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21 響き渡る声の男

「オウ! ゼア! こんなところにいたのか!! あまりに遅いから会長も心配してるぞ!!」

距離感がおかしいのではないかというような大柄な体躯の男子生徒が二人に声をかけてきた。

「あ、ガレオンさん、すいません。ついつい話しながら向かってしまって時間がかかりました」
「ハハハ、オレは構わねぇけどな。ま、同じ剣使いで英雄の孫が相手ってんじゃあ聞きたい話も山のようにあるわなぁ!!!」
「えと、ゼア。このなんか色々とデカい人は?」
「ああ、この方はガレオン・ラウドさん。エナリア会長の現生徒会体制内のメンバーの一人だ」
「ほぉ、オマエがシュレイドか、なんだなんだ? もやしみたいな身体だなぁ。そんなんで本当にエナリア会長を負かしたってのか?」
「エナリア会長のほうが俺より細いんだし、俺が勝っても不思議はないと思いますが」
「そりゃあ言われてみれば確かに!! ハハハ! 面白い奴だなオマエ」

 ガレオンと呼ばれた男はバカでかい声で大笑いする。周りの生徒は何事かと振り向くが、既に周知の事なのだろう。ガレオンの姿を一瞥した後、何事もなかった視線を戻していく。

「これ以上、会長を待たせるわけにはいかないね」
 ゼアが話すとガレオンはまた大きな声で反応している。
「アア!? そうだった、迎えに来たオレまで一緒に叱られちまうぜ!!!!! ほら、こい、こっちだ」

グイっと太い腕を曲げ、向かう方向を親指で指さして再びバカでかい声でそう言うや否や歩き出した。

「な、なぁ。あの人、いつもこんな感じなのか?」
「ああ、そうだね。こんな感じ。あ、単騎での戦闘能力ならエナリア会長よりも上だって話だよ。ガレオンさんは」
「確かにパワーありそうだけど」
「見た目でやっぱりそう思うだろ? けどあの身体の大きさでパワーだけじゃないっていうのがガレオンさんの凄い所なんだ」
「あの体格で素早いとか普通に考えれば反則だもんな。武器は斧とかこん棒ってとこか?」
「基本は拳だね」
「へぇ、ミレディアと一緒だな。でも剣よりも更に相手が距離を取れ訳だし近接格闘だと戦いにくいもんじゃないのか?」
「うーん、まぁ、多少の攻撃の被弾は覚悟の上らしいよ。それにガレオンさんが武器を使うと軒並みぶっ壊しちゃうから並みの強度の武器は寧ろ邪魔なんだって本人が言ってた」
「へ、へぇ~」
「唯一、使う事があるのは商店・娯楽区画で小さな鍛冶屋をしている生徒に頼んで作ってもらった特注の斧らしいけど、これも使う必要がある強い相手の時にしか使わない」
「そうなのか、色んな人がいるんだな」
「シュレイド。君もガレオンさんと戦ってみたいのかい?」
「うーん、まぁ興味はある、かな」

 ガレオンにも聞こえていたのか大きく振り返りガレオンはシュレイドを見つめる

「んー、その目ん玉に気合が入ることがあればやるのはやぶさかではないが、今のお前とは、戦う価値がねぇからお断りだな」
「価値がないとはどういう事ですか?」

 シュレイドは気になって尋ねた。ここ最近感じている事、そして、ゼアに言われたことにも繋がるような気がしたからだ。
 ガレオンはシュレイドの瞳をのぞき込んで考え込む。その質問がどうやら真剣であることを感じてくれたようではあるが自分が答えるべきかどうかを判断しかねている様子だ、少し間をおいてから口を開いた

「とりあえず、まずはエナリア会長の話が先だ。さ、これ以上は待たせられん。急ぐぞ二人とも」
「「はい」」





続く

作 新野創
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