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古賀慎一郎
2022年12月18日 10:54
「裸の心」の旋律に乗せ、私のちあきなおみへの恋心は、現在と過去の地平を彷徨っていたようであるが、しかしそれはほんの一瞬の夢であったようにも感じた。 ふと我に返り視界がクリアになると、頭上からのサスペンションライトだけがあいみょんを白み染めて射ち、ステージ上の淡い光の円の中、闇夜の霞におぼろげに浮かぶ花のように、抑え難き溢れる想いを自らの恋で彩る歌手がそこにいた。その、微かに眼で捉えることのできる
2022年12月11日 10:18
「おい、はじまるぞ」 空席を隔てて横にいたゴッド(友人)が、私を促すように声を掛けてきた。 日本ガイシホールに集う観客は、皆一様に、それぞれの世界をあいみょんと構築しているように見受けられた。その歌には、聴き手が埋めるべく空白が十分に残されている。この歌手も、自らが自らに与えた歌詞やメロディには収まらない呪術師であろう。 「裸の心」のピアノイントロが流れていた。 馴染みの喫茶店でこの歌を
2022年11月23日 10:30
二〇二〇(令和二)年十二月九日夕刻、私とゴッド(友人)の目的地である日本ガイシホールには、歌あるほうへと、静かにオーディエンスが集まってきていた。その光景を目にすると、コロナ渦にあるこのご時世、言いようのない想いが込み上げてくるような気がした。 日本ガイシホールは、プロスポーツ興行をはじめ、国内外のアーティストのコンサート、商品展示会などが開催される、名古屋最大の体育館である。収容人数は一万
2022年7月6日 17:45
窓の外の景色が変わり、見慣れた風景が目の前にもどってきた。コロナ禍の影響で、通常より一時間早く閉店となる店内をそそくさと後にするOLたちを眺めやり、私はベストのポケットから機械式の懐中時計を取り出して、ちょっと時間を気にした。 否でも応でもデジタル時代に対応していかなければならない昨今、敢えて逆行し、携帯電話の時計機能はおろか腕時計さえとおり過ぎてアナログ化してゆく私は、天下一のひねくれものと