レンタル・シェアリングサービスの経理・管理体制の構築について

はじめに

 家電・カメラのレンタルサービスRentioの管理部門を担当している小松です。参考までに弊社サイトはこちら。

 2019年、モノのレンタル・シェアリングサービスが伸びてきておりますが、裏側の管理や経理処理についての事例がなかなかなく苦労をしてきました。
そこで、これから挑戦される起業家や事務方の方々に向けて参考になればと思い、経理財務の視点でレンティオが運営しているレンタル・シェアリングサービスの裏側について共有していきたいと思います。
今回はレベニュー編です。

レベニュースキームのあれこれ

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 Rentioで提供しているレンタルサービスは上記5つのサービスで、さらには商品を新品とするか中古とするかでも条件が変わってきます。
(弊社のもらえるレンタルは新品を提供しています。)
なお、C2Cサービスやモール型のスキームもありますが、今回は自社が直接ユーザーへサービス提供するケースで記載しています。

 カメラなどの商品をサービス提供するにあたって、複数のレベニュー獲得方法があり、さらには日々変動する市場価格・商品の機能革新・ユーザーニーズ・自社の収益性・オーナーニーズを考慮する必要があります。そのうえで、最適な売り方や値決めを決定し、継続的に市場変化へ対応した売り方をアジャストしていく必要があります。
 レンタルサービスは、オペレーションが非常に複雑かつ重要なものととらえており、それ次第でビジネスの成長確度が大きく変わる奥の深いビジネスだと考えています。そのため、(詳細はお伝え出来ませんが)オペレーションシステムの開発に継続的に取り組んでおります。

売上計上方法について

 ざっくり言うとレンタルサービスの提供完了=契約終了をもって売上確定とします。また、サブスクリプション型の場合は、決算時に日割りによるカットオフも行っています。
 実務的にはレンタル商品の延長や消耗品(チェキのフィルムやブラーバのモップ等)を使いきれなかった時の減額、気に入った商品をその場で購入など、商品が返却or買取完了するまで売上は確定できません。
これらの個別取引情報をタイムリーかつ正確に管理し、そのうえで決済連携、会計処理、債権入金確認までシームレスに経理オペレーションが出来なければいけません。
 この一連の流れを実現するためには、市販のパッケージソフトでは対応が難しく(できたとしてもオペレーション負担が大きいため)、弊社の場合は、オペレーションシステムをすべて自社で開発しております。

レベニューシェアスキームについて

 モノのレンタル・シェアリングサービスが成長するにあたっての大きな課題は、成長するために多額の在庫投資が必要だということです。そして、その数千~数万点の在庫1つ1つをメンテナンス(品質)しつつ、タイムリーなステータス管理(稼働率)と収支管理をしていかなければなりません。

 在庫投資負担対策の観点から、メーカー等のオーナーから在庫を預り、ユーザーからの収益をメーカーと自社で分け合うレベニューシェアスキームを採用するのは有効な手です。
 ただ、いいことばかりではなく、メーカーや金融機関の在庫を預かる場合は、グローバルな上場企業や金融機関の内部統制や在庫管理ポリシー、情報セキュリティポリシーに耐えうる経理・管理体制を構築する必要があり、かつ、メーカーがわざわざ在庫をベンチャーに預けるという面倒なことをしたくなるベネフィットが求められます。
 また、個人からお預かりする場合も、不特定多数の方から商品をお預かりするため、さらにコミュニケーションコストが生じます。
どちらを選択するにしても高度な管理レベルが要求されるため、オペレーションシステムと管理体制の構築を進めていかなければなりません。(間接的にではありますが、監査法人監査対応を求められる場合もあり) 

レベニューシェアのGMVと売上の関係について

 契約内容によるところもありますが、シンプルに整理していくとユーザーが支払うレンタル料金と自社の売上に乖離が生じます。
 例えば、カメラを1万円でレンタルし、メーカーと50%で折半した場合、
GMV(ユーザーからの入金)1万円に対して、自社の売上5千円、メーカーへの債務5千円となり、損益計算書上の売上が半分になってしまいます。
 よって、レベニューシェアスキームを採用している企業の場合、単純に売上のグロースを追うだけではミスリードとなる可能性があり、GMVの伸びで評価しなければ事業の成長実態が把握できないと考えております。

売掛債権の回収について

 ワンショットレンタルや小売の場合は、債権の回収不能リスクは少ないですが、サブスクリプション型の場合、盗難などの様々な理由で資金を回収できない時があります。
 例えば、クレジットカードの期限切れや銀行振込の支払い忘れなど、悪意のない回収不能案件や盗難案件が無視できないほどの割合で発生します。
 そして、毎月数千~数十万件発生する課金の回収状況を確認し、追いかけていくには人の手だけで管理することは絶対不可能で、こちらにもオペレーションシステムを構築する必要が出てきます。

最後に

 売上管理だけでも様々な課題がありますが、モノのレンタル・シェアリングサービスを急速にスケールさせるためには、成長に耐えうる財務スキームの構築と、在庫リスクを最小化する手をしっかり打っていく必要があります。
 例えば、弊社ではソニーマーケティング様と協業して、aiboのレンタルサービスを行っておりますが、もし、100匹お迎えした場合3,000万円ほど必要になります。

 キラーコンテンツが生まれダイナミックな投資フェーズに入ると、一気に資金需要が高まり財務担当者が悲鳴を上げることになります笑。実際、たまに悲鳴上げています。次回以降は、事業の成長に応じた在庫管理や収益性分析を中心とした管理会計についてもアップをしていきたいと思います。

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