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意地でも終わらせない


栞をはさんでおけば、物語が終わることはない。

それがあの人の口癖だった。

あの人はいつも、読み終わった本の栞を気に入ったページにはさんで閉じる。

私は読み終わった本は一番最初のまっさらなページにはさむけれど、あの人はそれを嫌がった。

私が読み終わった本に出くわすと、急いで栞を他のページにはさみこむ。

私は最初、それが嫌であの人に理由を尋ねた。

すると返ってきた言葉がそれである。

なんともよくわからない理由だが、あの人らしいと思ったので私はそのまま納得した。

それを聞いた後は、私も読み終わった本の栞をどこか途中のページにはさみこんでいる。

でもやっぱり、一番最初付近にはさみこむ。

私は、どちらかというと途中のページにはさみこんで物語を終わらせなくするよりも、また新しく物語を始めるために始まる前のまっさらなページにはさみこみたい。

なんならタイトルページでもいいのだけれど、あの人はそれを嫌う。

でもまあ、なんだかんだで途中のページにはさむのだが。

あの人がとてもそのあたりに関しては意固地なので、私が折れることにしたのだ。

ただあの人がどうしてそこまで、物語を終わらせたくないのかは不明である。

あの人は、それ以上言わない。

言いたくないことなのだろうから、私も無理に聞かない。

でもやっぱり、たまーーーーに忘れかけた頃に栞を戻されるところを見てしまうと、ちょっともやる。

すごい、嫌な感じである。

とはいっても私はそれを見なかったことにして、また栞を途中にはさみこむのだ。

……たまに忘れるけど。

あの人は今も本を読んでいる。

栞がテーブルの上に置かれている。

もしその栞を私が隠してしまったら、あの人はどうするのだろう。

頬杖をしながらあの人と栞に交互に視線を動かす。

ふとあの人のポケットに五枚ほど紙が飛び出しているのが目に入る。

きっと栞だ、と直感する。

なんというか用意周到だなあと思い、笑ってしまう。

ついさきほどまで栞を隠そうとしていたことすら忘れて、私は本を読むあの人を見つめるのだった。




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