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フードデザイナー第2世代|フードデザインをよりよく知るための本

はじめに

前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。
 デザイン文脈におけるフードデザインは基本的にヨーロッパを中心に広がっているため、第1世代のデザイナーたちはオランダやスペインなどで活動する人々に限定されていました。
 しかし、2010年以降に活躍し始める第2世代のフードデザイナーたちは、欧州のみならず、南米や台湾などを拠点にして活動しています。今回紹介するうちのひと組 UOVO Food Design Studioの設立者 Amber Chanは、台湾で体験デザインやサービス開発を提供しつつ、フードデザインの教育的活動も展開してきました。彼女たちはもうすぐ公開される「Food & Design」というドキュメンタリーにも出演しています。


選書〈フードデザイナー第2世代〉

とはいえ、まだまだ書籍として出版されたものは多くはないのが現状です。なので、今回紹介するうちの初めの二つについては、第1世代との変化が注目すべき点でもあるなと考えています。コンセプトと産業や技術が結びついた、より具体的なアウトプットに変わってきています。その背景には、気候危機の重要度や、技術へのアクセス可能性の変化が関係していると考えられます。
 もう一つの『食物設計 Design Beyond Food』は、フードデザインについて網羅的に扱った内容になので、ある意味では第1世代と第2世代のフードデザインを俯瞰できるものになっていると思います(中国語なので読むのに少し工夫がいりますが)。第2世代のフードデザイナーにどんな人々がいるのか?を知るという意味では、また別の記事でも紹介する「Food Design Voices 2022」がおすすめです。
(*本記事では書籍の発行日順に並べています。)

The Sausage of the Future

Carolien Niebling
2018/02/27
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The Sausage of the Future

・古くから人間がデザインしてきた食品の一つであるソーセージに着目
・動物性タンパク質の不足する未来を想定して、ありうる形を提案
・事実上、既存の精肉店が実践すればありうる未来への移行が可能

But if it is edible, delicious and nutritious, why won't we eat it?

それが食べられるもので、美味しく、栄養が豊富なら、食べない理由はないのでは?

p.147

The future sausage is a metaphor for the possibilities that lie ahead; it should revive creativity and curiosity in our eating habits. Let us not be wary of food, but explore and appreciate it instead.

フューチャー・ソーセージは、前方に広がる可能性のメタファーであり、私たちの食習慣における創造性と好奇心を再燃させる。食べ物に対して慎重になるのではなく、探求し、味わおう。

p.147

Food Futures: How Design and Technology can Reshape our Food System

Chloe Rutzerveld
2019/04/16
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Food Futures: How Design and Technology can Reshape our Food System

・作品集
・テクノロジーをキーワードに、ありうる未来の食をリサーチに基づいて提示する
・スペキュラティヴ・デザインの文脈

By daring to look ahead and envision alternative futures, we can gain new perspective on what we eat, why we do it, and what we may (or may not) eat in the future!

先を見据え、異なる未来を想像してみることで、私たちは何を食べるのか、なぜ食べるのか、そして将来私たちが食べる(あるいは食べない)ものについての新しい視点を得ることができる!

p.10

A symbiosis between technology and nature. Proof that high-tech food needn't necessarily be artificial and unnatural; instead technology could support natural growth and bring about exciting, sustainable food innovations.

テクノロジーと自然との相乗効果。ハイテク食品が必ずしも人工的で不自然であるわけではないことの証明。むしろ、テクノロジーは自然の成長を後押しし、新しくて持続可能な食の革新を生み出す可能性がある。

p.16

食物設計 Design Beyond Food

詹慧珍, 黃若潔, UOVO Food Design Studio
2023/09/05
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食物設計 Design Beyond Food

・フードデザインについて網羅的に学べる
・重要人物へのインタビューを掲載
・フードデザイナーとして活動するための方法論を紹介

我們希望讓你知道, 食物設計不單只是關注盤子内食物與人的飲食行爲, 也包含盤子外任何心理性、知識性、精神性、社會性、批判性、實驗性、推測性、永續性等舉凡能增進我們與食物之間的行爲與活動, 橫跨感官、經濟、心理、空間、包裝、科技、環境、系統、 藝術、教育等不同面向, 皆爲食物設計的範疇。

フードデザインは、皿の上での食事や人々の食行動だけに関わるわけではない。それは、私たちと食べ物との関係を深化するための多様な行動や活動、心理的、知的、精神的、社会的、批評的、実験的、思索的、持続可能な側面も含んでいる。さらに、感覚、経済、心理、空間、パッケージング、技術、環境、システム、芸術、教育など、多くの異なる次元が関与している。これらすべてがフードデザインの範疇に含まれるということを伝えたい。

p.9

既然食物是每個人每天都能體驗的創作過程, 食物設計的重要性便在於並非具有一定專業知識和經濟能力的人才能討論、參與、享有, 反而是更開放、包容、民主, 得以讓每個人都有機會直接或間接以食物爲載體進行對話交流、思考創作、解決問題。

食は日常的に誰もが体験できる創造的なプロセスであるため、フードデザインの重要性は、特定の専門知識や経済力を持つ人々だけが参加できるものではない、という点にある。それどころか、フードデザインはよりオープンで、包摂性があり、民主的なプロセスだ。これにより、誰もが対話や意見交換に参加でき、自らの創造について考えたり、食べものを媒体として問題を直接的または間接的に解決する機会が広がる。

p.11

以上、フードデザイン第1世代の影響を受け、それを発展させてきた第2世代のデザイナーたちによる書籍を紹介しました。次回は、フードデザインをさまざまな切り口で扱った展覧会のカタログを紹介してみます。

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こうした内容を『フードデザイン:未来の食を探るデザインリサーチ』(BNN、2022)の中でも取り扱っています。この分野の変遷や周辺領域との関連性などを時間軸に沿ってまとめましたので、よろしければそちらもご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
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本記事中で引用した文献はDeepLを用いて翻訳し、ChatGPTを用いて修正したものとなります。致命的な誤訳等ございましたら、ご指摘いただけると幸いです。また、記事は執筆時点での情報をもとに書いたため、最新情報であるとは限らないことをご承知ください。さらに、本記事の内容は私見によるものであり、必ずしも所属企業の立場や戦略、意見を代表するものではありません。

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