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レストランをやめた僕のマクロビ修行 3

このエピソードは
以下の続きです。

レストランをやめた当時の僕が感じていたことレストランをやめた僕に訪れた衝撃の転機

飛び込んだら、修行そのものだった

この時、僕はまだ料理をしたいと思っていました。どちらかというと、料理と農業をどちらもしたいと思っていて、自分でつくった野菜を自分で料理するスタイルを模索し始めました。


僕は自然食品の会社をされている経営者の方のススメで岡山県高梁市にある「わらの家」に向かいました。「わらの家」は40年以上前から添加物や合成洗剤などの使用に警笛をならし、自然に寄り添った暮らしを基本にする自然食マクロビの農家民宿です。肉、魚を使わない野菜だけの料理を食べに全国から人が宿泊しにくる伝説的な民宿です。料理と農業、暮らしを学びたかった僕はここで全て学べると思いました。研修は1年間、無休で働くことを条件に、家主の船越家族と同居してあらゆることを盗もうと考えていました。
 
しかし、僕の考えが甘かった。
 

僕は結局、約束の1年を守れずに6ヶ月ほどで音をあげました。

小僧としての有難い日々


2019年11月10日、僕は岡山県高梁市、標高400メートルの山頂に位置する「わらの家」に向かいました。

家主の船越さんが自らバス停まで迎えに来てくれていました。

家に着いて、まず教えていただいた仕事が風呂焚きに使うための薪割りでした。

ここから、本当に怒涛のような生活で、ご自身が40年以上の歳月をかけて学んできた沢山のことを毎日毎日船越さん自ら教えてくれました。

食に関わることで言うと、
マクロビの歴史や実践、季節の重ね煮料理、日本の食道具の使い方、鰹削り箱を使った出汁の取り方、発酵食の作り方と使い方、手打ちうどん、手打ちそば、天然酵母パン、米の炊き方、まな板の作り方と使い方

環境に関わることで言うと、
洗剤について、薪の作り方と使い方、荒れた山の再生方法、無肥料無農薬栽培、微生物による水質改善、これまでの環境活動家の歴史と現在

医療に関わることで言うと、
伝統療法、食養生、陰陽論、ヨガ、断食、呼吸法、ホメオパシー

その他、スピリチュアルや成功哲学、断捨離など

毎日メモを取り続けて、夜な夜な知らないことは調べながら、ついて行くだけでも大変な情報量と実践量でした。

何かを極めた人はどこか神懸かっていて、船越さんのようになりたいと感じましたし、必死で学び働きました。

「食べ物変えると人生変わる」を伝えているわらでの食生活は、肉なし、まれに魚、玄米、漬物、味噌汁、野菜料理が基本です。

食材や調味料は、無添加や無農薬などの高い基準で選ばれたもの、畑で自給したもの、手作りの発酵食です。3ヶ月で体重が10kg落ちました。体が軽くなり、むくみが取れて、体の調子は10代後半に戻ったようにすこぶる良かったです。

朝7時に仕事を始め、掃除や洗濯、鶏の世話、畑仕事、薪割り、道具の準備と片付け、事務仕事などの仕事をこなして
夜10時ごろから包丁研ぎや発酵食の世話、メモの整理をして深夜前に寝ます。
寺の小僧のイメージに近いと思います。

また、この半年間で3回の断食を経験しました。

3日間、繰り返し座禅を組みながら水と塩で過ごします。営業中のお茶汲みや布団敷き、洗濯などの仕事もこなしながら、3日目は記憶がなくなるほどにフラフラで、ヒョロヒョロです。

徐々に体中から、自分でわかるほどのキツい体臭と口臭を放つようになります。これまでに溜め込んだ毒素が一気に排出されているそうです。肌や髪の毛、爪など、体中がみるみるピカピカになっていきます。3日目に大根汁や梅干しを食べて、腸内の洗浄をして終了します。

断食中は「怒り」「不安」「恐れ」でいっぱいになり、3日目に食べた瞬間に「喜び」「安堵」「希望」が溢れ、ジェットコースターのような精神状態でした。

鬱が抜けた瞬間

研修生の仕事は、一人で行う単調な作業が中心なので、考え事をする時間が無限のようにありました。作業に慣れれば慣れるほど、単調な時間が増えました。

その一人での時間、僕はある感情に苦しみ続けました。

頭の中に「人を怒鳴りつけるような奴が何してるねん。また失敗するぞ。まだ償いきれてないだろ。」みたいな声というか感情が無限に湧いてきました。レストランで失敗した当時の記憶や感覚を思い出して、辛かったです。必死すぎるあまり周りが見えなくなり、沢山ひどいことをした当時の自分の言葉や行動が次々にフラッシュバックしてきて、その度に謝り続けてました。

特にトイレ掃除や廊下の雑巾掛けをしている時は、必ずその感情が一層強くなりました。きっと、こういった掃除を自分はせずに部下にしてもらっていたからだと思います。

その度に僕は「ごめんなさい」と頭の中で連呼してました。辛いことがあっても、それが今の自分には似合っているように感じて、毎日謝りながら廊下を拭いてました。

そんな状態が4ヶ月ほど続いていたと思います。

ただ、月日が経つに連れて、少しづつ変化がありました。

いつのまにか気づいたら、当時一緒に働いてくれた部下や後輩に「ありがとう」と感謝を繰り返すようになっていました。「こうやって、トイレ掃除、洗濯、床磨き、整理整頓、事務仕事、食材の下処理、皆んながやってくれてたんだな」と一つ一つ気付いていくことができて、その度に感謝し続けていました。

わらに来て4ヶ月ほど経つと、今まで気に止めなかったトイレの裏の裏、廊下の隅の隅、みたいな細かいところまでピカピカにできるようになっていました。パッと廊下を振り返ると、明らかにこれまでよりも綺麗で美しくて。当たり前と言えば当たり前だけど、感情の変化と結果が繋がった不思議な体験でした。

あれほど自分自身が嫌いになり、完全に自信を失っていた僕が、「あれ、やればできるかもしれない」と再確認した瞬間で、はっきりと自分の中の鬱が消えたのが分かりました。

もう一度頑張れる

わらに来た頃はろくに掃除もできませんでしたが、少しずつ掃除が上手に出来るようになり、小さな積み重ねが自信に繋がりました。

その頃の心境が、ロサンゼルスで初めて皿洗いのアルバイトをした時に「何もできることがないんだから、せめて掃除と皿洗いだけは気持ちを込めて完璧にピカピカにしよう」と必死になっていた当時の心境と重なりました。

その時、全身に鳥肌が立って、僕は「答えは全部僕の中にあるし、もう知ってる」と感じました。

もう誰かに答えを求める必要もないし、もう一度今の自分にできることから始めようと思えました。

それから、約1ヶ月後。
営業中の早朝に、僕は半ば感情的に船越ご夫婦に「自分のやりたいこと思い出したので帰ります!すみません!ありがとうございました!」と一方的に伝えて、荷物をまとめて実家に帰ってきてしまいました。

まだ学びたい気持ちはありましたが、次の目標に進みたい気持ちが日に日に積もり、我慢ができなくなってしまいました。わらの皆さんにはとても迷惑をかけてしまい申し訳なかったですが、今振り返ってもこうするしかありませんでした。

技術や知識の成長もさることながら、精神面での修行をさせていただけたことは本当に有難いです。ご縁は途切れてしまいましたが、わらの家の皆さんにはとても感謝しています。

続く

「畑のサラダ」を通して明るい食卓をお届けしている小さな農家です。
淡路島東浦にてベビー&マイクロリーフ、ハーブ、エディブルフラワーを育てています。
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