映画『横道世之介』

こんにちは、みしぇるです。

きのうは近所の公園でちょっとした縁日があったのでふらっと写真を撮るついでに参加してきました。

やっぱ夏祭りとか盆踊りとかっていいですね。きのうの会場なんてすごく小さなまあ言ってしまえばショボい縁日だったんですけど、血が騒ぐというか一人でそわそわしてしまいました。少しだけぬるいビールと安っぽいソースの味がする焼きそばを口にするとき、キラキラはしてないけれどたしかにここにある夏みたいなものを感じることができました。

日本人の血ってやつなんですかねこの感覚。お祭り最高。

さて、縁日から帰ってふとある映画が観たくなってしまったので検索をかけてみるとなんとAmazonビデオにあるではありませんか。その映画こそタイトルにもございます『横道世之介』です。

長崎の港町で生まれた横道世之介(高良健吾)は、大学進学のために上京したばかりの18歳。嫌みのない図々しさを持ち、頼みを断れないお人好しの世之介は、周囲の人々を惹きつける。お嬢様育ちのガールフレンドの与謝野祥子(吉高由里子)をはじめ、入学式で出会った倉持一平(池松壮亮)や加藤雄介(綾野剛)など、世之介と彼に関わった人々が過ごす青春時代。16年後、世之介に起こった出来事から、愛しい日々と優しい記憶の数々が鮮やかにそれぞれの心に響きだす……。

あらすじとしてはこんな感じなのですが、この作品にはあらすじなど何らの意味も持ちません。なぜならこの映画は物語というより人生そのものと言ってしまう方が適当だと思えるからです。

すでにこの映画を10回以上は観たかと思いますが、何度観てももう一度観たいと思える映画です。何かが完璧に足りない、そんな映画ではないかと思っています。確実に何かが足りないのだけど、その足りない部分を補うのはこの映画の役目ではない、そう思える映画だと私は感じています。

この作品に出会ったのは高校三年生の夏休みのことでした。当時は作品自体に興味があったというよりは、主題歌をアジアンカンフージェネレーションが手がけているというそれだけの理由で観ることを決めました。映画館に向かう途中でたまたま出会った友人にも声をかけて観に行くことにしましたが、いい意味で期待を裏切られる映画でした。160分という上映時間にもかかわらずそれすらも短いと感じるほど素晴らしい映画で、劇場から出てくる人々の顔が一様に晴れやかだったことを覚えています。

はっきり申し上げて、映画自体に盛り上がる部分はありません。どこにでもいるようなしがない一人の学生の人生をただただ丁寧に描き上げている映画でしかありません。泣くほど感動するようなシーンもありません。静かに心が揺さぶられて、クスッと笑ったり胸がキュンとしたりする程度のものです。先ほどこの映画にあらすじをつけるのは意味をなさないと申し上げましたが、それは映画のこういう性質によるものです。何かを成し遂げたわけでもない人間の人生をあらすじにしてしまったところで無関係な人間にとっては得てして退屈なものになることは想像に難くないでしょう。しかし、この映画の特筆すべきところはそんな無関係な人間であるにもかかわらずその人生の物語に引き込まれてしまう横道世之介という人物、そして周囲の人間のキャラクターにあります。

横道世之介に出会いたかった、横道世之介のように生きたかった。そう思わざるを得ない彼のキャラクターが愛おしくて仕方がありません。それを象徴するようなセリフが綾野剛演じる加藤が学生時代を振り返るシーンにございます。

「あ、そうかお前あいつのこと知らないんだもんな」

「そうか、あれ？なんか得した気分（笑）」

「いま思うとあいつに会ったっていうだけでなんかお前よりだいぶ得してる気がするよ」

この時点で加藤は世之介とは十数年連絡もとっていないのですが、それでいてここまで言わしめる世之介という人物が羨ましくてなりません。果たして私は自分の友人に一人でもこう思ってもらえる生き方ができるだろうか。

他にも好きなシーンは山ほどあるんですけどキリがないのであげるのはやめておきますね。悔しい…。

ヒロインの祥子とのやりとりも、そのあまりの何気なさ故に強く心を打たれます。私、この映画を観るまで吉高由里子さんのことが少し苦手だったのですが、この映画以来好きな女優の一人になりました。

映画のキャッチコピーでもある、「出会えたことが、うれしくて、可笑しくて、そして、寂しい――。」という言葉はまさに横道世之介という人物を表しています。

私がオススメ映画を聞かれたときに真っ先に答える『横道世之介』。こんな拙いレビューでも興味を持ってくださった方がいらっしゃればぜひご覧になってください。絶対に観てよかったと、そしてもう一度観たいと思うことでしょう。

では。