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アメリカのオンライン授業⑧ 実践していること ・ コミュニケーション編


こんにちは。コロナ禍で、日本でもオンライン授業への移行が進んでいますが、教えている皆さんも、教わっている皆さんも、どんな感想をもたれているのか、とても気になるところです。わたしが教えているアメリカの大学は、今週から4週目に入り、折り返し地点が見えてきました。

前回は、オンライン授業で実践している工夫について、カリキュラム編を投稿しました。今回は、コミュニケーション編です。

学生のためのコミュニケーション

対面からオンラインへの移行で、先生も学生も一番不安なのが、コミュニケーションだと思います。対面で分かる学生の様子も、オンラインでは、ほとんど分かりません。わたしはZoomでビデオをつけることを強要していないので、顔を見ることがほとんどない学生もいます。

そんななかで、授業についていけていない学生、学習環境が整っていない学生、メンタルのケアが必要な学生などに気づくことは容易ではありません。

一般的に、大変な状況におかれた学生は、その状況への対応で手いっぱいで、大学のリソースに頼ったり、誰かに助けを求めたり、先生に相談するということをしにくい傾向にあります。

そこでまず大切になってくるのが、カリキュラムを柔軟に組むことです。学生が助けを求めるまでもなく、自分である程度調整できる幅をつくっておくということです。前回の投稿では、締め切りや課題提出の数に柔軟性をもたせるなどの工夫をお話ししました。

そして、次に大切なのが、学生との普段からのコミュニケーションに工夫を凝らすことです。ここでは、先生が学生に、気にかけていることを伝え、学生の異変を察知し、ポジティブなメッセージを伝えるために実践していることについて紹介していきます。

(1) 気にかけていることを伝える

伝えるということは、対面でも難しいことですが、オンラインでは、なおさら難しいです。そこで、わたしは、以下のことをおこなっています。

月曜メール
新しい週が始まったら、まず、朝に学生にメールを送り、彼らの学びと健康を気にかけていることを伝えます。わたしがつくった講座の簡単なロゴをメールの冒頭に入れ、副題などは色を変えながら、視覚的にも見やすいものを心がけています。

授業でうまくいっていることへの褒め言葉と連絡事項から入り、前の週に学んだことと、そのフォローアップをおこない、今週の学習目標と課題を説明します。そして、最後には、健康に気をつけること、そして、Zoomで会えるのを楽しみにしていることを伝えます。

このメールは、1週間の初めにその週の予定が分かり、計画が立てやすくなる、また、先生に気にかけてもらえていることが分かって嬉しいなど、学生たちに好評です。

定期的にアンケートを行う
オンライン授業を行うにあたって、うまくいっていること、いっていないことをそのつど学生に確認することで、よりよい学習環境を創り上げることができます。

わたしは、1週目にカリキュラムの読み合わせを行なった際に、ZoomのPoll機能を使い、学生の希望を一つずつ、投票形式で聞いていきました。そして、2週目が終わったときに、改めて、カリキュラムや課題の量などについて、Survey Monkeyを使って学生の考えを聞いて、大幅にカリキュラムを変更しました。

さらに、状況が変化することが予想されるなか、何か変えてほしいことがあったら、いつでもわたしにメールするようにと伝えています。そして、先生に直接、言いづらいという学生が匿名でいつでもフィードバックを伝えられるように、Survey MonkeyのアンケートへのリンクをModulesに毎週、貼り付けています

こうした姿勢を見せることによって、コロナ禍で、孤立を感じがちな学生も、自分たちの健康や学習を気遣ってもらっていると実感することができます。また、実際にアンケート結果をカリキュラムに取り入れることによって、一緒に学びの場をつくっているという一体感も生まれてきます。

(2) 異変を察知するための情報収拾をおこなう

ここまで、学生を気にかけていることを伝え、アンケートを通して、フィードバックをもらうことをお話ししましたが、他にも、学生の様子について知るために、さまざまな取り組みを行なっています。

課題を通して情報収拾
まずは、課題を提出しているかどうか、課題のクオリティがどうか、ビデオ会議に参加できているか、ビデオ会議中にネットの接続状況で苦労していないか、など、成績をつけるためではなく、異変を察知するという観点から気をつかうようにしています。

そして、気になる学生がいたら、さりげなくメッセージを送ります。このとき、学生に課題をやっていないことを指摘するのではなく、よりよい学びのために、なにかできることはないかというトーンでメールを送ります。そして、必要があれば、締め切りを伸ばしたり、代わりの課題を出したりして対応します。

ビデオ会議で情報収拾
クラス全体でのビデオ会議では、わたしはスライドをつかって講義とディスカッションを行なっているため、どうしても学生全員に気を配ることが難しくなります。

そのため、ビデオ会議の最初に、学生が全員揃うのを待つ間に、ZoomのWhiteboard機能をつかって、学生に自由に、今の気分や、何を考えているかなど、書き込んでもらうようにしています。匿名なので、おのおの「疲れた!」とか、「課題についていけない!」とか、「こっちは晴れてるよ!」とか書いてきます。わたしはそれらの書き込みを読んで、その場でたあいのないコメントをするなど、反応しつつ、学生との対話を行なっています。

先週は、Zoomの参加者がいつもより少なく、さらに、Whiteboardの書き込みで疲れたという発言が多かったので、さっそく、カリキュラムを変更しました。

オフィス・アワーで情報収拾
アメリカの大学はオフィス・アワーと言って、教授がオフィスを開放し、学生が授業の質問や課題の相談などをしに行くことができる仕組みがあります。オンラインでのオフィス・アワーは、Zoomに移行になりましたが、このオフィス・アワーは、先生にとって、学生と一対一で会話できる数少ない機会になります。

通常、オフィスアワーがあっても、ほとんどの学生は利用しません。とりわけ、授業に遅れ気味の学生や、何かしら手助けを必要としている学生ほど来にくい傾向があります。

そこで、わたしの授業では、オフィス・アワーに来ることを評価の一部として、全員が必ず一度はわたしとお話できるようにしています。こうすることで、オフィス・アワーに来にくいと感じている学生にも来てもらうことができ、わたしもそれぞれの学生について知ることができ、それぞれの興味や学習段階に応じたサポートをすることができるようになります。

また、インターネットの接続環境などの影響で、ビデオ会議でのオフィス・アワーに参加できない学生がいることを踏まえ、オフィス・アワーはメールでも電話でもできることをあらかじめ伝えておきます。

(3) ポジティブなメッセージを伝えよう

わたしの大学の学生は、これまでもたくさん頑張ってきて、たくさん周りから期待されて、そして、その期待に応えてきた人たちです。そんな彼らの一番のモチベーションは、誰かに認めてもらうことです。普段の授業からそうですが、学生に肯定的なメッセージを伝え、それぞれに自信がつくような接し方をすることで、より良い学びを促すことができます。

ポジティブなトーンで話そう
オンラインでは相手のことが見えにくく、表情も分かりにくいため、同じ言葉を投げかけても、違うニュアンスで伝わってしまうことがあります。また、クラス外の会話などで先生と生徒間の交流の機会も少ない分、会話に誤解が生まれやすい傾向にあります。真面目な学生ほど、先生からのメッセージを真剣にとらえ、それに一喜一憂しがちです。そんな学生たちのためにも、オンラインでは、丁寧に、普段よりもポジティブなトーンを強調して、メッセージを繰り返し伝えることが大切になります。

学生一人ひとりの活躍を褒めよう
普段からそうですが、学生一人ひとりの声に真剣に耳を傾け、それぞれの貢献を認めるというのは、とても大切でありながら、かなり難しいことです。オンラインの授業では、相手の存在を認めているということを示すことが、さらに難しくなります。

そこで、わたしは、全体のセッションの前に学生が掲示板に投稿したものを読み、レクチャーやディスカッションのなかで、それぞれの学生の意見や質問を、名前つきで取り入れたり、その内容についてさらに質問したりして、みんなの前で、それぞれの貢献を認めるように工夫しています。

わたしのクラスには20人以上いるため、偏りが出ないようにするのに苦労していますが、それでも、できるだけ多くの学生の名前を呼んで、会話に参加してもらうようにしています。


オンラインで授業をするなかで、コミュニケーションは、やはりとても難しいなと感じています。みなさんは、どのような工夫をしながら学生と接していますか。ぜひ、アイディアをシェアしてください。

次は、わたしがオンライン授業で実践していることのコミュニティづくり編です。

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