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真夏の鬱と川の治安_サンクスギビング


朝早起きして家族と山間の川へ行く。
まだ人が少ない川に入って体を冷やすより石投げに夢中になった夫と息子が小さく視界に入る中、私は緩やかな流れに足を突っ込んで本を読む。冷たい。最高。

なんて高尚で優雅な休日なんだ。
夏の連休前の週末、ちょっとだけ鬱々とした気持ちが川の流れと一緒に流れていったような気がした。


先日、私は40歳にして真夏の2、3週間は毎年気が落ちていることに気がついた。
真冬生まれだからか?
日記を遡るとここ5年間はそうで、暫くして急に元気になっている。
今期のピークは先週、通勤中にたまたま流れてきたチューリップの「私の小さな人生」という曲を聴いて号泣した。うーん末期。

だから映画館にも行けなかった。撮り溜めた録画かネトフリを観ようとしてもダメで
あんだけ観るのを楽しみにしていたファーストカウでさえも途中でやめてしまった。
普段家鑑賞は中断ありきで観てるけど、集中力、ストーリーの理解努力も、鑑賞努力も起きない。これはとってもファーストカウに失礼だなあと思ってやめた。
全ては私のせい。


翌朝早起きして川へ涼みに行こう!と夫が提案した夜。
少しでも気分を上げなきゃと夜中観始めたのが「サンクスギビング」なのでした。


いやあ、バーっと最後まで観れちゃった。やっぱいいね。

映画グラインドハウス本編中の予告を元に作られた作品なんだと。
正直マチェーテの印象が強くて忘れていたなあ。


ウェーイ系のグループに属しているのが謎な南米系の美しいヒロイン、サンクスギビングという私にとってなんの思い入れもない祝日、行かないコストコ系の馬鹿でかいスーパーでありえない暴動、殺傷事件。
何から何まで私が未経験、未踏の外国の文化になぞったストーリー。

ヒロイン以外誰にも感情移入しない(ていうかヒロインにもそこまで同情しない)
だからこそ気楽に観れて楽しい。

冷凍庫にくっつくとか、オーブンとか、なんだか身近でシンプルに「嫌だなあ・・・」ってなりながらも、サクサクとシーンが変わるので胸焼けしないのね、死にゆくテンポが最高。あとブリンブリンの内臓もね。

殺人鬼の動きもまた無駄な速さや怪力さが無く、観る側に余裕を持たせてくれるのも良い。一応復讐劇なんだが浅いのよ。浅い。登場人物皆浅いの。


観終えると、なんか妙にスッキリしていた。
明日朝早いけど、ああ、私大丈夫だわって。今年の鬱、乗り切りました。

私の精神回復にはゴア描写のあるホラー映画がいいのかもしれない。今ならテリファー観れるかも。


私たちが川に到着した時、すでに黒いラッシュガードを着た男性が大半を占めている集団が川近くの木陰の一等地で和気藹々とバーベキューの準備をしていた。

手分けしてタープを建てて、火を用意し、食材を広げ、スイカを川で冷やす。

たまに数人川へ足をつけ、予想以上に冷たいとキャッキャしている。
誰よりも早く到着し一等地を陣取り、定刻に向けて準備をしているようで、特段変なことはしていない。

だけど黒いラッシュガードの集団というだけで明らかにカタギじゃない感がビシビシ周囲に伝わっていた・・・


ラッシュガードは彼らなりの気遣いだろう。だがそんな彼らのラッシュガード下から滲み出るオーラのおかげか、人が増えても治安が守られていた。

馬鹿騒ぎし始めた男の子グループも、敢えて見せびらかしにきた「半分」の人たちも、スロープのど真ん中に簡易テントを張った空気読めないファミリーも。到着した時は目立っていたが、暫くすると大勢に馴染んだ。


すごいよ、なんもしてないのに。

定刻になったようで、乾杯の声とともに焼いた肉の匂いが香ってくる。お腹すいたー。
先ほどまでせっせと準備をしていた二人のおじさんも私から少し離れたへりに座り川に太ももまで浸かりながらビールを飲み始めた。
若い衆の一人がぷかぷか目の前を流れてきて「気持ちいいっすよー一緒にどうっすかー?」と言われており「中年2人がはしゃぐのみっともないだろ」とおじさんガハハと笑って答えてた。
おっさんらよ。若い衆来る前に、川入ってキャッキャしてたじゃん。

もし昨夜サンクスギビングを観なかったら、川にラッシュガード集団がいなかったら。

私の精神衛生は、殺人鬼とラッシュガード集団に守られた。

足が冷え切って、温かい地面に足を伸ばす、贅沢な気分だ。
真冬にこたつでアイスを食べるような。そんな贅沢な気分。

「映え」シーンも多かったように思う。

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