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通信インフラ企業は なぜ今、デザイナーを求めているのか:SPECIAL TALK

こんにちは、NTTコミュニケーションズのデザイン組織、KOELの八木です。前回は、初投稿にもかかわらず、たくさんの方に読んでいただき、KOEL内でもちょっとしたお祭り騒ぎです!ありがとうございました。今回は、前回の柔らかいトーンからちょっぴり趣向を変えて、KOELの金と、デザインファームKESIKIのパートナーを務める石川俊祐さんによる、SPECIAL TALKをお届けします。

プロローグ

「KOEL(コエル)を立ち上げた2020年4月、コロナウィルスが世界中で猛威を奮っていました。収束後も、これからの働き方や暮らし方は大きく変わる。こんなときだからこそ、私たちができることはたくさんあるはずです。」
NTTコミュニケーションズ のUXデザイナー 金 智之(キム・ジジ)はそう語ります。

2011年、金は自身を含めた4名で社内にデザインチームを組成しました。日本では、デザイン思考という言葉の知名度もまだ低かった時期です。そんな中、その重要性にいち早く気づいていた金は、愚直に実績を積み重ね、当初は抵抗感を示していた社内に対して、徐々にデザイン思考をインストールしていきました。

そんな金が中心となり、今年、NTTコミュニケーションズ内に新たなデザイン組織「KOEL」を立ち上げました。なぜ巨大な通信インフラ企業にデザインが大切なのか。何を目指し、何を成し遂げようとしているのか。KESIKIパートナーで、NTTコミュニケーションズのクリエイティブアドバイザーを務める石川 俊祐さんとともに、KOELの描く未来を探ります。

「人間中心設計」にたどり着くまで

石川 俊祐(以下、石川):金さんは2011年から大企業内でデザインチームをリードされています。そもそもなぜ、デザインに興味を持ったのですか。

金 智之(以下、金):NTTコミュニケーションズに入社して3年目の頃、IDEOの共同創業者トム・ケリーさんの『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』といったデザインとビジネスを行き来する本を読んだのがきっかけです。

小さい頃からクリエイティブな物事には関心があって、学生時代は九州芸術工科大学で音響設計を学んでいました。当時、たまたま大学の同級生がNTTグループでインターンを始めた話を聞き、僕もNTTコミュニケーションズでインターンすることに。卒業後、そのまま入社しました。

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そこで、当時最先端だった映像配信やストレージなどのWebサービスを考える仕事に携わりました。その過程で新規事業創出に強い関心を持つようになり、入社して3年間、音楽配信サービス、映像配信サービス、るす番モニターなど、新しい事業の開発を担当しました。先ほど挙げた本を読んだのもその頃です。

石川:新規事業開発というと、当時はロジカルシンキングの手法を用いるのが主流だった時代です。デザイン思考の核にある「人間中心設計」という考え方は一般的ではありませんでした。なぜ、ロジカルシンキングを学ぶ方向へいかなかったのでしょうか。

:これまでのビジネスのやり方に違和感があったんです。当時は、売り上げ目標を掲げ、市場ニーズを掘り下げながら販売戦略を実行していました。でも、売れるかどうか確信がないからずっと不安が消えなかった。そんな時に、デザイン思考の「人間中心設計」という考え方にたどり着きました。ユーザーインタビューを実施し、観察を繰り返して顧客が本当に欲しいものを探る。実際に開発前にユーザーのインサイトを掘り下げるようになって、最初の不安が消えたんです。

石川:僕が金さんと初めて会ったのは、11年。僕がイギリスのデザインコンサルティングファーム・PDDにいた頃に、東京大学の「i.school」で授業をする機会があって、金さんはそれを受けにきていました。デザインの重要性に着目するのが早かったですよね。

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:そうですね。先端IPアーキテクチャセンタ(現・イノベーションセンター テクノロジー部門)のUI/UXデザインユニットを立ち上げてまもない頃でした。その後、13年には帰国してIDEO Tokyoの立ち上げに携わっていた(石川)俊さんと一緒に「未来のコミュニケーション」を考えるプロジェクトもやりましたよね。

当時、僕は、社内のプロダクトやサービスへのUXデザインの導入をしていました。その取り組みの一部が社長の耳に入り、全社を挙げてUXデザインに取り組むことになり、今の前身のDKD(経営企画部 デジタル・カイゼン・デザイン室)ができたんです。

石川:金さんがNTTコミュニケーションズでやられていることは、まさに社内デザインコンサルティングのような働きですね。「社内の課題を問いに変換し、解決策を考える」ことをやってきたという面白い事例。僕がIDEOでやっていたようなことを、金さんは大企業の中で実践されてきたわけです。

当時、金さんと一緒に働いていた人たちは僕も何人か知っていますが、デザインファームなどに転身し、活躍している人も多い。金さんはなぜ、 NTTコミュニケーションズを辞めなかったのですか。

:インターン生として働いていたとき、(当時オフィスがあった)セルリアンタワーで新しい事業を立ち上げるという経験をさせてもらった経験が大きいですね。

これほど大きな組織なのに、裁量を持っていろんなことをやらせてくれる懐の広さがある。しかも、全国に通信インフラ網をもっていて、大きなポテンシャルもある。だから、ここで面白いことができるとより大きなインパクトが起こせるんじゃないかと。

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デザインチームでは毎週、社内向けのWSを実施。全社の理念、信条を策定した。

デザインの力で「愛される社会インフラ」をつくる

石川:僕はこれまで、さまざまな大企業のイノベーションチーム、新規事業室、それからデザイン組織と一緒に仕事をしてきましたが、正直うまくいっているところは多くありません。僕から見て、NTTコミュニケーションズに「デザイン組織」が根づいた理由は3つあると思います。

1つ目は、新しいものを取り入れる企業カルチャーがあること。2つ目は、スピーディーな意思決定ができること。そして3つ目に、金さんのようなデザインとビジネスをつなぐ人材がいること。僕たちKESIKIでは、今回、金さんたちと2カ月でデザイン組織を立ち上げるというプロジェクトをご一緒しましたが、正直、大企業でありながらデザイン部門の担当役員を含め、意思決定が早く、とても柔軟なことに驚きました。

ところで、なぜ今年4月に「KOEL」という新たなデザイン組織を立ち上げたのですか。

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ロゴの「O」と「E」の間に切り取った直線の角度は、人間が最も遠くまでモノを飛ばせる「40.89度」。距離や常識を超えるというイメージを強調した。

:UXデザイナーやデザインリサーチャーなど、クリエイティブ分野で活躍している社外の人たちを採用し、よりデザインをビジネスに注入していきたいと考えたからです。

KOELという名称には、人々の物理的な距離を「超える」、これまでの常識を「超える」コミュニケーションを創造するチームをつくる、という意味を込めました。単に回線をつなぐだけの通信インフラ会社を超え、人々が自由で、幸せな暮らしを謳歌するための社会インフラを創造する会社へ。KOELは、NTTコミュニケーションズの変革を引っ張っていく役割を担います。

具体的に行うことは、社内の技術部門やサービス開発部門と連携し、戦略立案・事業改善・事業開発・人材育成・コミュニケーションの支援など。KOELでは、NTTコミュニケーションズとして掲げている理念「人と世界をひらくコミュニケーションを創造する」と「Smart World」の実現を目指します。

この分野の「コミュニケーション」を時代に最適化し、より豊かな未来づくりを目指すというものです。そんな理想の未来を実現するために、デザインの力でビジネスを加速させていきたいと思っています。

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※クリックすると「Smart World」を表現した動画が再生されます。「Smart World」が対象にするのはFactory、Workstyle、Education、Costomer Experience、City、Mobility、Healthcareの7分野。

石川:成功のカギになるのは、いかに「人間中心」の視点をもってプロジェクトを進められるか。「イノベーション」と名のつく取り組みは、とかくテクノロジードリブンになりがち。未来に生きる人々のリアルな生活を想像することが大切です。

:そうですね。まさに、私たちは大企業の中で「人間中心設計」の考え方を牽引する存在として、KOELのミッション、ビジョンを定めました。

ミッションは「デザイン×コミュニケーションで社会の創造力を解放する」。ビジョンは「人と企業に愛される社会インフラをつくる」。

安心・安全の先に、人々の暮らしを自由にし、幸せをもたらすようなサービスやプロダクトをつくっていきたいと思っています。

KOELを立ち上げた2020年4月、コロナウィルスが世界中で猛威を奮っていました。収束した後も、私たちの働き方や暮らし方は大きく変わることになるでしょう。仕事も教育も医療も、すべての分野でオンラインでのコミュニケーションの需要はますます高まることが予想されます。だからこそ、私たち通信インフラ企業ができることは、たくさんあります。

石川:デザイナーにとって、社会課題の解決に挑む、スケールの大きなプロジェクトに取り組めるのは大きな魅力ですね。しかも、社内には優れた技術がたくさんある。

掲げたミッションやビジョンを推進していくために、いまKOELではどんな人材を求めていますか。

:KOELでは、メンバーの行動指針を表すバリューとして「問う」「創る」「動かす」の3つを定めています。

「問う」は、社会を良くしていきたいという想いをもって、現状を疑い、問い続けること。「創る」は、デザイナーとしての高い専門性をもって、手を動かしながら考え続けること。 「動かす」は、失敗に負けずポジティブに進み続けることで、人や組織、社会を動かしていくこと。

この3つを理解し、実行してくれる人たちと、ぜひ一緒に仕事をしていきたいですね。

石川:優れたデザイナーは、直感と論理を行ったり来たりします。クラフトマン的に美を追求することと戦略的に筋道を描くこと。その両方を行き来した経験を持っていて、さらに社会を変えたいという強い想いを持った優れたデザイナー。そんな方がKOELに加われば、数年後には大きなインパクトを与えるプロジェクトが生まれそうですね。

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