007 [アドラー心理学] 教育から仕事、そしてウェルネスへ
教育はいつの時代にあっても、活発な議論のテーマになります。それは、時代が常に変化しているので、それに合わせて教育も変えていかなくてはならないからです。ですから、教育は教育の領域内だけで議論しても意味はありません。そうではなく、社会や仕事との関わりにおいて教育を考えることが重要です。そして社会や仕事との関わりを考えることは、自分の人生の意味とウェルネス(よく生きること)を考えることにほかなりません。
■AIとロボットの時代を見越して何を教えるべきか
ホルムス, ビアリック, ファデルの『教育AIが変える21世紀の学び』(北大路書房, 2020)の紹介から話を始めましょう。
・二度と使わない内容の学びに多くの時間を費やしている
人々は自分の専門を決めた後には二度と使わない内容の学びに多くの時間を費やしています。これを解決するには、基礎となるもの(コア概念)を強固かつ柔軟に理解することが必要です。これを「専門的アマチュアリズム」と呼びます。
この背景には、21世紀には非ルーチン的な対人業務と非ルーチン的な分析業務だけがニーズが伸びていくということがあります。裏を返せば、ルーチン化された業務はロボットやAIに取って代わられます。非ルーチン的な業務に対応するためには、知識やスキルを応用する「転移」の能力が必要です。
伝統的教育では熟達の結果として転移を想定してきましたが、それは実態とは違っています。どんな専門的知識でもスキルでも、ある程度熟達してから、それを違う領域に転移できるのではなく、むしろ転移が困難であることが明らかにされています。転移をうまく行なっている人は、熟達を待つのではなく、少し学んだらすぐにそれを転移させて使おうとします。そしてそれを何度もサイクルとして行なうことで進歩していきます。それが「熟達と転移のサイクル」です。
・コア概念を学び、応用する
たくさんの専門領域が成立し、増え続けています。一方で、そのすべてを学ぶための時間はありません。人々は自分の専門を決めた後には二度と使わない内容の学びに多くの時間を費やしています。そこで、それぞれの専門領域における基礎となるコア概念を学び、それをあらゆる領域にまたがって柔軟に応用していくことが必要とされる戦略です。これを「専門的アマチュアリズム」と呼びます。
特定の領域のコア概念がなんであるかは、その専門家が提示すべきものです。そしてその専門は、そのコア概念を中心として教えられるべきです。そうすれば、そのコア概念は特定の専門領域を飛び越えて、他の領域でも応用できる知識となります。
■どのコンテンツを追加すべきか
ルーチン化された業務はロボットやAIに取って代わられるような大きな社会変化の中で、教育の中でどのコンテンツを追加すべきかという問題があります(同時に何を削除すべきかという問題もあります)。以下のリストはこれからのカリキュラムに追加すべきコンテンツです。
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