしているのかよく分からなくなった。たくさん考えたような気もするし、何も考えていなかったような気もする。時間は溶けた気もするし、長かったような気もする。一人になると、時間感覚はバグって長短のコントラストが異様にくっきりとして記憶が朧げになる。

そういう1か月だった。


1. 東京都現代美術館のフィナーレ&撤収

3月3日に、東京都現代美術館での展示が終了した。2月中旬に展示デモを差し替え、それから怒涛のようにご案内した。2月28日から3月3日は6連勤して、1日3〜4回くらいギャラリーツアー(ご案内)をした。3月2日と3月3日はオフィシャルなギャラリーツアーもした。どちらも20人から30人の人が参加してくださっていてありがたかった。

普段とてもお世話になっている人たちに色々とみてもらえてとても良かったと思う。

やまけんさんご来訪。
漆芸作家の佐野くんご来訪。
パリコレデザイナーの中里さん、医師の廣瀬さん、学びデザインの荒木さん。
渡邉さんご来訪。黒い。
渡邉さんがとってくださった写真。
渡邉さんがとってくださった写真。
関根君とその後友人ご来訪。普段ガーナにいる彼にみてもらえてよかった。
鳴海先生、ドミニクさんにもみてもらえてよかった。
会期終了後。ほかにもたくさん来てくださった方々、お世話になった方々にお礼申し上げたい。

撤収はほとんど3月4日の午前から午後の頭だけで、一瞬で終わった。本当にあっというまだった。最後にはキュレーターさんと会場で一本締めもした。市原えつこさんが美術館での一本締めは初めてとおっしゃっていたので珍しいことらしかった。でも充実していた。

2. 久々のPodcast更新

3月31日に、およそ3か月ぶりくらいにPodcastを更新した。主に日本文化とリアリティについて。ここ1か月考えてきたことをちょっとずつゆったりめに話した。はじめて全編に字幕をつけるということをやってみた。何か効果はあるのか。

3. とにかく本を読んだ

この1か月はとにかく本をたくさん読んだ。素晴らしいものばかりだった。時間ができると神保町を徘徊し、うっかりと大量に本を買って、家に帰るとうっかりとAmazonで本を買って、街を歩いていると本屋に入ってしまいうっかりと本を買って、展覧会に行くとうっかり図録を買っているのだった。出費は十万円〜二十万円くらいのオーダーになった。本当に困る。

コンペに取り組むでもなく、ほとんど無目的に本を読み続けていると、次第に自分の居場所がよく分からなくなってくる。さっきまで1960年代の空気を活字から考えていたのに、今では2010年代のことを考えているというような、テーマと時代の不連続の不断な連続に、どうも混乱させられる。たくさんの答えがあった気もするし、未だ何の答えも手に入れてもない気もする。本は所詮本なのだ、とも思う。

膨大な読書と思考は次第にOff-Realの具体論としてぼんやりとした輪郭を持ち始めた。それでいいのかどうかは全く分からない。ただの抽象的な概念論にも思える。それでも僕は楽しかった。ただ分からなくなって、困っていたうーんと唸っていながら、のんびりと貴重な時間を楽しむことができた。

神保町なんて何回徘徊したんだ。

4. アルス・エレクトロニカへの応募

人生で初めてアルスに応募した。アルス・エレクトロニカは毎年リンツで開催される世界的なメディアアートの芸術祭。作品は、畑田くんと後輩の中条くんと協働した。アルスは「いつもと同じように」期限が延長され、3月の初めに作業をしてワークを仕上げることができた。共作なので詳細は避けるが、あてにしていた予算が突如消えるなどイレギュラーな状況の中でなんとかまとまって良かった。

5. たくさんの展覧会

今月はかなりたくさんの展覧会へいった。どれもわりかし楽しかったし、自分が一度美術館での展示を経験した分、裏側を想像しながら見ることもできて充実していた。

もじ イメージ Graphic 展@21_21 DESIGN SIGHT(2回いった)

色んな文字に関するデザインが見られて楽しかったが、特に観世寿夫先生の昔の公演のポスターが見られて嬉しかった。

中央のが観世先生の公演のポスター。

ホンマタカシのニュードキュメンタリーのデザインについて、これは服部一成さんによる、仕事では通常使用しないと考えられてきたデフォルトフォントをそのまま取り扱った価値転換的作品ということを知って、へーそうだったのかと思った。

服部さん。

Yuima Nakazato Privateショー@Kudan house

パリコレデザイナーの中里さんによるトークイベントと展示を見た。ギリシャで、対岸の兵士が島に飛んできて攻め入るために用いたシルクのパラシュートから、住民がそれを拾ってウエディングドレスに仕立て直した話などが面白かった。また今年1月のパリコレについての解説も面白かった。

Kudan house。
トークも面白かった。

あと会場のKudan houseが探索していて楽しかった。渡邉さんと探索した。和室の襖を開けるとゴツい鉄の扉があり、それを開けるとスパニッシュ風のテラスに繋がっていたりして面白かった。地下にある、工房の音の遮断のための戸なども興味深かった。地下1階には当時工房があり、職人さんたちが働いていて、その音が上に響かないようにするために謎の位置に戸があった。

スパニッシュ様式らしい。
スパニッシュ様式はシンメトリーらしいが(そのためにフェイク扉まであった)、ここはなぜかかなりアシンメトリー。
襖をあけると鉄のドア。
奥に突然のテラス。
地下にはボイラーもあるなど。

中平卓馬 火―氾濫@東京国立近代美術館

大変良かった。特に初期らへん。寺山修司の連載で中平卓馬が写真を添えるなどのコラボレーションに驚いた。

このスケール感で写真を体験できるのはとてもよかった。3周した。

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旧「2023年3月に博士論文を書き上げるまで」。博士論文を書き上げるまでの日々を綴っていました。今は延長戦中です。月に1回フランクな研究報…

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