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フードデザイン作品集|フードデザインをよりよく知るための本

はじめに

前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。
 今回はフードデザインの作品やプロジェクトを掲載する書籍を取り上げます。1冊目と2冊目はすでに世にある食に関する製品やパッケージ、空間の中でどのようにデザインが活かされているのか?という視点から、結果としてのフードデザインの姿が描かれています。その後、フードデザインの考え方に従って取り組まれたプロジェクトや、その成果物としての作品やコンセプトモデルなどが取り上げられるようになっていきます。つまり、行為としてのフードデザインが浮かび上がるのです。さらにはSPACE10のようなリサーチ機関が、持続可能な食を実現するために新しい食材を使うけど、それを美味しく食べるためにデザインした料理のレシピ本などに発展していきます。


選書〈フードデザイン作品集〉

いかに美味しそうに料理の写真を撮るか、いかに美しくお皿に盛り付けるか、彩りの良い組み合わせは何か、素敵な食品のパッケージデザインは何か、といったクラシックなDESIGNの視点から語られる本は国内にたくさんありますが、いかに未来の食を考えられるか?といった視点を提供してくれる書籍は少ないのではないでしょうか。そういった意味で非常に示唆的な内容で、視座を一気に高めてくれる強力なツールになると思います。

Food Design

Paco Asensio
2006/01/30
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Food Design

・事例集
・パッケージ、調理器具、カトラリーなどのクラシックなデザインを取り扱う
・食事や食生活を彩るためのデザインに焦点が当たっている

the time has finally come for giving food design the consideration it deserves.

フードデザインをそれ相応のものとして考慮すべき時がついに来た。

p.7

Who said everything in the realm of gastronomy had been invented ever since Leonardo da Vinci added a third prong to the fork?

レオナルド・ダ・ヴィンチがフォークに3本目の歯を追加して以降、美食の世界に新たな発明はないと誰が言ったのか?

p.7

Tapas. Spanish Design for Food

Juli Capella, Ferran Adrià, Pau Arenós
2014/01/14
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Tapas. Spanish Design for Food

・論考集、作品集、事例集
・スペインの食業界の歴史や特長を解説
・スペインから発信される家電や食器、空間、食品、ボトルラベルのデザイン事例を紹介

Are plates for serving food or is the food at the service of the plates?

皿は料理を盛るためのものなのか、それとも料理は皿のために存在するのか?

p.212

without their [the customers] participation the work of the cook and the designer is fruitless. The efforts of both of them only make sense if there is a receptive third party.

彼ら(顧客)の参加がなければ、料理人とデザイナーの努力は無駄になる。受け入れる第三者が存在する場合にのみ、両者の努力は意味を持つ。

p.212

Grandma's Design: Food Inspires Design

Hilde Brepoels et al.
2014/04/30
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Grandma's Design: Food Inspires Design

・作品集、レシピブック
・グランマたちのレシピにヒントを得て、各国のデザイナーがそれにまつわるプロダクトや空間、新たな料理を作成したプロジェクトの成果を掲載
・Food Designをリードする人たち主催としては、おそらく初のコンペに基づく内容

baking recipes … possess a strong emotional value: baking is related to the ‘home’, to happy moments, celebrations and special occasions.

焼き菓子のレシピには、深い感情的価値がある。焼き菓子作りは「家庭」や幸せなとき、お祝い、特別な日と結びつく。

p.4

The In Vitro Meat Cook Book

Koert van Mensvoort, Hendrik-Jan Grievink
2014/10/21
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The In Vitro Meat Cook Book

・作品集
・細胞培養肉のありうる製品の姿をシェフやデザイナー、アーティストらが想像した
・魅力的なビジュアライズによって望ましい未来に向かうための議論を促す

Our aim is not to promote lab-grown meat, nor to predict the future, but to visualize a wide range of possible new dishes and food cultures to help us decide what future we actually want.

目的は、細胞培養肉の普及や未来予測ではない。真に望ましい未来を決定するために、新しい料理や食文化の幅広い可能性を視覚化することだ。

p.7

Imagination is crucial when it comes to redirections of desire and morality

欲望や道徳の転換において、想像力は極めて重要である。

p.86

Experimental Eating

Tom Howells
2015/02/17
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Experimental Eating

・作品集、論考集
・アート、デザイン、サイエンス、社会政治的コミュニティをまたぐ、食を基盤とした実践を調査
・Origins/Preparation/Dinner/Leftoverという4つの章を通じて、50以上の作品やプロジェクトを紹介

(Art = Life) + Food = Experimental Eating

"Art is a sensory experience, and experimental eating adds layers of smell, taste and texture to the visual stimulation that still dominate contemporary art practice."

「アートは感覚的な体験であり、実験的な食事は、現代のアート実践を支配する視覚的な刺激に、匂い、味、触感という新たな要素を加える。」

p.10

There are at least three approaches to asking "What if?" in relation to food: diegetic, figurative and realist.

食に関する「もしも?」の問いには、物語的、比喩的、現実主義的の、少なくとも3つのアプローチがある。

p.21

Food Futures: Sensory Explorations in Food Design

Gemma Warriner, Kate Sweetapple
2017/05/23
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Food Futures: Sensory Explorations in Food Design

・作品集
・食の感じ方の可能性を探る、実験的あるいは革新的な作品やプロジェクトを取り上げる
・新たな技術や可能性のある技術を活用して、何をどう食べられるのか?を思索している

Through the critical lens of design, there is the opportunity to transform consumption into a more satisfying experience

デザインの批評的な視点を通じることで、消費をより満足度の高い体験へと変革する機会が見える。

p.3

Food is also a compelling vehicle for designers to discuss thorny questions about our contemporary times and the ethics of the future.

食は、デザイナーが現代の難問や未来の倫理について議論する際の、強力な手段でもある。

p.3

Future Food Today: A cookbook by SPACE10

SPACE10
2019/08/27
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Future Food Today: A cookbook by SPACE10

・レシピブック
・SPACE10が考案した持続可能な食のレシピ集
・人間も地球も健康的な状態を目指すために、藻類や昆虫をおいしく食べる方法を提案する
・地産地消の文脈で、きのこ栽培やマイクロ野菜、スピルリナの栽培キット作成方法も紹介

Rekindling our basic human desire to cook and feed ourselves is the first step in bringing people closer to one another and the planet.

自ら料理し、自らを養うという基本的な人間の欲求を再燃させることは、人々を互いに、そして地球に近づける第一歩である。

p.5

the act of eating together satisfies our cravings for both delicious experiences and human interaction.

共に食事をする行為は、美味しい経験と人との交流の両方の欲求を満たす。

p.78

Food Design Voices 2022: Insights from the designers, researchers, and chefs who make the Food Design discipline.

Francesca Zampollo
2022/07/28
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Food Design Voices 2022: Insights from the designers, researchers, and chefs who make the Food Design discipline.

・論考集、事例集
・2022時点でフードデザインに携わる世界中の人々を取り上げる
・86の異なる活動やビジョン、フードデザインの定義を掲載

What is the relevance of Food Design in the current global situation?
What is your approach to sustainable Food Design?
What is Food Design today?

現在の世界情勢におけるフードデザインの関連性は?
持続可能なフードデザインに対するあなたのアプローチは?
いまのフードデザインとは?

p.12

Food Design can have the biggest - potential - impact on the health of this planet and all its inhabitants.

フードデザインは、地球とそのすべての生命の健康に、最も大きな(潜在的な)影響をもたらす可能性がある。

p.12

The Anthropocene Cookbook: Recipes and Opportunities for Future Catastrophes

Zane Cerpina, Stahl Stenslie
2022/10/18
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The Anthropocene Cookbook: Recipes and Opportunities for Future Catastrophes

・論考集、作品集
・60以上のプロジェクトを通じて、人新世を生き抜くための創造的なアイデアを提供する
・現状の食習慣に固執せず、新たな食の扉を開くために、アートの文脈からありうる食を問いかける

liminal aesthetics: the aesthetics produced and experienced in the transitory phase as we move through ambiguous and uncertain times.

過渡期の美学:私たちが曖昧で不確かな時代を通過する中で生まれ、体験される美学。

p.4

art is food for thought but can also be a way of stirring up the palate in the real world.

アートは思考を触発すると同時に、現実世界での感覚を喚起するものでもある。

p.195

以上が代表的な作品集の紹介でした。これらのうちいくつかはウェブサイトやinstagramで作品自体を閲覧可能なので、本を買う前にチェックしてみるのもおすすめです。次回は、フードデザインに関連する(と考えている)様々な事例について紹介したいと思います。

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こうした内容を『フードデザイン:未来の食を探るデザインリサーチ』(BNN、2022)の中でも取り扱っています。この分野の変遷や周辺領域との関連性などを時間軸に沿ってまとめましたので、よろしければそちらもご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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本記事中で引用した文献はDeepLを用いて翻訳し、ChatGPTを用いて修正したものとなります。致命的な誤訳等ございましたら、ご指摘いただけると幸いです。また、記事は執筆時点での情報をもとに書いたため、最新情報であるとは限らないことをご承知ください。さらに、本記事の内容は私見によるものであり、必ずしも所属企業の立場や戦略、意見を代表するものではありません。

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