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プロトタイピングを対象と再現度から考える

新しいサービスが次々と生まれて良いものであふれている中で、サービスやプロダクトを考えていくと、これまでにない新しい価値提案を含むことになります。
その実現のためサービスデザインは様々な要素が複合的に絡み、難易度も高くなります。これまで取り組んできたプロジェクトでも、何度も行き詰まる場面がありました。

そういうとき行き詰まりから抜け出す推進力となるのが、「ビジョンドリブン」と「プロトタイピング」です。どちらが欠けていてもプロジェクトを成功させるのは難しいのですが、ここではまずプロトタイピングでどのようにサービスデザインを進めていくのかみていきます。

新しい価値を理解するにはとにかくカタチにし続ける

「百聞は一見にしかず」で見て触れて体験することは、これまでになかったような新しい価値を理解するための大事な足掛りになります。
しかし、マイクロソフト元CEOのスティーブ・バルマーがiPhoneの価値に気付けなかったという話があるように、サービスやプロダクトを一見したとしても、新しい価値を過去の経験に基づいて判断するのは難しいことが分かります。
だからこそ、サービスデザインではプロジェクト初期から、実際に体験できるカタチにしながら改善していくことが重要になります。

早くから中心になる価値を体験できるようにする

これまで取り組んできたプロジェクトでは、チーム内でずれてしまいがちな新しい価値や意味に対する認識を合わせたり、その価値をユーザーに受け入れてもらえるかを検証するため、可能な限り早くから中心になる価値を体験可能にするように目指してきました。

そのための重要な手法のひとつがプロトタイピングです。そして、何を確認したいのかその対象とそのときに求められる再現度で分けて検討することで、仮説だらけの情報が揃わないプロジェクト初期でもプロトタイプを作ることができます。

プロトタイピングを対象と再現度から考える

サービスデザインは複雑性を含むため、実現のためには様々な要素がからみます。そのためプロトタイピングで検証したい対象が多く、それらを統合したプロトタイプを初めから目指そうとすると、作ることができるタイミングが遅れてしまいます。

それを防ぐためにプロトタイピングの対象を、シナリオ、インターフェース、データ、アルゴリズムの4つに分けた上でそれぞれの必要な再現度を考えていきます。

・シナリオ
体験だけを切り出して検証するにはシナリオが必要になります。シナリオのプロトタイプでよく見かけるのは、ストーリーボードやカスタマージャーニーマップなどがあります。プロジェクト初期では4コマ程度のストーリーボードがあるだけでも、価値を理解するのにとても役立ちます。

・インターフェース
体験をしてもらう接点となるインターフェースの検証にプロトタイピングが使われることは多くあります。ペーパープロトタイプやモックアップがそれにあたります。
ペーパープロトタイプと後述するオズの魔法使いの組み合わせは、柔軟性も高く初期からコストをかけずに繰り返し改善していくのに向いています。

・データ
データやコンテンツにもプロトタイピングの考えかたを適用できます。プロジェクト初期に正式なデータやコンテンツを揃えることが難しいので、ダミーデータや静的データをいくつか用意してランダムに返せば検証可能なのかなど、検証にあたり最低限必要なデータの再現度を意識しておきます。

・アルゴリズム
ユーザーの入力に合わせてどのように動作するのかはサービスの価値として重要です。インターフェースと切り離すことで早期に検証ができるかは意識したいです。アルゴリズムはデータと組み合わせになることが多く、いくつかサンプルの静的データを用意してランダムで返却するだけでも意外と検証できたりします。


このように、対象を分けて考え、プロジェクトのフェーズで実現可能かつ、検証内容で必要になる再現度を判断して、それぞれで検証できる手法を組み合わせていきます。何をどうやって検証するのか、操作可能である必要があるのか、いつ実際のデータを得られるのか、などの条件によって、どのフェーズでどのプロトタイプが作れるのか、どの手法が利用できるのかが決まっていくことになります。
こうすることで、プロジェクト初期でもプロトタイピングを実施して、サービスやプロダクトの方向性に間違いがないか低コストで検証していけるようにしています。

新しい価値を作っていくにはカタチにすることが重要です。早くカタチにすることこそが、行き詰まりから抜け出し、先を見通すことができるプロジェクトの推進力になるはずです。


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