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Nikon Z fcを買った話

Nikonのミラーレス一眼カメラZ fcを購入した。私にとって十数年ぶりの一眼レフ(ミラーレスだけど)である。だが、その話をする前に私自身の写真歴を書いておきたい。

高校時代
安いフルオートのコンパクトカメラを買ってもらう。これが人生最初に手にした「自分のカメラ」。型番などは覚えていないが、確かメーカーはRICOHだったと思う。
修学旅行などにも持っていき、たくさんのスナップを撮った。

大学時代
美術大学入学後、父のお下がりのNikon FM(無印)を譲り受ける。レンズはNIKKOR 50mm f1.4。
今はもう手元にないので製造時期などの詳細はわからない。
ここで写真熱が爆発し、スナップ、モデル撮影からライブ、友人の芝居のゲネプロまで、数年間にわたり撮りに撮りまくる。
最初はカラーネガを使っていたが、思い通りの色味の紙焼きを得ることの困難さに疲れ、モノクロとリバーサルに転向。
暗室作業の楽しさにも目覚める。
しかし、当然ながら大学の暗室は授業に使用することが多いため、週に一度しか貸してもらえない。それでは撮影した大量のネガが捌ききれないので、ついに自宅に暗室を作ることに。
それからは思う存分撮影、現像、焼き付けの日々。卒制も写真ゼミを選択。

ちなみに大学の備品カメラはFM2だった。これは当時大体どこの写真系学校もそうだったようだ。

しかしここまでハマっておきながら、卒業後は徐々にカメラを持たなくなっていく。
理由はおそらく、Macを買ってしまったから。
デジタルが面白くなっちゃったんですね。
出版社の制作部に就職したこともあり、当時黎明期だったDTP全般にどっぷり浸かったまま、いつしか銀塩写真のことは忘れていきました。

その後登場したコンパクトデジカメを2台くらい買った記憶はあるけど、軽いスナップや趣味のドールを撮るくらいで、そこまで使い込まなかった。
確か一台目がOLYMPUS、二台目はCanonのIXYだったかな。

2007年
初めてのデジタル一眼レフカメラを購入。
EOS Kissだったということしか覚えていないが、購入時期からしてEOS Kiss Digital Xではなかろうか。レンズは父の勧めで、タムロンかシグマのズームを買った。
これらももう手元にないので詳細不明。

その後〜現在まで
2008年に日本でiPhoneが発売され、雷に打たれたようにハマりたおし、一眼レフには全く触らなくなってしまった。我ながらガジェットミーハーすぎる。
あと、20代からの持病である腰痛が悪化し、重い一眼レフとズームレンズの組み合わせに体が耐えられなくなったというのもある。
一度撮影先の京都で痛みがひどくなり、動けなくなるという体験をして以来、もう大きいカメラはダメだな、と。

そんな感じでここ15年ほど写真はiPhoneのみで撮っていました。
インスタも始まった当初からやってるけど、ごく初期の頃にEOSで撮った写真を上げた以外は殆どiPhoneで撮ったものを上げてきたと思う。
正直自分はもう一眼レフに戻ることはないと思っていた。

それが2024年、令和になって突然自分の中に一眼レフリバイバルの嵐が吹き荒れ、気付いたらアキヨドでZ fcを買っていた。
リバイバルがやってきた理由もいろいろあるけど、その辺の話はまた折りを見て書きたい。

さて、Z fcです。
今回一眼レフをまた新たに購入したいと思った時、最初に頭に浮かんだのがこのカメラだった。
上記の写真歴にも記した通り、私の人生初の一眼レフは父のお下がりのNikon FMだったので、ほぼ同じデザインであるこのモデルにはどうしても惹かれるものがある。

突然だが、去年の一月に父が亡くなった。
このことが私にカメラに関するいろいろなことを思い出させた。美大の必修枠で多少授業を受けはしたが、写真に関する知識の大部分は父から教わったものなのだ。暗室ワークも。
父はカメラマンでもなんでもなく、ごく普通の商売人だったが写真の趣味がちょっとだけディープだったのだ。
この話も長くなりそうだからまたいつか。

父のお下がりのFMがどうなったかというと、数年前に実家を畳む時に膨大な荷物の中からサルベージし損ね、結局それっきりになってしまった。その後悔もあって、FM(2)の復刻版ともいえるこのZ fcに決めたのである。

導入が長くなった。でもこのカメラを買ったこととこれらのことは自分の中で切り離せないので、どこかに書き残しておきたかった。

可愛い。軽い。

ネットで軽く下調べもしたが、実機を持ったときの感想はとにかく「軽い」。バッテリーを入れるとちょっと重くなるけど、それでも十分軽い。
レンズは去年発売されたNIKKOR Z DX 24mm f/1.7。

2007年に買ったEOSを短期間しか使わなかった理由に、思いの外ズームレンズが重かったからというのがある。
学生時代、主に3本のレンズを使っていたがどれも単焦点だったので、ズームレンズの重量感を殆ど知らずにいたのもよくなかった。とにかく重いレンズは腰にきた。
あと、思った以上に暗かったんだよね〜(もちろんズームの恩恵にも与ったけど)
それらいろいろに懲りていたし、さらにあの時よりも歳をって現在50代。
今回は絶対にコンパクトで明るい単焦点にしようと心に決めていた。
昔、どこに行くにもつけっぱなしにして愛用していた単焦点50mmエフイチヨン、あの写真生活に戻りたいと思ってこれにした。

※本体がAPS-Cなので、センサーサイズの違いから約1.5倍となる焦点距離を考慮して24mmに。この選択は正解だった。1.5倍ってけっこうなデカさ。

その他のファーストインプレッションをいくつか。

  • 巻き上げレバーがない!(当たり前だけど全体のデザインが似てるだけに違和感がすごい。笑)

  • ファインダーを覗いてもスプリットイメージが出てこない。MFのときどうやって合焦するの?(後にピーキング機能を知って解決)

  • なんかダイヤルが多い(FMはもっとシンプルだったから…)

  • 右手がなんか変なボタン押しちゃう。これなに!?(カスタムボタンだった)

  • カスタムボタンのせいでグリップ感がまるでない。これには驚いた。

  • でも軽い。自分にとってしっくりくる最高のデザイン

  • シャッター音も軽くて心地いい

  • ファインダーの視度調整ができるの助かる

おやっと思うこともいくつかあるけど、それは私がフィルム時代のFMから入ってるせいなので、これから買う人やこれが一台目のカメラになる若い人には関係ないだろう。
ただ、カスタムボタンの位置だけは永遠に気になる。ここしかないんですかね…。まだ購入後1ヶ月なのに100万回くらい間違って押してる。

でも最高に気に入ってる。求めていたのはこれです。
難しい機能や操作法をいちから覚えなくてもマニュアルモードにすれば昔と同じ感覚で、自分好みの写真が絶対に撮れる。この安心感は大きい。
現代のデジカメ全般だってマニュアルモードくらいあるだろうけど、自分の手に馴染んだFMに近いデザインなのでさらにハードルが低く感じられる。

ちなみにFMは完全機械式で、なんと絞り優先・シャッタースピード優先機能すらなかったのです。
でも悪いことばかりでもなくて、機械式なので電池が切れても露出計がきかなくなるだけでシャッター自体は降りる。最悪、露出計なしでもカンで撮れば写らないことはなかった(リバーサルは無理)。
今思うとびっくりだけど、人生最初がそういうカメラだったせいでフルマニュアルで覚えてしまった。
当時、さすがに父が「絞り優先機能くらいついてた方がいいだろう」と、どこかから中古のFAを買ってきてくれたのだけど、特に不便を感じてなかった私は殆どそのFAを使わなかったんですね。思えばもったいないことをした。
あれもどこに行ったかなあ…。サルベージしておけばよかった。

あ、今はAモード(絞り優先)駆使してます。
ほぼAにしたままで、時々背景ボケとか関係ない被写体のときだけガガッと、ダイヤルをオートモードに切り替えて撮影してる。
この直感的な操作性はこのカメラの売りの一つなのではないかと思う。

何枚か作例を。RAWデータなのでLightroomで現像。

この2枚は、Z fcを買った翌日くらいに初めて外で撮った写真。
NIKKOR Z DX 24mm f/1.7は最短撮影距離が短めなので結構寄れる。
そこも気に入ってます
まだピーキング機能を知る前で、逆光のもと、まともにファインダーを覗いて目がしぬ、と思いながら撮った梅。直射日光を撮るときは背面モニタを使いましょう…。

本体以外の話も。
「レトロ」なZ fcには革ストラップなどが合うのだろう、と分かってはいるのだがニコン巻きの安定感に抗えず、ひとまず付属の純正ストラップを使っている。
白い「Nikon」ロゴはちょっと嫌なんだけど…。

安定のニコン巻き

このカメラのデザインが今、かわいい、オシャレと言われていることになんというか照れを感じてしまう。
90年代は流線型の未来的なデザインが「かわい」かったので、FMを持ってると「おじさんぽい」と言われたものだ。時代が一巡りしたんだな…と遠い目になりつつ、このデザインと精神性が若い人に継承されていくのを目の当たりにする幸せを感じてもいる。

父と私の繋がりでもあるこのカメラが、末長く愛されていくといいな。

読んでくれてありがとう

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