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【本】外山滋比古『老いの整理学』:足だけでなく五体の散歩をしよう

2024年8月29日(木)

木曜日は読んだ本の紹介をしています。今回は過去の記事を再録します。

2022年9月14日

2014年に初版が出た『老いの整理学』(扶桑社BOOKS文庫, 2017)は外山先生が91歳のときの作品です。「どうしたら、おもしろく、いやなことを忘れて老いていけるか」をテーマにした本です。

「五体の散歩」というアイデアがこの本のハイライトです。

あるとき、足だけに散歩させて喜んでいるのはおかしいではないかと気がついて、手も、口も、耳目も、頭も、動くところはすべて散歩させないといけないと悟って、五体の散歩を唱えるようになった。

まず、手の散歩。

女の人は炊事あり、編みものあり、片づけありで、手の散歩はたっぷりできる。それにひきかえ男は、うまい手の散歩がなかったが、近年は、パソコンを使えばいい散歩になる。ピアノのような両手を使う楽器もたいへんよろしい。

あとは、庭仕事、盆栽いじりなんかも手の散歩になりますね。

次に、口の散歩。そして、目の散歩、耳の散歩。さらに頭の散歩。

口だっておしゃべりをすれば、散歩効果がある。おもしろいところに行くのは目の散歩、音楽をきくのは耳の散歩、テレビ、ラジオでも、散歩させてくれる。おもしろいことを考えるのは頭の散歩になる。

なぜ散歩かというと、「流れる水は腐らない」からです。

人間も、生きているのは、動いているからである。動くことをやめれば、活力を失う道理である。

そして「生活のリズムが肝要」。

言い換えると、リズムをもって生きよ、と言っているのである。急ぐばかりではいけないが、休んでばかりいてはもっといけない。休んだらそのあと急いでしっかり仕事をする。

最近は「老害」などと呼ばれて、老人も肩身が狭いです。威張ったり、自慢話をする老人は若い人に敬遠されるわけですけど、それも老人の幸福度向上を考えると許してほしいところです。

威張るのは威張られる側にとっては不愉快なことであっても、威張る側にしてみれば、生き甲斐のひとつである。それを封ずれば、心が傷むのである。体が病むことにもなるのである。

しかし、自慢を嫌うのは、古い考えである。聞かされる側にとっては人の自慢話ほどつまらないものはないが、話す側にしてみと、こんなに楽しいことはない、と言ってよい。相づちを打ってくれる人がいれば、時を忘れてえんえんと続けることができる。

この本と一緒に『お金の整理学』(小学館新書, 2018)も読みました。

この本では「第二の人生のテーマを探す」ということで、社交の場としての仲間クラブの重要性と難しさを語っています。

クラブ的思考に基づき、皆で酒を飲んだり、ものを食べたりしながら勝手なことを言い合っている方が、新たな気づきへの近道になる。そういう〈偶然の知恵〉こそが、ヨーロッパの歴史に数々の発明と発見をもたらしてきたのである。

現実的には、五〜六人の仲間によるクラブをいくつも持つことは簡単ではない。私も、つくろうとしては失敗を繰り返した。

あとは、「株式投資をしよう、私もやっている」というところが意外な感じでおもしろかったです。損をしても問題のない範囲で株を買うのです。そのために情報を集めたり、勉強したりするのでボケません。ギャンブル的要素もあることで楽しみにもなります。

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