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雨の日も好きになれたらいいのに【ショートストーリー】#001

「あけましておめでとうございます」

 会社で新年の挨拶をする。室内の空気もどこか新春といった雰囲気を纏っているし(それは門松が置いてあるからかもしれないが)、カレンダーも表紙をめくった一枚目で紙もぴんぴん真新しい。

 10日前はまだ去年だった、というとなにやらおかしな日本語にも聞こえるが事実は事実である。書類に西暦や年号を書くとき一瞬止まってカレンダーを確認して、そうだそうだ、年が明けたのだと苦笑しながら今年の日付を記入する。

 そういうどことなくふわふわした感じが1月にはある。1年12ヶ月。いつだって1日は1日で、1ヶ月は1ヶ月のはずなのに。
 12月のあの慌ただしさ(師走とはよく言ったものだ)を抜けて、心がどこか落ち着くのだろうか。それとも逆に、何かに向かおうと心が起きあがろうとしているときなのだろうか。

 そうだとしたらひとつ、心の向きを変えたいことがある。

「雨の日も好きになれたらいいのに」

 私の、ささやかな願いだ。晴れの日は子どもの頃からずっと好きで、くもりの日も大人になってからは悪くないなと思うようになった。でも、雨の日は……。
 この思いが今年の目標なんて話したら、雨の日が大好きな課長はなんと言うだろうか。仕事そっちのけで雨の日の魅力を語りだしたりして。それはそれで聞いてみたい気もする。

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