ハマっているもの2（やっぱり趣味全開）

全力で課金してしまった作品「ヌリタス～偽りの花嫁～」
めちゃコミで拝読しています。
ネタバレしてもへっちゃらな方は、どうぞ読み進めてください。

序章の興味付けがすごい

このお話は主人公が突然存在を知らされた父親に人生を利用され、名前も身分も偽って公爵家に嫁に行くというストーリーなのですが、まず序章がすばらしい。
主人公と母親の境遇に、即感情移入。
心身ともにフルボッコにされるふたりが可哀想で、読み進めるのも躊躇ったほどでした。
どうか幸せになってほしい…！と願わずにはいられない。
主人公にはなんと名前がありません。
それは名前がなくても用が足りたから。
「おい」「お前」などなど……
そんな主人公に、父親である伯爵はヌリタスと名付ける。
ヌリタスって人の名前での使用はあり得ないんです。
なぜなら、無価値という意味だから。
おいおい、親父よ……没落しそうな自分の家の命運を背負って立つ少女に無価値って……
非情にもほどがあり、ムキー！となります。

命の軽い時代

なぜそれほどまでに、父親は主人公に辛く当たれるのか。
この時代は一人ひとりの命が平等ではなかった。
主人公は私生児。
私生児とは正妻ではない女性が産んだ子のことで、平民以下の扱いを受ける。
家畜同然という表現には強い衝撃を受けた。
いやいや、待って？
子を産んだ女性は被害者な上に、どうやっても不幸にしか生きられないってどういうこと？とんでもない差別じゃない？
男は罪を犯し、女性とその子どもの人生まで狂わせて…
今でもそんなやつらはいるけど…
悪いのは手を出した男やぁぁぁあ！許せん！とここでも感情移入。

夫の公爵様の変わりようが…ꉂ🤭

主人公は住み込みで働いていた侯爵の城で、ブタちゃんのお世話をしていたから小さき者への愛情が強い。
メンタルを腐らせることなく、ブタちゃんのお世話に精を出す主人公。
動物と触れ合う優しい振る舞いに、夫である公爵様は胸を打たれどんどん主人公に惹かれていく。
公爵様はスタイルもよく、お顔もかなり美しい。
彼は幼くして家族を失うが、由緒正しい家柄を守るため厳しい教育に1人耐えてきた。
戦地に行けば、鍛え上げられた剣の腕前で勝利を積み重ねていく。
〇らなければ〇られる戦場での勝利は、たくさんの命を奪ってきたという証。
その事実がさらに彼を苦しめ、孤独の中で生きることになってしまった。
飄々としているけれど、人知れず苦しみを背負っている姿がまたかっこよく映る。
身分がうんと高くても低くても苦労だらけで、中世ヨーロッパの時代は大変だったんだなぁ…と思わずにはいられません。

そんな彼が、主人公をどうにか守ろうとする姿が……もう健気で……！
主人公はこれまで大事にされたことがない。
母親は主人公を大切に思っているが、貧困のためいつでも自分を捨てて出て行けるよう、主人公とそっけなく接してきた経緯がある。
そのため、主人公は自分自身をすぐに蔑んでしまう。
公爵様がなぜ自分を好いてくれるのか分からない。
そんな主人公に振り回される公爵様がかわいくて、思わず応援してしまう。
あらゆる場所に感情移入ポイントがあるのだ。

悪役の顔が憎いw

悪役のキレッキレのセリフもいいし表情がすごい。
心から腹が立ってたまらないｗ
攻撃的な言葉はYouTubeシナリオを作る際に、かなり参考になる。
私の中にはない悪口ストックの量がすごいw
まずは、主人公に歪んだ愛情を向ける異母兄弟のアビオ
彼の目つきと姿勢の悪さが、異常な雰囲気を存分に醸し出している。
毒親に育てられたのは同情するけれど、それでもひどい。
彼を支えているのは、侯爵の後を継いで地位を獲得し主人公を手中に収めること、のみ。
卑屈の塊のようなアビオの描き方はとにかくすごい。
伯爵の奥方である夫人も悪役だけど不幸な面がある。
出産で命を落とすのが普通の時代に、4人も女児を産んだ。
さらに頑張って後継者となるアビオを産んで、妻の使命を果たした。
なのに！
伯爵は待望の男児に見向きもしなかった。
自分と同じ髪色でなく、秀でた才能がないから。
この仕打ちはひどいですよね。
しかも夫人が男児を産もうとしているときに、侯爵は主人公の母親に手を出していたのだから、伯爵夫人が気を狂わせるのも納得がいく。
諸悪の根源である悪の親玉の伯爵。
遊び惚けてプライドだけ異常に高い。
この人は、人に呪いの言葉を授ける天才だと思う。
この呪いのせいで、主人公は素直に幸せになれずにしばられ続けるのだから。
自分の存在が公爵様を不幸に貶めるのではないか、と涙を流すシーンが随所にあり切なさに目がウルウルする。
悪事をするときの表情がみんないいw
こんなに醜くなりたくないなと思わせてくれる。

まだ完結していません！

メインキャラからサブキャラまで、背景がしっかり描かれているので矛盾がなく生き生きしている。
ストーリーも流れるように進み、とても勉強になる。
こんな興味をひく作品を書いてみたいと思うけれど、これだけ練り上げるには、構成をしっかりしないと無理ですよねぇ……
いきなり本文を書き出す作家さんもいるけれど、そんな腕前はないから絶対迷子になる……
まずはしっかり構成づくりをしなくちゃな！と改めて思わせてくれた作品でした！