見出し画像

【娯楽の塵】スポーツドリンクの類

清涼飲料水用アルミニウム缶(スポーツドリンク)
 
推定投棄日 1988年ある日

1988年
テレビアニメ「それいけ!アンパンマン」放送開始

食べ物が向こうからやってきたらいいのに

Wikipedia 「アンパンマン」アンパンマンと正義より

 何故だか、泣ける言葉だと思った。戦争を知らず、何でも足りている時代に生まれて、有り過ぎる時代を生きている自分の人生の中で「食べ物が向こうからやってきたらいいのに」と思った事は有り難いことに一度も無い。そんな人間が、アンパンマンの原作者が本当に食べるのに困って吐露した言葉のどこをとって「泣ける」と感じているのだろう。

 「泣ける」だから他人事なのだ。自分には事実として降りかかって来ることでは無いと余裕綽々として、可愛そうだなあと、当人の心境に近づいた気になって良い人ぶった気持ちを作っただけだろうか。

 少し違う。もっとそれは「アンパンマン」というお腹が空いて困っている人をあんぱんを与えて救う「正義の味方」の存在が大きく関わっている。そんなヒーローを描いた作者の言葉だったからだと思う。困っていたら何処からともなく現れて助けてくれる。過去も未来も現代も困った人は溢れていて、その誰もが「〜ならいいのに」と心の底で憔悴した気持ちを抱えている。其々の正義の味方の登場を本当に願っている。だから泣ける。願ってもそうそう叶わない事を知っているから。けれど希望は捨てないのだ。勇気も捨てないのだ。いつかアンパンマンが助けてくれるかもしれないから。何処かで誰かがアンパンマンに助けられているから。そんな非情の中にあっても今一度呼び起こされる期待の情を思って泣ける。 

 想像する
娯楽の塵を前に途方に暮れていたらアンパンマンが空から降りて来た。私の目をしっかりと見てこう言った。「君は大丈夫。だから頑張って。でもお腹が空いてどうしようも無い時は僕が真っ先に助けに来るから。」それでまた空に帰って行った。あっという間に見えなくなった。それで何だか気が楽になって、食べていけるのだから頑張ろうと思った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?