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Fifth memory (Philia) 05

「あぁフィリアか、父さん、また呼ばれてしまってな」
「お仕事?」
「悪いな。フィリア……」

 家を出ようとした父さんの背中に向けて僕は、思いっきり声を振り絞った。

「きょ、今日ね!! 僕、友達と遊んだんだ!!」
 
 父さんの動きが一瞬だけ止まり、なんとなく嬉しそうな声色のように聞こえた。

「……そうか。話なら帰ってーー」
「サニーゲームって遊びをしたんだ!!」

 その瞬間に父さんの動きが完全に止まり、ゆっくりと僕へと振り向く。

「……フィリア、お前、今、なんてーー」
「御守役と、守護役と、悪者に分かれて遊ぶんだけど!!」
「!!!!!」
 
  話を聞いていた父さんが驚いた顔で僕を見つめる。
 この時、僕はようやく父さんが僕の話を聞いてくれたのだと嬉しかった。

  だけど、次の瞬間にはそうじゃない事ということを悟る。

「その……御守役を守護役が守って、それを悪者が邪魔するっていうーー」
「フィリア!! お前は、それを誰から聞いたんだ!?」
「えっ?」
「誰から、聞いたと聞いてるんだ!!」
 
 その時、父さんの顔がすごく怖かったのを覚えている。

「どうしたんですか? そんなに大きな声を出して!!」

 母さんが慌てて奥から出てきたことで僕は安心して泣きだしてしまい、そんな僕を母さんは抱きしめてくれた。

「何があったんですか? あなたがこんな風にフィリアを叱るなんて……」
「……フィリア、二度とそのサニーゲームという遊びはするな……」

 父さんはそれだけ言うと、僕に背を向け、家を出て行った。

「フィリア、何があったの?」
「……父さんに、今日、友達とサニーゲームって遊びをしたって言っただけなのに……」
「!? サニーゲームを、したの? フィリア」
「うんっ、あのね……」

 僕は、母さんにサロスに教えてもらって行ったサニーゲームの詳細を事細かに話す。すると、母さんは難しい顔をして後、何かを決意したように僕の目を真っすぐ見つめてこう言った。

「フィリア、これから話すことは少し難しいお話かも知れないけど、ちゃんと聞くのよ」
「何を?」
「……守人というお仕事についてのお話よ」

 守人、今の自警団の基となった、天蓋を守る人たちがいたこと。
けど、それは過去の話ではなく、今も尚続いているということ。
 
 一定の周期で何らかの基準によって選ばれた【選人】を天蓋の中へと連れて行く必要があるという事。

 中がどうなっているのかはわからないけど、選人になった役目を果たすために長い時間をそこで過ごさなければならない事。

 天蓋の中は時間が完全に止まっていて、役目を終え、天蓋から出てきた人が入る前と、周りの景色が変わってしまったという記述もあったらしい。
自分以外の時間がそのまま進み続けるということでも起きていたのだろう。

 そうして選人に選ばれた人をどうにかして天蓋から助け出そうと、侵入しようとする選人の家族や恋人、関係者から天蓋を守る、それが自警団の……守人の本来の仕事なのだそうだ……。

「もう少しフィリアが大きくなった時に話すつもりではあったけど、ナールより先に話すことになるとは思っていなかったわ」
「……」
「フィリア、約束して、もう二度とサニーゲームはしないって」
「……うんっ、約束する」
「そう、良い子ねフィリアは」

 母さんは、そう言って僕の頭を優しく撫でてくれた。


続く

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