トランジションの時代に働くということ —共創ワークショップ「みらいのしごと after 50」(5)
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トランジションの時代に働くということ —共創ワークショップ「みらいのしごと after 50」(5)

KOEL Design Studio by NTT Communications

こんにちは、KOEL 田中友美子です。

前回は、共創ワークショップ「みらいのしごと after 50」で集めた情報を持ち帰ってどんなことを考えたのか、リサーチからみえた社会の変化について書き、最後に「みらいのしごと after 50」というお題に引っ張られ、50歳以降の働き方の変化を知りたすぎた私たちの描いた未来像には違和感あった、というところまでをお話しました。

今回は、これまでの仮説を再検証し、「本質」に向き合いながら新たに描いたビジョン:「みらいのしごと」についてお伝えしていきます。まず本題に入る前に、探索型リサーチのありかたについて振り返りたいと思います。

探索型リサーチで必要な3つの視点

テクノロジーは進化し、人口は減少し、高齢者の割合が増え、分散化が進み、人々の価値観・生き方もどんどん変わっています。そんな変化軸の多い不確かな「未来」を探索するには、いろいろな側面から現状を観察し、今の世の中が向かっている方向性を見出し、リサーチのお題とを結びつけ、未来の世界を生きる人々の暮らしを構想する必要があります。

そのためには、「世の中の動き」「リサーチのテーマにおける本質」「対象者からの発見」の3つの視点を持つことが大切です。

世の中の動き

世の中が今、どの方向を向いて動いているのか、という動向を探り理解しておくことは、リサーチで得た情報を理解し、分析したり、わかったことを元に仮説を立てたりするときに、とても重要な視点です。

今回の「みらいのしごと after 50」のプロジェクトでも、フィールドワークの計画を詰めるための事前のリサーチや、世の中の状況を把握するためのデスクワークを行っていました。

人口の変化、分散化、持続可能社会への関心や、FabCity構想などの、世の中の動き、トレンドなどを確認し、世の中の目がどこに向いているのかの情報を整理したりしました。

リサーチのテーマにおける本質

リサーチを始める時に、何について知るのかを決めてはいるものの、情報を収集し始めるとテーマの周辺をみる目の粒度が上がり、より詳細にテーマの内容を再定義する必要があります。そうやって、リサーチを進めながら、テーマの照準を定めていきます。そこから見える、本質的な変化だったり、ニーズだったりを見極める必要があります。

「みらいのしごと after 50」は、株式会社 リ・パブリックさんと、山口情報芸術センター [YCAM]さんと一緒に、人口減少や高齢化が、これからの日本にどういう変化をもたらすのか、人々の生活はどう変わるのかについて話したり、関連の事例を共有したりする中で、立てたテーマでした。

プロジェクト開始時には、

「70歳定年延長」が既定路線化する中、欧米を中心に議論と実践が進む「人生100年時代」を見据えたポートフォリオ・ワークの展開を踏まえ、日本、とりわけ地方において、どのような後半生の働き方、社会との接点の作り方がありうるかを探究し、地域を超えた新たな提案を構築する。」

というテーマを掲げていたので、100年時代の生き方の例として語られることの多いLIFE SHIFTと、その続編であるLIFE SHIFT 2―100年時代の行動戦略の読み解きをして、今回のテーマとしての「after 50」の意味や今後の変化を考察したり、世の中で語られる「45歳定年」のお話や、 早期リタイア「FIRE」の文脈など、リサーチや議論を通じて、私たちの「after 50」が意味するところに向き合ったりしました。

また、高齢者の存在の歴史的変化を整理して、これまでの歴史的な流れから今後の方向性を考察したり、高齢者の新しい働き方や暮らし方の先進的な事例から、業界が目を向け始めた方向性を洞察したりしました。(事例探しのお話は、以前の記事でも書いています!)これらを知ることで、私たちが意味する「みらいのしごと」や「after 50」の粒度を高め、チームで共有していきました。

対象者からの気づき

探索型のリサーチでは、フィールドワークや有識者インタビューなどで、テーマにおける対象者・関係者の声を聞くことも大事です。お話の内容だけでなく、お話するときの様子、場の様子、周辺の人々の様子、地域の様子、話の膨らみ方・方向性などから、対象者の現実的な視点を取り込んでいきます。リサーチのテーマが、自分にとって新しい分野であることも多いので、その分野の知見者・経験者の方からお話を伺うのは、資料などから得られない深みがあります。

「みらいのしごと after 50」では、山口県山口市の超高齢化社会に突入し過疎の進む阿東地区でのフィールドワークからの気づきがありました。3名の創造的に暮らす方々を訪問することで、環境や生き方の特性、働き方の変化などを見ることができました。(阿東の人々の生き方からの気づきについては、前回の記事にあります!)

探索型リサーチでは、「世の中の動き」「リサーチのテーマにおける本質」「対象者からの発見」の3つの視点で、テーマに対してのそれぞれの気づきを得ていくことが大切です。世界の動きから外れず、テーマに対してしっかりとした視点を持ち、現状からの延長線として現実的な未来像を構築していく必要があります。

テーマ「みらいのしごと after 50」の読み直し

前回の記事で、描いた未来像がなんか違ったというお話を書きました。その理由には、テーマのタイトルに引っ張られテーマの本質の再定義を躊躇ったこと、世の中の動きに関する視野が狭かったことなどが考えられました。

「after 50」と言っているからには、シニアのキャリアチェンジを描くべきなのではないかと思い、「50歳の転機」について考えてしまっていたのですが、今回のリサーチで強烈に気づいたのは、加齢によるというよりは、社会のシステムの変容が生き方の変化をうみ出しているということでした。それは、人口減少・高齢化という過去に起こったことのない大きな変化の中で、財政が縮小していき、今まであった行政システムが機能しなくなったり、少子高齢化や環境問題により、今までの経済システムでは回らなくなったりといった、大きな世の中の変化の中で社会全体のシステムが変わることによる個人の生き方の変化だと捉えることができました。

人口減少が起こり分散化が進むと、市民生活を維持するには、都市部と過疎地の連携が主軸となると思い込んでいたりもしましたが、今各地で始まっている持続可能な社会における循環は、もっと小さな地域単位で廻っているものだったりもしました。

テーマを読み直そう。

と、社会の変化に対する目線に向き合うと、その根底に、高度経済成長期に作られた企業と個人の関係性の変化や、企業や組織からの開放によって起こる個人の価値観の変化があることに気がつきました。

そこで、After 50という世代を括ったテーマから、全世代に共通する、今の時代だからこそ起こっている、生き方・働き方の変化に注力し、「トランジションの時代に働くということ 」とテーマを捉え直し、そこから未来像を再構想することにしました。

そうして「世の中の動き」「リサーチのテーマにおける本質」「対象者からの気づき」を再度見つめ直し、山口市阿東に見た変化の兆し(分散化社会、都市の持続可能性)と、テーマと直結する世の中の変化軸から、「人口減少・高齢化の進んだ都市に必要な社会システムとしごとは何か」という観点でみらいの変化を予測し、みらいのしごとの特徴を体系づけてみました。

  1. 次世代に続く持続可能性を前提とする

  2. みらいの自分が住みやすい社会をつくる

  3. 「生きがい」や「充実感」を目的とする

  4. 複数のしごとを同時に持つ

シナリオの描き直し

こうした世界観の中の、人口減少と高齢化が進む社会で、必要となる社会システムとしごとのあり方を、シナリオを作成することで、さらに具象化してみました。

前回のシナリオ作成と同様に、世の中の変化、仕事の変化を段階的に体験できるように、2020年・2030年・2040年と、段階的に書くことにしました。価値観の変わっていく社会で、段階的に変化する様子を描くために、2020年に30歳の人が、40歳、50歳と変化していくイメージで作成します。

主人公は、地域の診療所で働くお医者さんです。医師として地域に足りない医療サービスの提供をするだけでなく、機械化によって生まれた浮いた時間と場所で、人との繋がりを作るコミュニティーの運営を行ったりと、「しごと」としての充実だけでなく、「暮らし方」にまで目がいくのも、みらいのしごとらしいところです。

また、これらのシナリオを元に、事業者の方と未来のお話をする機会も想定し、今回はシナリオの読み解きも追加した内容としてまとめました。登場人物のしごとと目指す姿を明確にし、変化の意味を解説しました。

見えてきた未来像

こうして、「みらいのしごと after 50」プロジェクトでは、20年後の世界の状況を予測し、人々の暮らしや気持ちを想像し、現在からその未来までの道筋を検証することで、みらいのしごと、みらいの人の働き方、仕事の目的、幸福の要素を構想することができました。

ここで得た新たな視点は、日常生活にも、日々のニュースをみる時にも、「仕事」以外の未来像を考えてみるときにも、いつも重要な示唆を与えてくれます。じっくり検証し、考えてみることで、その旅路で触れた情報が紡がれ、隠れた意味が見えてきます。これがビジョンデザインの面白さであり、重要な意味だと思います。

こうした視点は、今後、KOELで関わるプロジェクトに活かしていくだけでなく、OPEN HUBなどで行う新規事業や共創案件のコンセプト作りにも活かし、人と世界の可能性を広げていくことにも繋げていければと思っています。

長いお話にお付き合いいただき、ありがとうございました!

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