見出し画像

アメリカのオンライン授業④ オンラインへの移行を乗りきるための3つの心得

米国でオンライン授業への移行を経験したなかで、役に立ったことについて、書いていきたいと思います。

前回の記事では、コロナ禍でのオンライン授業は、オンライン講座ではないという認識をもって挑むことの大切さをお話ししました。

今回は、コロナ禍でオンライン授業への移行をスムーズにおこなうための、3つの心得について、お話ししていきます。

こころえ① 非常時であると認識すること

今回のオンラインへの移行は、先生も学生も望んでいたものではありません。また、常態化するための取り組みでもありません。時間も、リソースも限られたなかで、非常時に、必要に迫られておこなうものです。

米国ではコロナ禍のオンライン授業は、最近一般的になりつつあったオンライン講座とは異なるという認識をもった上でおこなわれています。オンライン講座は、さまざまなな専門性を駆使して、何ヶ月もかけて作成される、一つの作品みたいなものです。

オンライン講座を基準に準備を進めてしまうと、教職員も学生も、疲弊してしまいます。教職員も学生も、今あるリソースで、柔軟に、できる限りのことをおこない、この事態を一緒に乗り切ろうという心得をもつことで、お互いに寛容な気持ちで授業に挑めるのではないでしょうか。

こころえ② シンプルであること

教職員と学生の負担を減らし、学生の学びを最大限にするために、もっとも大切なのは、「シンプルであること」だと思います。

わたしの所属する大学は、全米トップ10に入るような大学で、学生も、本当によく勉強します。大学のカルチャーとして、読み物や課題は膨大なのが当たり前、成績も厳しいのが当たり前という学習環境でした。

しかし、今回のオンラインへの移行は、ただ授業がオンラインに移っただけではありません。学生は、今まで勉強していた寮や図書館、仲間といった学習環境を失い、ときには、親兄弟の面倒を見たり、自分の部屋がないなかで授業に集中しようと頑張っています。健康への不安、経済的な心配や、進路のことなど、勉強に集中できない学生も多数います。

そうした中、普段のように毎週、クラスごとに100ページ近く読み、3時間近く講義とディスカッションに参加するというのは不可能に近い要求です。そのため、長ければ長いほうがいい、多ければ多いほうがいいという風潮を見直し、教職員も学生も、シンプルな授業が、学生の学びにはとても有効であるという認識をもつ必要がありました。

そこで、学生の集中力をキープしながら、短い時間で学びを最大限にする工夫として推奨されたのが、以下のことでした。

* 読み物は半分以下に減らす
*Zoomのセッションは長くて1時間にする
*その1時間を15分ごとに区切る
*講義は長くて10−15分にする
*クループワークをとりいれる
*あいだに質問、クイズ、poll機能をとりいれる
*スライドやビジュアルを活用する
*課題は短い時間でできるものにする
*成績は課題をやったかやらないかで判定、など。

こうした、よりシンプルな授業をおこなうにあたり、教える側は、目的をより明確にして授業の準備をおこなう必要があります。

こころえ③ 構成をしっかり組むこと

これは、普段の授業でもいえることですが、オンラインの授業はとくに、お互いの反応が分かりにくいぶん、構成を明確にすることが大事になってきます。

そこで大切なのが、例えば、1時間のZoomセッションのあいだに『何をするか』を、学生に最初に提示するだけでなく、『それぞれのアクティビティをおこなう理由』を明確にすることです。

これは、学期全体、そして、それぞれの週の構成についてもいえることです。

コース全体の目的(learning objective)は何か、そのために毎週、なにを目的として、なにをおこなうのかを明確にすることで、教える側も学生も決められた枠のなかで授業にのぞめるようになります。この目的と構成は、一番最初の授業で、学生に明確に伝え、その後も、なんども繰り返し伝えていきます。

そうすることによって、教える側は、その週、それぞれのクラスで、なにを伝えたいのか、そのためになにを準備すればいいのかが明確になります。学生もなにを学んでいるのか、そのためになにを準備すれば良いのが明確になり、目的を持って学習し、学びを得ることで、自信をつけることができます。

真面目な学生が必要以上に課題に時間をかけてしまい、疲弊することも防げますし、家族のお世話などで時間に追われている学生が、最低限やらないといけないことを知ることで、プレッシャーを和らげることもできます。こうして、双方に心のゆとりが生まれます。

コロナ禍でのオンライン授業をおこなうにあたり、この3つの心得で、みなさんがゆとりをもって、学びの場づくりをおこなっていけることを祈っています。


次回は、オンライン授業で目的 (learning objective)を中心に据えて授業の準備をする方法について、より詳しく書いていきます。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?