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First memory(Hinata)03

             ーーまったくこの子は……。
 
 自然と笑みがこぼれていたことに気づかなかった、私は時間を忘れていつの間にか話し込んでいた。
 彼女のくるくると変わる表情は見ていて飽きなかったし。ずっと見ていたいそう思えたから。

 だから私たちは、外の天気が変わっていることにも気づかなかった。

「ねぇ、どうして、あなたはそこまで私に固執するの?」
 ある程度話し終えた頃、ふと私は彼女に訪ねてみた。こんな私に何故彼女は興味を持ったのだろうか。
「ヒナタちゃんと友達になりたいから!!」
 彼女は、曇りのない瞳でそう答えた。
「どうして、私なの?」
「だって……ヒナタちゃん、昔の私みたいな、寂しそうな目をしてたから……」

 私が、寂しそう?

 どうしてだろうか、彼女の言葉に反論することができなかった。寂しいなんて思ってなかったはずなのに……。

 私は、いつも一人でいても平気だったはずなのに……。

「あのね、ヒナタちゃん。一人でいるのはみんな寂しいんだよ。どんなに強い人でもすごい人でも一人はすごく寂しいんだよ」
「違う!! 私は、別に寂しくなんか!!!」
 彼女の言葉を否定したかった。だって、それを認めてしまえば私は……。
「でもね、一人じゃなければ全然寂しくないんだよ。一人じゃなくて二人になれば寂しいって思わないんだよ」
 すっと、彼女の右手が私に差し出された。小さな手のはずなのに私にはとても大きく見えた。
「ヒナタちゃん、私と友達になってくれない?」
 私は迷っていた。そんな不安定な私の心を貫くような大きな雷が外で鳴った。
「キャッ!!」
 私は思わず、悲鳴を上げ。小さくうずくまった。
「大丈夫。ヒナタちゃんは一人じゃないよ」
 彼女は、包み込むようにぎゅっと私を抱きしめた。だが、彼女の体も小さく恐怖からか震えている。
「大丈夫。大丈夫だから」
 彼女は、私に何度も何度も優しく言い聞かせてくれた。その時の言葉は今でもはっきりと思い出せる。
「ヤチヨ!!」
 震えていた私たちを見つけた二人の男子生徒が駆け寄ってきた。一人は赤髪で燃えるような赤い瞳の少年。もう一人は黒髪で透き通った灰色の瞳の少年だった。
「サロス、フィリア。なんで?今日は先に帰ってって言ったのに!」
 彼女が驚きの声をあげる。
「ばーか、傘も持ってないやつを放っておいて帰るほど俺たちは薄情じゃねぇつーの」
「大丈夫か?ヤチヨ。んっ?君は?」
 フィリアと呼ばれていた灰色の瞳の少年が私の存在に気づき声をかけてきた。
「あっ、私は――」
「とにかく、ここから出ようぜ。フィリアが傘を何本か調達してきてくれたからよ」
「いや、この大雨だ。しばらくここで雨宿りをする方がいい」
 サロスと呼ばれた少年が走りだそうとするのを、フィリア君が肩を掴んで止める。
「なっ、でも!!」
「ヤチヨもその彼女も怖くて震えているんだ。サロス」
 フィリア君の言葉をうけて、サロス君は肩に置かれた手をどけると一つ力を抜くように息を吐いた。
「……わかったよ。俺、他に誰か残ってないか探してくる」
「気をつけろよ。サロス」
「わかってる」
 そう言って、サロス君は資料室を飛び出し暗い廊下を走っていった。


――続く――

作:小泉太良

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声プラのもう一つの作品
双校の剣、戦禍の盾、神託の命。」もどうぞご覧ください。
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